任意売却のメリットデメリット-仲介や競売との違いは?
    ■住活コラム

    任意売却のメリットデメリット-仲介や競売との違いは?

    【目次】
    住宅ローンの返済が遅れると、最終的に競売が行われる可能性があります。競売では、市場価格の5~7割程度での売却が一般的であり、さまざまなリスクが伴います。そのため、解決策の一つとして「任意売却」が挙げられます。 しかし、任意売却にはメリットだけでなく、慎重な検討が必要なデメリットも存在します。本記事では、任意売却のメリットデメリット、仲介や競売との違い、さらに適切なケースについて解説します。

    1.任意売却とは?

    任意売却のメリットデメリット-仲介や競売との違いは?
    任意売却は、何らかの理由で住宅ローンの返済ができなくなった場合に、金融機関との交渉を経て不動産を売却する方法です。また、売却代金で住宅ローンを完済できず、残りのローンを自己資金でも返済できない場合にも利用されます。

    通常、不動産を担保とするローンは、融資時に抵当権を設定します。この抵当権はローンが完済されるまで消滅しません。また、他者の抵当権がついたままの物件は売却が難しいです。従って、物件を売却する際には、売却代金だけでなくローンの残債も完済しなければなりません。

    しかし、このようなケースで役立つのが任意売却です。抵当権を持つ金融機関の同意を得れば、ローンの残債があるままでも物件を売却できるのです。

    では、通常の売却(仲介)や競売とは何が違うのか?この章では、任意売却と仲介や競売との違いを説明します。
     

    1.仲介との違い
    通常の売却では、不動産の所有者である売主が主体となります。不動産会社を介した媒介契約による売却や、自ら買主を見つける自己発見取引が一般的です。
     
    住宅ローンや他の債務の返済に遅れがなく、不動産の売却代金で残債を一括返済できる場合、通常の売却が選択肢となります。
      売却価格の目安は、市場価格や不動産会社の査定額に近い金額です。また、売却を決断した場合でも、理想の価格での買主が見つからないなどの理由で売却を取りやめることが可能です。  

    2.競売との違い
    住宅ローンの支払いが数ヵ月延滞すると、抵当権の設定された物件は競売にかけられます。競売は、住宅ローンやその他の借金の返済が遅れ、債権者が競売手続きを開始し、裁判所がその正当性を認めた場合に行われる売却方法です。

    競売では、売主としての主体は不動産の所有者ではなく、債権者の申立てを認めた裁判所が主体となります。買主が見つかれば、所有者の意思に関係なく物件が強制的に売却されます。

    売却価格の目安は仲介や任意売却よりも低く、5~7割程度とされます。また、競売された後も残債があれば、返済は継続されます。

    3.仲介・任意売却・競売 それぞれの違い
    それぞれの違いを以下にまとめましたので、参考にしてください。

      仲介 任意売却 競売
    売主 不動産の所有者 不動産の所有者 裁判所
    返済状況 返済の遅延がない 返済が遅延しており、または今後の返済が難しいと判断されている 返済遅延後、督促の期間内に返済できなかった
    利用できる条件 売却したお金で残債を一括返済できる 債権者の承認が必要。任意売却が開始されたら、債務者の意思だけでは取り消せない 債権者が競売を申し立て、裁判所が承認した場合。債務者が競売を取り消すことはできない
    売却価格 市場価格と同程度 市場価格の8~9割 市場価格の5~7割
    価格決定権 不動産の所有者 金融機関と協議 裁判所
    仲介手数料 あり あり なし

    2.任意売却のメリット5つ

    任意売却のメリット5つ

    次に、任意売却のメリットを解説します。

     

    1.競売よりも高く売れる

    競売で不動産を売却する場合、通常の市場相場よりも大幅に低い価格になることが一般的です。一般的には、市場価格の5割から7割程度になることが多いです。

    この価格の低さは、いくつかの理由によるものです。まず、買主が物件を購入する前に内覧することが難しい場合があります。また、競売物件の情報が公開されてから入札が開始されるまでの時間が短いため、買主が情報を入手し、準備を整える時間が限られています。さらに、現所有者が立ち退きを拒否する場合、買主は自ら交渉しなければならないこともあります。

     

    このような理由から、競売では物件が安い価格で売却される傾向があります。一方、任意売却では通常の不動産の売買と同様に、不動産会社の仲介を通じて物件が売却されます。そのため、市場相場と同等の価格で売却されることが一般的です。

     

    2.住宅ローンの残債を分割返済できる

    通常の売却では、住宅ローンの残債を一括返済しなければ、金融機関は抵当権を解除してくれません。しかし、金融機関は任意売却を行う人に対して、一括返済を求めることは無謀というのも理解しています。

    そのため、返済が滞る状況を防ぐために、金融機関は返済額を適切に設定し、分割返済を可能にすることもあります。

    ただし、滞納が続いた場合、金融機関は「住宅ローンを返済する意思がない」と判断し、一括返済を求めることがあります。督促の連絡が何度も無視されたり、対応されなかったりした場合、競売の対象となる可能性があることに注意が必要です。

     

    3.売却費用を抑えられる可能性がある

    任意売却では、債権者の同意を得て、売却代金の一部を経費や清算費用に充てることができる場合があります。

    物件の任意売却を検討する人々は、通常現金が十分でないことが多いです。引っ越し費用や税金の支払いなど、必要な支出をまかなえないこともよくあります。任意売却では、債権者の同意を得て、売却代金の一部をこれらの費用に充てることができる場合があります。

     

    一方、競売では売却代金は裁判所に管理され、全額が債権者に支払われます。引っ越しやその他の必要な出費がある場合、自分で資金を用意する必要があります。

     

    4.引き渡し日を調整できる

    競売では、強制退去日が定められ、その日までに物件を退去する必要があります。一方、任意売却では、売主や金融機関との交渉によって、より柔軟な引き渡し日を設定することが可能です。これにより、売主や買主の都合に合わせて引き渡し日を調整することができます。

     

    5.近隣住民に知らずに売却できる

    競売では、裁判所の競売情報などを通じて売主の情報が公開されますが、任意売却では不動産会社と相談して広告公開範囲を決定できます。

     

    そのため、売主はプライバシーを守りつつ物件を売却できます。特定の条件下でのみ物件情報を公開することも可能であり、近隣住民に知られずに売却を進めることができます。

    3. 任意売却のデメリット5つ

    任意売却のデメリット5つ

    続いて、任意売却のデメリットです。

     

    1.ブラックリスト(信用情報)に載る

    競売でも同様ですが、任意売却が必要な場合、信用情報機関に事故情報が記載され、いわゆるブラックリスト入りとなります。

    個人信用情報に情報が登録されるタイミングは金融機関や信用情報機関によって異なりますが、一般的にはローンを3回滞納したタイミングで登録されます。この情報が登録されると、5年間は新たなローンの借り入れが難しくなります。さらに、クレジットカードの審査にも影響を与え、普段の生活にも支障が出る可能性があります。

     

    ブラックリスト入りすると、数年間は新たな借り入れやクレジットカードの取得が制限されますので、任意売却によって信用情報に傷がつかないという保証はありません。

     

    2.『任意売却=残債がゼロになる』わけではない

    任意売却を行った場合でも、すべての残債が消えるわけではありません。売却代金が残債を十分にカバーしない場合、残債が残る可能性があります。そのため、売却後に返済すべき残債が残ることになります。

    ただし、任意売却の場合は一括返済だけでなく、分割返済が可能なケースもあります。具体的に返済すべき額は、収入状況などを考慮して金融機関が決定しますが、一般的には月額5,000円から30,000円程度で設定されることが一般的です。

     

    3. 期限内までに売却しなければならない

    通常の不動産売却とは異なり、任意売却には売却期限が設定されます。

    この期限は、競売手続きと同時に進められます。具体的には、競売の開札期日の前日までに、代金の受け取りと物件の引き渡しが完了する必要があります。買主との交渉も必要なため、スケジュールを十分に確保することが重要です。

     

    4.金融機関の同意を得られないと売却できない

    任意売却は、個人の裁量では自由に行うことができません。任意売却の可否は金融機関によって決定され、一度任意売却の手続きを始めると取り消すことはできません。また、場合によっては、購入希望者が現れたのにも関わらず金融機関からの承諾を得られないケースも考えられます。例えば、物件の査定額が残債を極端に下回る場合、返済計画が現実的でなければ任意売却することができない可能性があります。

     

    5.任意売却するには債権者の同意が必要

    任意売却を進める際には、連帯保証人や共有名義人の同意が必要になります。

    しかし、任意売却を望んでも、名義人の許可を得られない場合もあります。たとえば、離婚後に元夫名義の家に元妻が居続ける場合、元夫が住宅ローンの支払いを滞納し、金融機関からの督促を無視し続ける

    4. 任意売却を検討した方がよいケース

    任意売却を検討した方がよいケース

    ここまで任意売却のメリットデメリットを解説してきましたが、実際に任意売却を検討した方がよいのはどのようなケースなのかみてみましょう

    1.金融機関から督促状や催告状が届いた場合

    住宅ローンの返済が滞ると、金融機関から督促状や催告状が届くことがあります。この時は任意売却を視野に入れる必要があります。

    督促状にある返済期限までに返済が完了した場合は大きな問題はありませんが、今後も遅延が続く可能性がある場合は、住宅ローンを提供している金融機関との返済の相談や、競売になる前に任意売却の準備を始めることが賢明です。

     

    ただし、物件が実際に売れるまでには3ヵ月から6ヵ月かかることが一般的ですので、できるだけ早く行動を開始することが重要です。

     

    2.売却後に残債を一括返済できない場合

    売却代金と「自己資金」だけでは一括返済が難しい場合は、通常の売却ではなく任意売却を選択することも一つの手段です。

     

    この「自己資金」には親族からの援助や他の金融機関からの借り入れで得た資金も含まれます。それらの資金があってもなお完済できないというケースです。

     

    不動産会社の査定額から売却にかかる諸経費を差し引き、その金額と自己資金を合わせて残債を完済できるかどうかを検討しましょう。

    6. まとめ

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