345.フラット35と民間ローンの違いサムネ
■住活コラム

親から相続した不動産を売却したい②【税金や特例】

【目次】

1.金利の基礎知識

金利の基礎知識の画像

まずは、金利の仕組みをおさらいしておきましょう。

【金利のタイプ】

 

特徴

メリット

デメリット

向いている人

変動金利型

借入期間中に金利が変動する。原則として、半年ごとに金利が見直され、5年ごとに返済額に反映される。

・固定金利よりも金利が低い

・金利が上昇しなければ固定金利よりも返済額は少ない

・金利上昇のリスクがある

・金利が上昇すれば、返済額が高くなる

・金利の動向をこまめに確認できる人

・返済期間が短い、借入金額が少ない人

・金利が上昇して返済額が増えても経済的に余裕がある人

全期間固定金利型

借入期間中、ずっと金利が変わらない。

・返済額が変わらないので将来のライフプランがたてやすい

・金利が変わらない安心感

・変動金利よりも金利が高い

・今後、金利が低くなれば変動金利よりも返済額が多くなる

・安定した資金計画を立てたい人

・今後、教育費などで支出が多い人

固定期間選択型

3年、5年、10年など固定金利の期間が決まっていて、期間終了後に適用金利を選択する。

・固定期間中は毎月返済額が増えない安心感がある

・固定期間経過後に金利が下がっていれば、低い金利を享受できる

・固定する期間が長くなればなるほど、金利は高くなる

・固定期間経過後に金利が上がっていた場合、返済額が増える

・教育費がかかる一定時期だけ返済額を安定させたい人

・車のローンなど、返済が重なる時期だけ返済額を抑えたい人

 

【返済方式】

 

住宅ローンの返済には「元利均等返済」と「元金均等返済の2種類があります。名前が似ているものの、中身はかなり異なります。

元利均等返済:月々の元金と利息の合計額を一定に保ちながら返済していく方法です。合計額が一定なので、支出の計算が容易です。ただし、元金の返済ペースが元金均等返済よりも遅いため、総支払額は多くなります。

 

元金均等返済:月々の元金の返済額を一定に保ちながら返済していく方法です。元金の返済スピードが速いのが特徴で、借入当初の月々の返済額は多くなりますが、元金を早く返済したい方には向いています。

2.住宅ローンの種類

住宅ローンの種類のイメージ画像

1.住宅ローンの種類

公的ローンと民間ローンの特徴は以下のとおりです。

 

・公的ローン

国や自治体などが提供する住宅ローンです。「財形住宅融資」「自治体融資」が該当します。

 

・民間ローン

民間の銀行や保険会社などが提供する住宅ローンです。都市銀行・地方銀行、信用金庫・農協など、各金融機関が提供しているローンの他、不動産会社やハウスメーカーが金融機関と提携している「提携ローン」が該当します。

特徴は以下のようになります。公的ローンに分類される自治体融資については、自治体によって融資の条件が異なります。各自治体のホームページなどで確認ください。

 

 

公的ローン(財形住宅融資)

民間ローン

審査

比較的ゆるい

比較的厳しい比較的厳しい

勤続年数

規定なし

2〜3年以上

年収

規定なし

200〜400万円以上

ローンの取引履歴

民間ほど重視しない

(直近3ヶ月の間に延滞があると不可)

非常に重視する

(過去2年間に2回以上の延滞があると不可)

選択金利

期間選択型固定金利

変動金利

全期間固定金利

期間選択型固定金利

ミックス型

借入限度額

4,000万円(財形住宅融資)

最大1億円

年齢制限

満18歳以上66歳未満(財形住宅融資)

65歳

団信の加入

任意

加入

物件の技術基準の審査

あり

なし

 

 

2.フラット35は行政が運営するローン

 

フラット35は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して扱っている住宅ローンで、公的ローンと民間ローンの中間的な存在です。

フラット35の特徴を挙げると、主に以下の4つが大きなポイントとなります。

  1. 人に対する審査基準はゆるめだが、住宅に対する審査基準が厳しい
  2. 金利は固定金利のみ
  3. 団体信用生命保険への加入は任意
  4. 保証料不要

次項で詳しく解説します。

3. フラット35と民間ローンの違い

フラット35と民間ローンの違いのイメージ画像

それでは、フラット35と民間ローンの違いを解説します。

 

1.審査基準

フラット35と民間ローンの違いは、審査基準において顕著に現れます。

民間ローンでは、返済負担率だけでなく、勤続年数や勤務形態も審査対象となり、収入の安定性が強く重視されるため、審査が通りにくいことがあります。一方で、フラット35は借り手の信用履歴や収入などには柔軟な審査が行われつつも、不動産の価値や担保価値には高い基準が設けられています。これは、「長期間、安全に住める住宅を増やしたい」という住宅金融機構の意向によるものです。

フラット35の審査基準についてはこちらからご確認ください。

 

申込要件

https://www.flat35.com/loan/flat35/conditions.html

【フラット35】の対象となる住宅・技術基準

https://www.flat35.com/loan/tech.html

 

2.金利

民間の住宅ローンでは変動金利型や固定期間選択型から返済方法を選べますが、フラット35全期間固定金利が唯一の選択肢です。

さらに、フラット35は、頭金が1割用意できない場合は金利が更に上昇することになります。具体的な金利の違いは、以下のようになります。

 

借入期間

15~20年

21~35年

フラット35

(頭金1割以上)

年1.430%

年1.910%

フラット35

(頭金1割未満)

年1.570%

年2.050%

※2023年12月適用金利

 

選択できる金利が固定だけなので、変動金利と比べると返済額が高くなってしまいます。フラット35の2023年12月時点での金利と民間ローン(みずほ銀行)の変動金利型と比較をしてみましょう。

 

 

適用金利

毎月の返済額 

総返済額

(諸費用は除く)

フラット35

年1.910%

88,198円     

40,043,406円

(頭金300万円含む)

民間ローン(みずほ銀行:ネットローン)

年0.375%

76,229円     

32,016,270円

総返済額の差額

▲11,969円

▲8,027,136円

借入金額3,000万円・返済期間35年間

 

フラット35の場合、頭金を1割(300万円)用意しても毎月の返済額は民間ローンよりも毎月1万円ほど高くなります。さらに総返済額の差額は800万円となります。固定金利なので安定感はありますが、少しでも返済額をおさえたいという人には民間ローンの変動金利型の方が向いています。

 

3.団体信用生命保険

団体信用生命保険(団信)は、住宅ローン契約者が死亡または高度障害に陥った場合にローンの支払いが免除される保険です。

フラット35では、団体信用生命保険(団信)への加入は任意ですが、民間ローンでは団信に加入しなければ住宅ローン契約が成立しません。

高齢者や健康に不安のある方にとっては団信に加入しなくてもフラット35が利用できるという利点があります。ただし、もしもの場合に備えて生命保険でカバーすることも重要です。生活状況や健康状態に合わせて、適切な保険に加入することをおすすめします。

フラット35で加入できる団信は以下の2タイプです。

 

・新機構団信

・新3大疾病付機構団信

 

新3大疾病付機構団信は、基本プランの「新機構団信」と医療と介護の保障が加わったタイプの団信です。詳しくはこちらからご確認ください。

 

4.保証料

民間の住宅ローンでは保証料が無料の場合もありますが、通常は借入金額の約2%が相場とされています。さらに、審査の結果に応じて、連帯保証人などが求められることもあります。それに対し、フラット35は保証料も不要で保証人も不要です。

ちなみに、融資を受ける際の事務手数料については、金融機関ごとに異なる設定があります。フラット35と民間ローン、どちらが高いかは一概に言えません。事務手数料の相場は、借入金額の約2%程度か、あるいは3万円から30万円の範囲で設定される場合もあります。

4. フラット35のメリットデメリット

フラット35のメリットデメリットのイメージ画像

次に、フラット35のメリットデメリットをみていきましょう。

 

1.フラット35のメリット

メリットは以下のようになります。

 

・金利が変わらない固定金利なので資金計画が立てやすい

フラット35は全期間が固定金利型しか選択できないため、返済中に金利の変動リスクを受けません。この特徴から、変動金利や固定期間選択型の住宅ローンと比較して、より計画的な返済が可能です。

 

・団体信用生命保険に加入しなくてもよい

フラット35では、団信への加入が任意となっているため、健康に不安がある方でも安心して住宅ローンを組むことができます。団信に加入しない場合は金利が引き下げられ、その結果、住宅ローンの返済額も軽減されます。この柔軟性が、フラット35の魅力の一つと言えるでしょう。

 

・個人事業主や転職直後の人でも審査に通りやすい

フラット35は、民間ローンに比べて審査が緩い傾向があります。年収基準や返済負担率などの条件をクリアすれば、個人事業主や最近転職したばかりで勤続年数が短い方でも審査に通りやすいとされています。

 

2.フラット35のデメリット

続いて、デメリットです。

 

・変動金利型よりも金利が高い

フラット35の最も大きなデメリットは、適用金利の高さです。変動金利型と比較すると、フラット35の金利は高めなので、現在の超低金利が返済終了まで続く場合は、変動金利を選んだ方がお得になります。

 

・住宅に対する審査基準が厳しい

フラット35の審査は借入者に対しては比較的緩い傾向がありますが、一方で購入対象となる住宅には厳しい基準が適用されます。住宅金融支援機構が定めた技術基準をクリアする必要があり、これを確認するためには指定機関による物件検査が不可欠です。建築基準法に基づく検査済証を入手するため、手数料が発生し、これは個人負担です。もし技術基準を満たせない場合、フラット35を利用することは難しくなります。

ただし、省エネ性能や耐震性、バリアフリー性、耐久性などの性能基準をクリアした住宅であれば、金利を引き下げられる「フラット35S」を利用することができます。これにより、より良い住宅を手に入れる際の負担が軽減されます。

 

・繰り上げ返済の最低金額が高い

現在、多くの銀行では1円からの繰り上げ返済が可能となっています。しかし、フラット35の場合は、ネット銀行を含む様々な銀行で最低10万円、窓口での繰り上げ返済は最低100万円からとなっています。ただし、手数料は無料なため、まとめて繰り上げ返済を行う場合にはデメリットはほとんどありません。

5. まとめ

コラム・住まい探しに役立つ情報