空き家が過去最多の900万戸になった現在、所有している空き家を売るべきか、それとも貸すべきか。この決断には慎重な考慮が必要です。賃貸需要や将来の売却計画、賃貸経営のリスクや労力、そして市場動向などを考慮して、最適な選択を見極める必要があります。今回は、空き家オーナーが迫られるこの決断について、具体的な判断ポイントを探ります。
全国で空き家が増加しています。総務省が30日に発表した資料によると、総住宅数のうち空き家は900万戸。2018年の849万戸と比べ、51万戸の増加となり、過去最多です。
また、総住宅数に占める「空き家の割合(空き家率)」は13.8%と、18年(13.6%)から0.2ポイント上昇し、過去最高になりました。
総務省によると、空き家数の推移は「これまで一貫して増加が続いており、1993年から2023年までの30年間で約2倍となっています」。空き家数のうち「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」は385万戸で、18年(349万戸)と比べて37万戸の増加となっており、総住宅数に占める割合は5.9%でした。
空き家が増えた原因は複数あります。日本全体での人口減少や都市への人口集中が主な要因です。地方では高齢化や少子化により住民が減少し、相続問題や建物の老朽化も空き家問題に拍車をかけています。また、都市計画の変更や再開発が進む中で、古い建物や土地が活用されずに残り、空き家となることもあります。これらの要因が複合的に作用し、空き家問題が拡大しています。
令和5年12月13日に、空家対策特措法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)が施行されました。
詳しくは国土交通省の『空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について』をご確認ください。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000138.html
今回の改正では、平成27年に導入された空家法を更に強化する方針が取られました。これまでの法律では、放置された空き家が「特定空き家」として指定され、行政による指導や勧告、必要なら強制執行が可能でしたが、対応は問題の深刻な場合に限られていました。
しかし、空き家の増加に対しては対処療法的な限界があったため、予防的な措置を講じるべきとの考えから、管理不全空き家」も指導・勧告の対象になりました。
この管理不全空き家とは、1年以上誰も住んでおらず、かつ管理が不十分な家のことを指し、今後もそのままの状態で放置されると特定空き家に指定される可能性がある空き家を指します。
空き家が建つ市区町村から「特定空き家」または「管理不全空き家」としての指導を受け、それに従わずに勧告を受けると固定資産税等の軽減措置(住宅用地特例)が受けられなくなります。
今回の改正で特に注目されるのは、「管理不全空き家」という所有者責務の強化をされたことです。これにより、行政は改善の指導や勧告を行うだけでなく、固定資産税の住宅用地に対する特例措置の解除も可能になりました。
改正前は、居住用の建物があれば固定資産税の減額措置を受けることができたため、解体せずに放置される空き家が多かったですが、今後は管理が行き届かない場合、「管理不全空き家」に認定され、税制面でも不利な扱いを受ける可能性が高まります。
住んでいなくても、家を所有しているだけで固定資産税がかかります。この章では、空き家にかかる固定資産税について解説します。
固定資産税の納税額は『固定資産税評価額 × 1.4%(標準税率)』で計算できます。評価額は3年ごとに見直され、所有者はその評価額に対応する税金を支払います。
具体的な税額の計算方法は、不動産の種類に応じて異なります。
固定資産税=課税標準額(固定資産評価額)×税率(1.4%)土地…課税標準額×税率1.4%家屋…課税台帳に登録されている価格×税率1.4%償却資産…課税標準額×税率1.4%
参考:神奈川県ホームページ(固定資産税)https://www.pref.kanagawa.jp/zei/kenzei/a001/b012/006.html
2. 「住宅用地の特例措置」が適用されると土地の税率が軽減
空き家でも、「住宅用地の特例措置」が適用されると、土地の一部に税率の軽減が行われます。軽減率は以下のとおりです。
小規模住宅用地(200㎡以下の部分) 固定資産税が1/6
一般住宅用地(200㎡超の部分) 固定資産税が1/3
この特例措置により、所有者は固定資産税の支払いを軽減できますが、条件として住宅が建っていることが条件となります。
3. 「特定空き家」「管理不全空き家」は固定資産税が高くなる
先に説明した住宅用地の特例措置は、「特定空き家」に指定されると利用できません。また、先述したとおり、空き家対策特別措置法の改正により、新たに「管理不全空き家」も指導・勧告の対象になりました。空き家が建つ市区町村から「特定空き家」または「管理不全空き家」としての指導を受け、それに従わずに勧告を受けると固定資産税等の軽減措置(住宅用地特例)が受けられなくなります。
軽減税率の適用が外されると、1.4%の税率でそのまま課税されます。更地に戻した場合も特例の対象外となります。特例による軽減税率は最大で1/6なので、更地に戻すと固定資産税が最大6倍に増加します。
空き家を売るか貸すか迷われている方もいらっしゃるかと思います。そこで、この章からはそれぞれのメリットデメリットを挙げていきます。
【空き家を売るメリット】
メリット①:売却したら現金化できる
空き家を売却すれば、その資産を現金化することができます。手元に現金が入ることで、将来の投資や生活費に活用できます。
メリット②:空き家の維持や管理から解放される
空き家を売却すれば、その維持や管理から解放されます。管理やメンテナンスにかかる手間や費用がなくなり、ストレスフリーな生活を送ることができます。
デメリット:資産がなくなる
空き家を売却すれば、その資産が失われます。将来的な資金不足や突発的な支出に備えて、資産を保持したい場合は慎重に考える必要があります。
空き家を貸すメリットは以下のとおりです。
【空き家を貸すメリット】
メリット①:家賃収入を得られる
空き家を貸し出すことで、家賃収入を得ることができます。定期的な収入源となり、経済的な安定感を得ることができます。
メリット②:家の劣化を防げる
定期的な入居者がいることで、家の劣化や荒廃を防ぐことができます。空き家リスクを低減し、不動産の価値を維持することができます。
デメリット①:空き室リスクがある
長期間入居者がいない場合、空き室リスクが発生します。家賃収入が途絶えることで収入の不安定性が生じる可能性があります。
デメリット②:将来売りたいときに難易度が上がる
将来的に売却したい場合、入居者がいる状態での売却は難しくなります。また、入居者との契約解除などの手続きが必要となります。
デメリット③:毎年確定申告が必要
家賃収入がある場合、毎年の確定申告が必要となります。手続きの煩雑さや税金の支払いに対する負担が生じる可能性があります。
空き家を放置していてもひとつもメリットはありません。売るか貸すか早めに選択をしないと損をするばかりです。前章では売る場合と貸す場合のメリットデメリットを解説しましたが、この章では、空き家を売るか貸すか、判断する際のポイントを解説します。
賃貸物件としての需要があるかどうかが重要です。周辺の住宅環境やアクセスの便が良い場合、賃貸需要が高い可能性があります。地域の賃貸市場を調査し、需要の有無を確認しましょう。また、空き家が古くて劣化している場合、貸す前に修繕やリノベーションが必要かもしれません。その場合、費用と時間がかかりますが、需要が高ければ費用対効果が期待できます。
空き家を売るか貸すか悩む際に、将来空き家に戻る可能性が重要な指標となります。不動産は一度売却すると同じものを再度手に入れるのは難しい場合がほとんどです。数年後や十数年後に再び空き家で暮らしたい、あるいは建て替えて移住したいと考えているのであれば、不動産を売却せずに賃貸に出して維持することが賢明です。
空き家を貸し出すと家賃収入は得られますが、空き室リスクもありますし、そもそも賃貸としての需要があるか(賃貸向きの物件であるか)も重要なポイントとなります。
また、「一生賃貸経営をするつもりはない、いずれ空き家を売却したい」と考えている場合、賃貸として運用する期間が長くなるほど売却が難しくなる可能性があります。不動産の価値は築年数とともに下がっていく傾向がありますので、将来の売却計画も考慮に入れておくことが重要です。
ミツバハウジングでは空き家売却のご相談も承っております。電話でもメールでも構いません。何でもご相談ください