「頭金なしで今買う」「頭金を貯めてから買う」どちらが良い?
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【目次】
2.「頭金なしで今買う」メリットデメリット
2.総返済額は多くなるので資金計画は念入りに
「頭金なしで今買う」か「頭金を貯めてから買う」か、どちらが良いかは個人の状況や優先事項に依存しますが、それぞれのメリットやデメリット、支払い総額の比較をしないことには判断がつかないかと思います。
記事内でこれらを詳しく解説しますので、家を買うタイミングでお悩みの方はぜひご一読ください。
[1] そもそも頭金なしで住宅ローンを組めるのか
実際、頭金なしで住宅ローンを組めるのか不安な方も多いことでしょう。結論から申し上げますと、組めます。詳しくは以下で説明します。
1.「頭金は物件価格の2割必要」という時代は終わっている
かつては「頭金は物件価格の2割必要」と言われていました。しかし、現代の住宅ローン市場は変化しており、頭金が必須という考え方はもはや過去のものと言えます。
親や祖父母の世代からは「家を買うなら頭金が必要だ」という声を聞いたことがあるかもしれません。その理由は、昔の住宅ローン市場にあります。昔の金融機関は、物件価格の70~80%までしか融資してくれなかったため、残りの20~30%は頭金として用意する必要がありました。その名残で「頭金は物件価格の2割必要」という指標が受け継がれてきたのでしょう。
しかし、現代では状況は異なります。頭金を出さずに物件価格の全額を借り入れる「フルローン」という選択肢も存在し、頭金なしで住宅ローンを組むことは決して珍しいことではありません。この変化を踏まえ、頭金の必要性についての古い概念を見直す時が来ているのかもしれません。
2.審査でプラスには働くが頭金ゼロでもローンは組める
住宅ローンの審査において、頭金がマイナスな影響を及ぼすことはまずありません。
特に収入が低い場合は、わずかな頭金でも用意することで、金融機関に「貯蓄に余裕がある」という好印象を与えることができるので、審査でプラスに向上させることができます。ただ、頭金がゼロでも審査に通らないわけではないですし、信用情報や収入、返済負担率が適切であれば、住宅ローンを組むことは可能です。
[2] 「頭金なしで今買う」「頭金を貯めてから買う」どちらが良い?
さて、今回の記事の本題です。「頭金なしで今買う」「頭金を貯めてから買う」どちらがよいのか、比較していきましょう。
1.35年間の支払い総額で比較
現在の家賃を8万円と仮定して、頭金なしで今買う場合と、頭金を貯めてから買う場合の35年間の支払い総額を比較します。
【設定条件】
購入物件:3,000万円
金利:全期間固定1.3%
借入額:頭金なしで今買う…3,000万円
頭金300万円を5年間貯めてから買う…2,700万円
頭金なしで今買う | 5年間貯めて頭金300万円 | |
借入額 | 3,000万円 | 2,700万円 |
返済期間 | 35年 | 30年 |
毎月の返済額 | 88,944円 | 90,613円 |
頭金+総返済額 | 37,356,564円 | 35,620,597円 |
5年間分の家賃 | 0円 | 4,800,000円 |
頭金+総返済額+家賃 | 37,356,564円 | 40,420,597円 |
35年間の支払い総額で比較 | 37,356,564円 - 40,420,597円 = 3,064,033円
頭金なしで今買う方が、約306万円得 |
「頭金なしで今買う」が約306万円得という結果になりました。これだけの差が開いた原因は、5年間分の家賃支出480万円が影響しています。
「頭金を貯めてから買う」場合、5年間貯めて頭金300万円貯めたのに、5年間分の家賃で480万円支払っています。逆に言えば、家賃を除いた頭金+総返済額は173万円得をしているので、実家住まいで家賃が不要の方は頭金を貯めてから買う選択もよいかもしれません。
2.「頭金なしで今買う」メリットデメリット
頭金なしで住宅ローンを組むことには以下のメリットデメリットがあります。
「頭金なしで今買う」メリット
・早く家を買える
頭金を用意する手間や時間を省くことができるため、住宅を迅速に購入できます。特に急いで新しい住まいが必要な場合や、物件が限られている状況では、頭金なしの選択が得策でしょう。
・自己資金を保持できる
頭金を支払わないことで、自己資金を手元に保持できるメリットがあります。これにより、突発的な支出や家の修繕費用、将来の予測外の出費に備えるための資金を確保できます。
・住宅ローン控除を最大活用できる
住宅ローン控除は、年末時点でのローン残高の0.7%が所得税から差し引かれる税制です。従って、頭金なしでフルローンを組む場合、控除の恩恵を最大限に受けることができます。頭金を支払うと、ローン残高が減少し、控除の額も減少するため、意図的に頭金を出さずにローンを組む方もいらっしゃいます。
「頭金なしで今買う」デメリット
・借入額の増加
頭金なしで住宅ローンを組むと、借入額が増加します。これにより、総返済額も増加し、返済期間が長くなる可能性があります。さらに、返済負担率が高くなることも考慮しなければなりません。
・金利の制限
一部の金融機関では、頭金の金額が少ない場合、最優遇金利の適用が制限されることがあります。たとえば、フラット35では、借入額が購入価格に対して一定の割合を超えると金利が上昇します。
・負債残留のリスクがある
住宅ローンを組む際には、不動産に抵当権が設定されます。将来的に不動産を売却する場合、残債を一括返済しなければ抵当権は解除されません。借入額が多い場合、売却時に残債を返済できるかに関わるリスクが高まります。売却金がローン残高を下回る場合、自己資金を用意しなければならない可能性があります。
3.「頭金を貯めてから買う」メリットデメリット
次に、「頭金を貯めてから買う」メリットデメリットです。
「頭金を貯めてから買う」メリット
・住宅ローンの総返済額を削減できる
頭金を用意することで、借入金額が減少し、その結果、総返済額や月々の返済額を削減することができます。
・審査の際に有利になる
金融機関は返済能力を評価するために借主の収入や貯蓄状況を考慮します。頭金を用意することは、「貯蓄ができる余裕がある」という印象を与え、住宅ローンの審査に通過しやすくなります。特に収入が限られている方にとって、少額の頭金でも印象向上の手助けとなります。
・返済期間を短縮できる
頭金を用意することで、借入金額が減り、返済期間を短縮できます。短い返済期間は、総返済額を削減するだけでなく、ローンの完済も早めます。たとえば、500万円の頭金を用意した場合と頭金なしでローンを組む場合、月々の支払金額を同じに設定すれば、頭金を用意した前者の方が早くローンを完済できます。
「頭金を貯めてから買う」デメリット
・資金準備に時間がかかる
頭金を用意するためには、貯金に時間がかかります。既に貯蓄がある場合は問題ありませんが、ゼロから始める場合、それなりの期間が必要です。この間に金利が上昇する可能性があることや、年齢制限があることに注意が必要です。多くの金融機関は、完済時の年齢を80歳と設定しているため、45歳を過ぎると住宅ローンの審査が難しくなることがあります。
・団体信用生命保険(以下、団信)への加入
住宅ローンを利用する場合、通常、団信に加入する必要があります。団信の加入は健康状態に基づいて許可されるため、健康でない場合は加入が難しいです。そのため、頭金を長期間かけて貯めても、団信に加入できない場合は住宅ローンを組むことができません。この点にも留意が必要です。
・支払い家賃がもったいない
賃貸住宅に住んでいる場合、頭金を貯める期間中も家賃の支払いが続きます。賃貸住宅の場合、支払った家賃に対して何らかの所有権を得ることはできません。したがって、頭金を貯める間に支払った家賃が「無駄」であると感じることもあるでしょう。
参考:住宅ローンに年齢制限はある?何歳までに組むのがベスト?
[3] 「頭金なしで今買う」場合に注意したいこと
「頭金なしで今買う」選択にはいくつかのメリットがありますが、同時に注意すべき点も存在します。以下に、頭金なしで住宅を購入する際の注意点を紹介します。
1.頭金なしでも自己資金は必要
頭金がないからといって、自巨資金が不要というわけではありません。実際には、住宅購入にはさまざまな費用がかかります。
不動産の取引において、仲介手数料などの費用は住宅ローンに組み込むことができますが、手付金と印紙代については現金で必要です。
印紙代は通常、数千円から数万円程度で、支払いに困ることはまずありません。しかし、手付金については別の話です。通常、手付金は物件価格の一部で、約100万円程度の支払いが必要とされます。この金額を用意できるかどうかが、「家を今すぐ買ってもよいかどうか」の分かれ道になります。
2.総返済額は多くなるので資金計画は念入りに
「頭金なしで今買う」場合、将来の支出、金利の変動、収入の増減などを考慮に入れ、返済に不安のない範囲での選択をすることが重要です。
まず、頭金を支払わないと、借入金額が増加し、それに伴って総返済額も増えることに留意しましょう。総返済額を考える時には、金利率の動向にも注意が必要です。金利が上昇すると、返済額に影響を及ぼす可能性があるため、変動金利を選択した場合は、将来の金利の動向にも注意を払いましょう。
さらに、注意したいのはローンの長期化です。頭金を支払わないことで、返済期間が長くなる可能性があります。頭金を支払わないことで、ローンの返済期間が長くなることがあります。長期のローンは金利負担が増加し、将来のライフプランに影響を与える可能性があるため、慎重な計画が必要です。
3.フラット35は金利が高くなる
フラット35という住宅ローンでは、購入価格に対して借入額が9割を超えると金利が上昇する仕組みとなっています。
2023年10月時点でのフラット35の金利を見てみましょう。
【フラット35】取扱金融機関が提供する金利の範囲と最も多い金利
借入期間:21年以上35年以下
融資率 | 金利の範囲 | 最も多い金利 |
頭金あり(融資率9割以下) | 年1.880%~年3.270% | 年1.880% |
頭金なし(融資率9割超) | 年2.020%~年3.410% | 年2.020% |
出典:フラット35 金利情報
ちなみに、2023年7月時点では、頭金ありの最も多い金利年1.730%、頭金なしの場合は年1.870%でした。わずか3ヶ月で金利が微妙に上がっていますね。
それでも、まだ低金利と言える状況が続いていますが、将来的に金利が上昇する可能性があることを考えると、優遇金利が制限されることは不利につながります。そのため、フラット35を活用する際には、頭金を1割以上用意しておくことが賢明でしょう。
「頭金なしで今買う」「頭金を貯めてから買う」どちらがよいのかは、あなたのライフスタイル、収入、将来の資金計画によって異なります。また、金融アドバイザーや不動産会社のアドバイスを受けることも役立つでしょう。
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