[1] 不動産の相続税評価額について
1. 建物の評価額は固定資産税評価額と同じ
2. 土地の相続税評価額
[2] 相続税評価額を減額できるケースはある?
1. 借地権が設定されている土地の相続
2. 広い土地の相続
3. 貸家建付地の相続
4. 条件が悪い土地の相続
[3]不動産を相続したときにかかる税金
1.【所有時】固定資産税
2.【相続時】登録免許税
3.【売却時】印紙税と譲渡所得税
[4]まとめ
不動産を相続する際には、その評価額や税金についての正しい知識を持つことが非常に重要です。不動産の相続税評価額を適切に理解し、特定の条件下で評価額を減額できるケースを知ることで、相続税の負担を軽減することが可能です。また、不動産を相続した後には、固定資産税や登録免許税、さらに売却時には印紙税や譲渡所得税など、さまざまな税金が発生します。本記事では、不動産の相続に関する税金の評価額や減額のケース、具体的にかかる税金について詳しく解説します。
不動産の相続税評価額について、土地と建物のそれぞれの算出方法を詳しく説明します。評価の詳細については、国税庁の公式サイトや税理士などに相談してください。
建物の評価額は固定資産税評価額と同じです。相続税を計算する際には、固定資産税評価額がそのまま利用されます。
相続税の計算において、建物の評価額を知るためには市町村から送られてくる固定資産税評価額を確認してください。
土地の相続税評価額については、主に以下の2つの方法で評価されます。
【路線価方式】
市街地の土地に適用されます。
国税庁が毎年発表する価格で、土地が面する道路ごとに決定されます。通常、地価公示価格の80%程度です。
評価方法:路線価に土地の面積を掛けて評価額を算出します。
例: 路線価が「200千円/㎡」、土地の面積が「150㎡」の場合、
評価額 = 200千円/㎡ × 150㎡ = 30,000千円(3億円)
【倍率方式】
路線価が設定されていない地域の土地に適用されます。
倍率:国税庁が地域ごとに発表する倍率表を基に計算します。
評価方法:固定資産税評価額に倍率を掛けて評価額を算出します。
例: 固定資産税評価額が「50,000千円」、倍率が「1.1」の場合、
評価額 = 50,000千円 × 1.1 = 55,000千円(5.5億円)
相続税評価額を減額できるケースはいくつかあります。その中でも、借地権が設定されている土地の相続に関しては、相続税評価額を減額できる代表的な例です。以下に詳しく説明します。
【条件】
1.三大都市圏:地積が500㎡以上の宅地
2.三大都市圏以外:地積が1,000㎡以上の宅地
【三大都市圏の定義は?】
三大都市圏とは、以下のように定義された地域を指します。
・首都圏:首都圏整備法第2条第3項に規定する既成市街地または同条第4項に規定する近郊整備地帯
・近畿圏:近畿圏整備法第2条第3項に規定する既成都市区域または同条第4項に規定する近郊整備区域
中部圏:中部圏開発整備法第2条第3項に規定する都市整備区域
【地積規模の大きな宅地に含まれない場合】
以下の条件に該当する場合、地積規模の大きな宅地の条件を満たしていても、評価額の減額は適用されません。
・市街化調整区域や、都市計画法で工業専用地域と指定されている地域
・容積率が400%(東京都の特別区では300%)以上の地域にある宅地
【評価方法】
「地積規模の大きな宅地」と認定されると、その評価額は一定の減額が適用されます。具体的な減額率や評価方法は国税庁のガイドラインをご確認ください。
【貸家建付地の相続税評価額の計算方法】
貸家建付地の相続税評価額は以下の式で求められます。
評価額 = 自用地の価額 -(自用地の価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
自用地の価額:その土地が借地権などの制約なしに自由に利用できる場合の評価額。
借地権割合: 土地の評価額に対して借地権が占める割合。地域によって異なり、路線価図や評価倍率表で確認します。
借家権割合: 建物を借りる権利の価値を示す割合。一般的に30%とされています。
賃貸割合: 賃貸されている部屋の専有面積の合計 ÷ 賃貸物件の専有面積の合計。
【具体例】
たとえば、自用地の価額が1億円、借地権割合が60%、借家権割合が30%、賃貸割合が100%の場合:
自用地の価額: 1億円
借地権割合: 60% = 0.60
借家権割合: 30% = 0.30
賃貸割合: 100% = 1.00
評価額の計算:
評価額 = 1億円 -(1億円 × 0.60 × 0.30 × 1.00)
評価額 = 1億円 -(1億円 × 0.18)
評価額 = 1億円 – 1,800万円
評価額 = 8,200万円
したがって、貸家建付地の相続税評価額は8,200万円となります。
道路に面する部分の幅(間口)が狭い土地。・奥行きが短かったり長かったりする土地
奥行きのバランスが悪く、利用に制限がある土地。
次に、不動産を相続したときに発生する税金について解説します。
不動産を相続してそのまま所有する場合、固定資産税(およびエリアによっては都市計画税)が課税されることになります。
【固定資産税とは?】
固定資産税は、毎年1月1日時点で土地、家屋、償却資産を所有している方に、所在地の市町村(東京23区は都)から課される税金です。この税金は固定資産税評価額(固定資産税を計算する際の基準となる評価額)をもとに、課税標準額が算出されます。
【都市計画税とは?】
都市計画税は、市町村(東京23区は都)が条例で課すことができる税金です。固定資産税と一緒に賦課徴収されますが、償却資産は課税対象外です。
【税率の計算方法】
固定資産税: 課税標準額×税率(標準税率1.4%)
都市計画税: 課税標準額×税率(制限税率0.3%)
【免税点について】
同じ市区町村内の同一人が所有する固定資産の課税標準額の合計が一定額未満の場合、固定資産税は課税されません。
土地: 30万円未満
家屋: 20万円未満
償却資産: 150万円未満
(参考:横浜市ホームページ 固定資産税 土地・家屋・都市計画税)
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/koseki-zei-hoken/zeikin/y-shizei/koteishisan-toshikeikakuzei/gaiyou.html#:~:text=%E5%90%8C%E4%B8%80%E5%8C%BA%E5%86%85%E3%81%A7%E5%90%8C%E4%B8%80,%E3%82%82%E8%AA%B2%E7%A8%8E%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%9B%E3%82%93%E3%80%82
【賃貸用不動産の場合】
相続した不動産が賃貸用不動産であった場合、または相続後に賃貸用として活用する場合には、家賃収入が発生します。その収入から必要経費を差し引いたものが不動産所得となり、所得税および住民税が課税されます。
不動産所得についての詳細は、国税庁の公式ページ「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」をご参照ください。
※URL貼る
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm
2. 【相続時】登録免許税
相続した不動産を売却した場合、その売却収入から必要経費(取得費および譲渡費用)を差し引いたものが譲渡所得として扱われ、所得税および住民税が課税されます。不動産の譲渡所得は、申告分離課税(他の所得と合算せず分離して税額を計算する方法)によって課税されます。
【譲渡所得の計算方法】
譲渡所得は以下の計算式で算出します。
譲渡所得 = 譲渡価額 – 取得費 – 譲渡費用 – 特別控除
譲渡価額: 不動産の売却額
取得費: 不動産を取得(購入)するのに要した費用
譲渡費用: 不動産を売却するために要した費用
特別控除: 各種特例の適用要件を満たす場合、譲渡所得から特別控除額を控除することができます(例: 空き家にかかる譲渡所得の特別控除)。
【税率】
税率は不動産の所有期間によって異なります。所得税率および住民税率は以下のとおりです。
【相続による所有期間の引継ぎ】
相続によって不動産を取得した場合、亡くなった方が取得した日を引き継ぐことができます。これにより、譲渡所得税と住民税の計算において有利な長期譲渡所得の適用が受けられる場合があります。
3. 【売却時】印紙税と譲渡所得税
不動産を相続してその後売却する場合、いくつかの税金が発生します。代表的なものが印紙税と譲渡所得税です。
【印紙税】
不動産売買契約書を作成する際にかかる税金です。
税額は、契約書に記載される金額に応じて異なります。たとえば、1,000万円超5,000万円以下の契約書には1万円、5,000万円超1億円以下の契約書には3万円の印紙税がかかります。納税方法は、契約書に所定の金額の印紙を貼り、消印を行います。
【譲渡所得税】
不動産を売却して利益(譲渡所得)が発生した場合にかかる税金です。譲渡所得は、売却価格から取得費および譲渡費用を差し引いた金額で計算されます。
計算方法: 譲渡所得 = 譲渡価額 – 取得費 – 譲渡費用 – 特別控除
譲渡価額:不動産の売却額
取得費:不動産を取得するのに要した費用(購入価格や購入時の手数料など)
譲渡費用:不動産を売却するために要した費用(仲介手数料や修繕費など)
特別控除:各種特例の適用要件を満たす場合に控除できる額(例: 空き家の特別控除など)
税率は、不動産の所有期間によって異なります。
所有期間の引継ぎ:相続によって取得した不動産は、被相続人(亡くなった方)が取得した日を引き継ぐことができます。これにより、譲渡所得税の計算において所有期間が長期となり、税率が低くなる可能性があります。
不動産を相続する際には、相続税評価額やそれを減額できる条件を理解することが不可欠です。形状が悪い土地や借地権が設定されている土地、広大な土地など、特定の条件を満たす不動産は相続税評価額を減額することが可能です。さらに、不動産の相続後には固定資産税や登録免許税、売却時には印紙税や譲渡所得税がかかるため、適切な税務処理が求められます。これらの知識を活用することで、相続に伴う税負担を最小限に抑えることができるでしょう。詳細な情報や具体的な手続きについては、国税庁の公式サイトや専門家に相談することをお勧めします。