離婚が決まると、夫婦の共有財産の分与が必要になります。その中でも不動産(家)の分割は、特に慎重に進めるべき重要な問題です。この記事では、離婚時における家の売却メリットや最適なタイミング、また売却をする時の手順について詳しく解説します。
離婚において家を売却するメリットはいくつかあります。
1. 財産を公平に分配しやすくなる
離婚において家を売却するメリットのひとつは、財産を公平に分配しやすくなることです。
家を売却することで、売却代金が現金化され、これを元に財産を分割することが可能となります。この方法を選ぶことで、どちらの配偶者も公平なシェアを受け取ることができ、財産分与の際に争いや不公平感を減らすことができます。
2. 売却したお金は財産分与の対象になる
夫婦の共有財産を離婚時に均等に分割することを「清算的財産分与」といいます。売却しなければ家の分割はできないですが、売却し現金化することで、財産分与の対象として資産を均等に分けることが可能になります。
3. 売却で得たお金を住宅ローンの返済に充てられる
アンダーローン(売却金額が住宅ローンの残債よりも多い状態)であれば、売却したお金で一括返済できるため、売却ができます。離婚前に自宅を売却し、その売却代金で住宅ローンを完済すれば、ローンの名義や連帯保証契約について悩む必要もありません。そのため、売却益を夫婦双方で分け合うだけで財産分与が行え、手続きもスムーズに進むでしょう。
家を売却するタイミングは離婚後が望ましいです。離婚前に不動産を売却し、その売却益を分け合う場合、贈与と見なされ、財産を受け取る側に贈与税がかかるリスクがあるからです。片方の名義のみで家を売却し、売却益を分配する際、贈与を受けたと解釈される可能性もあります。
離婚後に家を売却するメリットとして、売却活動に専念できるという点も挙げられます。すべての離婚手続きが終了し、新しい生活に向けての準備が整った状態で、売却活動に取り組めます。
一方で、売却が複数年にわたる場合、固定資産税の支払い義務が元所有者に発生するデメリットもあります。また、売却活動中は相手との連絡が必要となり、ストレスを感じることもあるでしょう。
一般的には、離婚後に不動産を売却することが多くのメリットをもたらすとされていますが、個々の状況や優先事項によって異なるため、慎重な検討と計画が必要です。
財産分与は、一般的に以下の流れで進めていきます。
1. 住宅ローンの残債、名義人、連帯保証人を確認する
離婚で家を売却する際の手順として、最初に行うべきことは、住宅ローンの残債、名義人、連帯保証人の確認です。
・住宅ローンの残債を確認する
まず、住宅ローンの残債を確認します。ローンの残り金額が家の現在の市場価格とどの程度一致しているかを把握することが重要です。住宅ローンの残債によっては、不動産を売却できない可能性もあります。金融機関に頼めば、住宅ローン残高の残高証明書を発行してくれますので、必ず調べておきましょう。
・名義人の確認をする
次に、家の名義人が誰であるかを確認します。夫婦のどちらか一方、または両方が名義人であるかに応じて、売却手続きの進め方が異なる場合があります。名義人の確認には以下の書類を使用します。
登記簿謄本…郵便やオンライン申請、窓口を通して誰でも法務局から取得できます。手数料は、郵便や窓口での取得時に600円、オンライン申請して窓口で受け取る場合は480円、郵送で受け取る場合は500円かかります。
不動産売買契約書…売買契約を結ぶ際に名義人が記名・押印した書類。通常、契約書は2通用意され、そのうちの1通は名義人が保管しています。
・連帯保証人の確認をする
住宅ローンに連帯保証人がいる場合、その保証人も関与しているため、売却に際して連帯保証人の同意や関与が必要になることがあります。
2. 家の価値を調べる
家がいくらで売れるのか調べます。家の価値を調べる方法はいくつかありますが、一番おすすめなのは、不動産会社に価値査定書の作成を依頼することです。この「無料査定」とも呼ばれる方法は、宅地建物取引業法に基づいて不動産の価値が算出されます。
鑑定会社に依頼すると数十万円の費用がかかりますが、不動産会社に依頼する場合、査定は無料です。その上、売却の仲介もそのまま依頼できるため、効率的に手続きが進められます。
3. アンダーローンかオーバーローンかを調べる
アンダーローン(売却金額が住宅ローンの残債を上回る状態)であれば、売却収益でローンを一括返済できるため、不動産の売却がスムーズに進みます。
一方、オーバーローン(売却価格が住宅ローンの残債を下回る状態)の場合、不動産を売却してもローンの残額が残ってしまいます。そのため、不足分のお金を自己資金で補わなければなりません。
住宅ローンの残債を一括返済できない場合、金融機関は抵当権を解除しません。抵当権が設定されたままの不動産を売買することは法律違反ではありませんが、抵当権付きの物件を買いたい人はほとんどいないでしょう。
したがって、住宅ローンの残債がある場合は、「アンダーローンである」または「完済するための自己資金がある」以外は、不動産の売却が難しいと言えます。
4. 財産分与の方法を決定し、公正証書を作成する
住宅ローンや名義の確認、家の価値を把握したら、不動産の分与方法を夫婦間で話し合います。
家を財産分与する方法は、以下の2つです。
1.売却して現金化し、分け合う
2.夫婦どちらかが家に住み続け、他方はその価値の半分を現金で受け取る
最終的には、夫婦間で合意した分与方法を公正証書として作成します。合意した分与方法は、公正証書としてまとめると安心です。公正証書とは、公証人が公的な権限で作成する公文書のこと。これにより、後々のトラブルを防ぐことができます。
ただし、公正証書の作成には財産分与の金額に応じた手数料がかかります。日本公証人連合会が公表している費用は以下のとおりです。
財産分与の金額
公正証書の作成手数料
100万円以下
5,000円
100万円~200万円
7,000円
200~500万円
11,000円
500~1,000万円
17,000円
1,000万~3,000万円
23,000円
出典:日本公証人連合会(12 手数料)
https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow12
コストはかかりますが、公正証書を作成することで、後からの問題を未然に防ぐことができます。
離婚で家を売る際には、主に2つの方法があります。それは、仲介による売却と買取です。どちらの方法が最適かは、状況や優先事項によって異なります。迅速な売却を求める場合は買取が向いていますが、少しでも高値で売却したい場合は仲介による売却がおすすめです。それぞれのメリット・デメリットを考慮し、最適な方法を選んでください。
1.仲介
不動産会社が仲介に入って、家を売却します。
・仲介のメリット
市場価格に近い価格で売却できる可能性が高いです。より多くの買い手にアプローチでき、競争が生まれるため、高値で売却できるかもしれません。
・仲介のデメリット
売却までの時間がかかる場合があります。価格交渉や購入希望者とのやり取りも必要です。また、不動産会社への仲介手数料がかかることも考慮しなければなりません。
仲介を選択する場合、不動産会社と結ぶ媒介契約の種類についても知っておく必要があります。媒介契約には「専任媒介」「一般媒介」「専属専任媒介」の3つがあり、それぞれに特徴があります。
一般媒介
専任媒介
専属専任媒介
依頼できる社数
複数可
1社のみ
自分で買主を見つける
〇
×
契約期間
自由
3ヶ月
業務報告
売主から求められたら報告
2週間に1回以上
1週間に1回以上
一般媒介契約では、複数の不動産会社と契約できるため、営業活動の範囲を広げることができるというメリットがあります。間口を広げればそれだけ売却のチャンスが巡ってきそうですが、現実的には2、3社と契約するのが限度でしょう。
不動産会社が売主に対して行う業務報告も「2週間に1回以上」といった明確なルールはなく、売主から求められない限りは報告をする義務はありません。3つの媒介契約の中では一番縛りが弱めですね。
次に縛りが強いのは専任媒介契約と専属専任媒介です。1社としか媒介契約を結べないため、物件の囲い込み(他社に物件を紹介しないこと)が起こりやすい点や、販売戦略がない会社にあたってしまうと物件が売れにくいというリスクがあります。
しかし、専任媒介契約と一般媒介契約では、営業マンのモチベーションが異なるというのが実際のところです。一般媒介は、『営業活動を頑張っても他社で契約してしまうかも(つまり仲介手数料がもらえない)⇒積極的な営業活動を行わない』という不動産屋も少なくありません。
どの媒介契約がベストなのかは一概には言えませんが、それぞれの特徴をしっかりと理解して検討することをおすすめします。
2. 買取
不動産会社が直接家を買い取る方法です。仲介よりも価格は安くなりますが、売却までお急ぎの方には向いています。
・買取のメリット
迅速に売却できるのが最大のメリットです。売却にかかる手間や時間を省くことができます。
・買取のデメリット
市場価格よりも低い価格での売却になることが一般的です。すぐに売却できる分、利益は少なくなります。
離婚に伴う財産分与の中でも、高額な不動産は特に慎重に扱わなければなりません。売却して現金化しない限り、不動産を「半分に分け合う」という方法は取れません。そのため、売却するか、どちらかが住み続けるか、名義をどうするかなど、お互いが納得できる形でしっかりと話し合いを進めましょう。
ミツバハウジングでは、離婚による売却や住み替えのご相談を随時承っております。住宅ローンの残債があって売却できるか不安という方もぜひ一度ご相談ください。