【住宅ローン】低金利時代はもう終わり?今後は上がる!?
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【目次】
[4]今後も低金利は続くのか?
2.2023年に高金利の人が激減し、金利が上昇する可能性も
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長らく低金利政策をとってきた日銀が2022年12月に大規模緩和を修正する方針を定め、長期固定の金利が上昇しました。黒田東彦日銀総裁の任期満了である2023年4月には更なる金利上昇も考えられますし、銀行間での変動金利の価格競争による金利引き下げもついに終わりが来るのでは、と様々な不動産専門家が予想しています。
これまでの低金利はいつまで続くのか?特に住宅ローンで変動金利を選択されている方は今後の金利動向がどうなるのか気が気ではないですよね。当コラムも予想の域を超えませんが、今後の金利の動向を考えてみたいと思います。
[1] まずはおさらい!金利の種類やメリットデメリット
当コラムでは何度も金利の種類については解説していますが、おさらいとして、金利の種類とそれぞれのメリットデメリットや向いている人をまとめてみました。
・変動金利型…金利が半年ごとに変動し、5年ごとに返済額が見直されます。
メリット | ・固定金利よりも金利が低い
・金利が上昇しなければ固定金利よりも返済額は少ない |
デメリット | ・金利上昇のリスクがある
・金利が上昇すれば、返済額が高くなる |
向いている人 | ・金利の動向をこまめに確認できる人
・返済期間が短い、借入金額が少ない人 ・金利が上昇して返済額が増えても経済的に余裕がある人 |
・全期間固定金利型…借入期間中は金利が変わりません。返済額は金利がずっと変わらないので完済まで一定です。
メリット | ・返済額が変わらないので将来のライフプランがたてやすい
・金利が変わらない安心感がある |
デメリット | ・変動金利よりも金利が高い
・今後、金利が低くなれば変動金利よりも返済額が多くなる |
向いている人 | ・安定した資金計画を立てたい人
・今後、教育費などで支出が多い人 |
・固定期間金利型…適用される金利の期間が決まっており、期間終了後に適用金利を選択します。固定期間は1~30年の間です。
メリット | ・固定期間中は毎月返済額が増えない安心感がある
・固定期間経過後に金利が下がっていれば、低い金利を享受できる |
デメリット | ・固定する期間が長くなればなるほど、金利は高くなる
・固定期間経過後に金利が上がっていた場合、返済額が増える |
向いている人 | ・教育費がかかる一定時期だけ返済額を安定させたい人
・車のローンなど、返済が重なる時期だけ返済額を抑えたい人 |
[2] 変動金利型の仕組み
固定金利は借入期間中金利が変わらないので仕組みが分かりやすいですが、変動は何となく「金利の変動と連動するだけ」というイメージをお持ちの方も多いかと思うので、この章では変動金利型の仕組みについて説明します。
1.金利が見直されるタイミングは半年ごと
変動金利型は、半年ごとに金利が見直されます。
金利見直しに対して返済額金利が見直されるタイミングは金融機関によって異なりますが、4月と10月の半年ごとに見直されることが一般的です。
2.金利は短期プライムレートによって決まる
変動金利の利率は、短期プライムレートに1%加算した利率を基準として決定します。略して短プラとも言います。
短期プライムレートとは、銀行が最優良企業(財務状況が良く、信用できる)に融資する際の最優遇貸出金利のうち、1年以内の短期貸出に適用される金利のことです。
短期プライムレートは日銀の政策金利に影響を受けるため、今後日銀がマイナス金利政策を廃止してゼロ金利に戻した場合、短期プライムレートが上がる(変動金利も上がる)可能性があります。
3.金利が上がってもすぐに返済額は変わらない
半年ごとに金利が上がったらそのたびに返済額も変わってしまうのは大変!と思ったあなた。ご安心ください。変動金利には「5年ルール」と「125%ルール」という緩和措置があるので、急に返済額は変わりません。
5年ルール:金利が変わっても返済額は5年間変わらない
125%ルール:6年目以降で返済額が変わるとしても、従前の125%より高くならない
5年ルールが適用される場合、返済期間中に金利が上がっても返済額が増えるのは5年後です。すぐに返済額は変わらず、5年後にその時点で残っている元金と金利、残りの返済期間をから毎月の返済額が再計算されます。返済額が上がるのはこのタイミングです。これが5年ごとに繰り返されます。さらに125%ルールがある場合は金利がどんなに上がっても従前の返済額の125%より高くなりません。
もともと固定金利よりも元々金利が低い上に、このようなルールがあるのなら変動金利の方がお得なのでは?と思われる方も多いかもしれません。しかし、5年ルールにしても125%ルールにしてもあくまで返済額を急増させないための緩和措置でしかなく、決して得をしているわけではないということは覚えておきましょう。
金利が上がれば返済額に対する利息は高くなるので、そのぶん毎月の元金の返済金額は少なくなります。返済期間中に元金を支払いきれなかった場合は、最後の返済でまとめて払わなければなりません。言い方は悪いですが、ツケがたまっていくイメージです。
また、銀行や住宅ローンの種類によっては5年ルールと125%ルールを設けていない場合もありますので、変動金利を選択する際は金利の低さだけではなく内容にも注視しましょう。
[3] 2023年3月時点での金利動向
詳しくは各銀行のホームページや店頭で確認をお願いしたいのですが、2023年3月時点での金利動向を説明します。
まずは変動金利ですが、短期プライムレートが基準のため、現時点では変化はありませんでした。2023年3月の変動金利の最低金利は、前月と横ばいの0.289%で、メガバンクの変動金利(適用金利の下限)も前月と変わらず、みずほ銀行0.375%、三菱UFJ銀行0.475%、三井住友銀行0.475%となっています。
固定金利は固定3年で0.750%(前月比±0%)、固定5年で0.750%(同比+0.010%)、固定10年で0.900%(同比+0.050%)となり、固定5年と10年は上昇しています。フラット35(借入期間21年以上、融資比率9割以下)の3月の最低金利は、1.960%(前月比+0.080%)となり、5ヶ月連続して上昇となっています。
2023年2月に、日銀の次期総裁候補である植田和男氏が現在の金融緩和政策を継続する旨の発言をしました。そのため、前月と比較すると大幅な変化はありませんでしたが、固定金利の金利が上がったことで変動金利との金利差が拡大し、従来以上に変動金利を選ぶ人が増えることが予想されます。
[4] 今後も低金利は続くのか?
現時点では固定金利は若干の金利上昇、変動金利は横ばいの状態です。しかし、現在の低金利は下げ止まりとも言われています。この章では、今後の金利がどうなるのか考えてみましょう。
1.銀行間での変動金利の価格競争はまだ続く
ここ数年は歴史的低金利時代とも呼ばれており、銀行間では新規住宅ローン利用者獲得のための金利引き下げ競争が続いています。
住宅ローン業界では、この金利引き下げのことを「金利優遇」と呼んでいます。
各銀行の変動金利は0.4%前後の低金利となっていますが、その大半は金利優遇によるものです。金利優遇は、年々拡大しています。各銀行が新規顧客獲得のために金利引き下げの価格競争を始めたことが発端です。実際、メガバンクである三井住友銀行を例に挙げると、2008年9月の金利優遇幅は1.000%でしたが、2022年12月には2.000%まで拡大しています。
この銀行間での変動金利の価格競争はいつまで続くのでしょうか。現在の変動金利は0.4%前後。どう考えても銀行にとっては赤字なはずです。今までは赤字になってでも新規顧客獲得に走ってきたわけですが、さすがに変動金利の金利は下げ止まりと考えた方がよいでしょう。
ただ、住宅金融支援機構が毎年リリースしている「民間住宅ローンの貸出動向調査(2022年度)」の「住宅ローンへの取り組み姿勢/積極化方策」によると、金利優遇拡充という回答は42%(前回38%)に増加しており、銀行間での住宅ローン新規顧客獲得合戦が続くことが予想できます。
2.2023年に高金利の人が激減し、金利が上昇する可能性も
超低金利でも銀行が経営を維持できるのは、過去に高金利で住宅ローンを借りていた人の利息が入ってくるからです。この人達が完済したらどうなるのでしょう。
住宅金融支援機構「2020年度 住宅ローン貸出動向調査」によると、完済債権の経過期間は10年超15年以下で返済する人が43.2%となっています。住宅ローンの契約時は25年超30年以下に設定する人が多いですが、借り換えなどで一括返済する人や繰り上げ返済をする人も含まれるため短くなっているようです。
2008~2011年頃までは金利は今よりも高かったのですが、2011年以降はリーマンショックにより日銀のゼロ金利政策によって金利はどんどん低くなっていきました。仮にこの頃に住宅ローンを借りていた人が14年で完済されているとすれば、以下のような計算になります。
2008〜2011年 + 14.4年 ≒ 2023〜2026年
あくまでも予想にはなりますが、2008~2011年頃に高金利で住宅ローンを借りていた人達が2023〜2026年頃に完済したとなると、2011年以降の低金利で住宅ローンを借りている人達しか残らない計算になります。今までは高金利の人が払う利息で銀行は何とかなっていたのに、これでは困りますよね。銀行が行う対策として真っ先に思いつくのは金利を上げること。各銀行が横並びで金利を上げる可能性は充分に考えられます。
今回は、2023年の住宅ローン金利見通しをメインにご説明しました。
当面の住宅ローン金利は
・変動金利は現状維持。価格競争はまだ続く見込み。(ただし、日銀の政策や過去に高金利で借りていた人達が完済したら金利上昇があるかも)
・長期固定金利は、今後徐々に上昇していく可能性がある
住宅ローンを利用する人の7割は変動金利を選択すると言われています。ただし、みんなが選ぶから自分にも合っているとは限りません。いつまでも低金利が続くとは限りませんので、今後も金利の動きや変動金利の特徴などをしっかりと理解して検討しましょう。