【2023年版】長期優良住宅のメリットデメリット
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【目次】
2.減税の優遇措置を受けられる
2.一般の住宅よりも工期が長い
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長期優良住宅とは、日本の住宅建築における特定の基準を満たした高品質な住宅のことを指します。長期優良住宅を建てれば、快適な家に住めるだけではなく、減税の優遇措置を受けられたり、フラット35の金利優遇を受けられたり、メリットが多いのですが、デメリットもいくつか存在します。
記事内で詳しく説明しますので、長期優良住宅を検討中の方はぜひご一読ください。
[1] 長期優良住宅とは
この章では、長期優良住宅の認定基準と2023年10月に改正された内容について説明します。
1.長期優良住宅の認定基準
長期優良住宅は、2009年から始まった「長期優良住宅認定制度」の下で、一定の条件を満たし、認定を受ける必要があります。
この認定を受けるには、さまざまな性能項目が評価されます。これらの項目には、劣化への対策、耐震性、維持管理、改修の容易性、バリアフリー性、省エネルギー性、住環境、住戸の広さ、そして維持保全計画が含まれます。厳格な基準を満たす物件のみが、長期優良住宅として認定されます。
・劣化対策
数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できること。
・耐震性
極めてまれに発生する地震に対し、継続して住むための改修の容易化を図るため、損傷レベルの低減を図ること(耐震等級2以上または免震建築物など)
・維持管理・更新の容易性
構造躯体に比べて耐用年数が短い内装・設備について、維持管理(清掃・点検・補修・更新)を容易に行うために必要な措置が講じられていること。
・可変性
居住者のライフスタイルの変化等に応じて間取りの変更が可能な措置が講じられていること。
・省エネルギー性
次世代省エネルギー基準に適合するために必要な断熱性能などを確保していること(省エネルギー対策等級4以上)
・バリアフリー性
将来のバリアフリー改修に対応できるよう共用廊下等に必要なスペースが確保されていること。
・省エネルギー性
必要な断熱性能等の省エネルギー性能が確保されていること。
・居住環境
良好な景観の形成や、地域おける居住環境の維持・向上に配慮されていること(※居住環境基準について下記参照)
・住戸面積
良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること。
〔戸建て住宅〕75m2以上(2人世帯の一般型誘導居住面積水準)
〔共同住宅〕40m2以上
※少なくとも1の階の床面積が40m2以上(階段部分を除く面積)
・維持保全計画
建築時から将来を見据えて、定期的な点検・補修等に関する計画が策定されていること
・災害配慮
申請建築物の位置が、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)外であること
2.2023年10月に改正された内容
2023年10月1日の長期優良住宅法改正に伴う変更については以下のとおりです。
1.建築行為を伴わない既存住宅の認定制度の創設
優良な既存住宅について、増改築行為がなくとも認定(維持保全計画のみで認定)できる仕組みが創設されます。
2.省エネルギー対策の強化、壁量既定の見直し
省エネの基準をZEH相当の水準とし、住宅性能表示制度の断熱等性能等級5及び一次エネルギー消費量等級6とします。断熱材や省エネ設備の設置などによる木造建築物の重量化に伴って、必要な壁量等の構造安全性の基準が整備されます。
3.共同住宅に係る基準の合理化等
規模の基準や長期使用構造等の基準の見直しによる合理化がされます。
詳細については、 国土交通省ホームページをご覧ください。
[2] 長期優良住宅のメリット
長期優良住宅には、以下のようなメリットがあります。
1.快適な家に住める
長期優良住宅は、耐久性、省エネルギー性、快適性、安全性など、あらゆる側面で厳格な基準をクリアしており、その結果、長寿命で、住み心地が良く、エネルギー効率も優れています。
長期優良住宅が持つ省エネルギー性の特徴により、夏や冬の気温変化に対処しやすく、長期的な住み心地の良さが保たれます。日本の湿度の高い気候にも対応するために、断熱材や湿度管理に配慮されていて、住宅自体も劣化が少ないので、長期的な住み心地の良さが保たれます。
2.減税の優遇措置を受けられる
長期優良住宅として認定されれば、所得税(住宅ローン控除)、不動産取得税、登録免許税、固定資産税を減税される優遇措置を受けられます。
・所得税(住宅ローン控除)
住宅ローン控除は、10 年以上の住宅ローンを利用して住宅購入・リフォームする人を対象に、年末の住宅ローン残高の0.7%相当額を控除する制度です。長期優良住宅は限度額が引き上げられます。
住宅の種類 | 控除対象限度額 | 13年間で控除される所得税と住民税の合計最大額 |
一般の住宅 | 3,000万円 | 273万円 |
長期優良住宅 | 5,000万円 | 455万円 |
※2023年12月31日までに入居した場合
・所得税(投資型減税)
さらに、長期優良住宅にかかった費用(上限650万円)の10%を年末の所得税額から控除する「投資型減税」という特例措置もあります。
住宅の種類 | 特例措置の内容 |
長期優良住宅 | 長期優良住宅にかかったコスト(上限650万円)の10%を年末の所得税額から控除 |
※2023年12月31日までに入居した場合。住宅ローン控除との併用不可
・不動産取得税
不動産取得税とは、各都道府県に申告と納税を行う地方税のことです。長期優良住宅は課税標準から控除される金額が増えます。
住宅の種類 | 控除額 |
一般住宅 | 1,200万円 |
長期優良住宅 | 1,300万円 |
※2024年3月31日までに取得した場合
・登録免許税
登録免許税とは、不動産の所有権や抵当権を登記する場合に、登記所で納付する国税のことです。不動産取引の中では「登記料」と呼ばれることが一般的です。
一般住宅の場合、不動産の価格に対して0.15%課税されますが、長期優良住宅は税率がさらに引き下げられます。そのほか、所有権移転登記にも軽減措置があります。
住宅の種類 | 保存登記 | 移転登記 |
一般の住宅 | 0.15% | 一戸建て 0.3%
マンション 0.3% |
長期優良住宅 | 0.1% | 一戸建て 0.2%
マンション 0.1% |
※2024年3月31日までに登録した場合
・固定資産税
長期優良住宅の場合、一戸建ては5年間、マンションは7年間、1/2に減額される減税措置の適用期間が延長されます。
住宅の種類 | 減税措置の適用期間 |
一般の住宅 | 一戸建て 1~3年間
マンション 1~5年間 |
長期優良住宅 | 一戸建て 1~5年間
マンション 1~7年間 |
※2024年3月31日までに新築した場合
3.「フラット35」の金利優遇を受けられる
長期優良住宅は「フラット35S」の金利が10年間0.25%引き下げられる金利Aプランが適用されます。
一般住宅でフラット35を組んだ場合と長期優良住宅でフラット35Sを組んだ場合の違いをシミュレーションしてみましょう。
【設定条件】
借入額4500万円
35年返済
元利均等返済
ボーナス払いなし
一般住宅(フラット35) | 長期優良住宅(フラット35S) | |
借入金利 | 全期間 1.37% | 当初10年間 1.12% |
月々の返済額 | 13万4935円 | 当初10年間 12万9560円
11年目以降 13万3467円 |
総返済額 | 約5668万円 | 約5559万円 |
長期優良住宅でフラット35Sを組むと、一般住宅よりも当初10年間の毎月返済額を5375円抑えることができました。また、総返済額も一般住宅よりも約109万円少なくなります。毎月の返済額の差は大きくなくても、総返済額をみると差が多いことが分かりますね。
4.地震保険料が割引される
地震保険は、建物の耐震性能に応じて異なる耐震等級に分けられています。
長期優良住宅は、その高い品質と耐震性から、地震保険料の割引率が高く設定されます。
耐震性 | 保険料の割引率 |
耐震等級1 | 10% |
耐震等級2 | 30% |
耐震等級3 | 50% |
免震建築物 | 50% |
[3] 長期優良住宅のデメリット
長期優良住宅は多くのメリットがありますが、デメリットや課題も存在します。以下は、長期優良住宅の一般的なデメリットを示したものです。
1.申請に費用と手間がかかる
長期優良住宅の建設には、一般的な住宅と比較して、申請費用と手続きに関する手間が増えます。詳しく見ていきましょう。
長期優良住宅を認定するためには、いくつかの費用が発生します。まず、長期使用構造等の確認や認定手数料が必要で、これらは一般的に5万円から6万円程度かかります。加えて、設計図書類の作成費用や、認定手数料、手続きの代行手数料などを考慮に入れると、合計で20万円から30万円程度の費用がかかるでしょう。
さらに、耐震性や断熱性能を向上させるための追加のコストも発生します。建築会社によって標準仕様が異なるため、具体的な費用は異なりますが、一般的に長期優良住宅の認定基準を満たすためには、建築費用が通常の住宅に比べて1.2倍から1.3倍程度かかると見積もられています。
ハウスメーカーによって価格が異なるため、費用を抑えるためには複数の建設会社に相談することが賢明です。各社から見積もりを取り、予算に合った選択をすることで、長期優良住宅の建設をより経済的に進めることができます。建設プロジェクトを計画する際には、費用と品質のバランスを考慮しましょう。
2.一般の住宅よりも工期が長い
長期優良住宅の建設には、通常の住宅よりも時間がかかることがあります。
この要因は、厳格な基準を満たす必要があるため、一定の工期が必要なことに起因しています。しかし、長期優良住宅の実績がある信頼性の高いハウスメーカーを選べば、工期の短縮も可能です。長期優良住宅を検討する際は、ハウスメーカーの実績やスケジュールについて詳しく確認しましょう。
3.建てた後も定期的なメンテナンスが必要
長期優良住宅の認定基準には、「維持保全計画」というものが含まれています。
この計画は、長期優良住宅としての高い性能を認定取得後も維持する必要があることを示しています。要するに、優れた住宅性能を維持するためには、定期的な点検と必要に応じた修繕が必要ということです。通常の住宅でも、10年以上が経過すれば点検や修繕が必要となることがありますが、長期優良住宅はその高水準な基準をキープし続ける必要があるため、建てた後も費用や手間はかかってしまいます。
[4] 長期優良住宅以外の住宅は今後どうなる?
2023年12月31日までに建築確認を受けた住宅、または登記簿上の建築日付が2024年6月30日以前の住宅については、借入限度額2,000万円、控除期間10年間として住宅ローン控除が適用されますが、それ以外は適用対象外となります。入居が2024以降になる可能性がある方はくれぐれもご注意ください。
ちなみに、住宅ローン控除を受けるには認定住宅であることを示す証明書の発行が必要です。長期優良住宅を建てる際、ハウスメーカーに「日本住宅性能表示基準における建設住宅性能評価書の写しか住宅省エネルギー性能証明書を発行していただけますか?」と確認しておきましょう。
参考記事:令和6年から「その他の住宅」は住宅ローン控除の対象外に!令和5年末までに家を買わないと損をする
長期優良住宅は、高い品質と性能を提供する一方で、建設コストや手続きには一般の住宅に比べて費用と手間がかかることがあります。しかし、その反面、長期的な住まいの快適性が確保できたり税制面での優遇措置を受けられたりするなど、メリットは多数あります。
記事内でもお伝えしましたが、2023年12月31日までに建築確認を受けた住宅、または登記簿上の建築日付が2024年6月30日以前の住宅については、住宅ローン控除が適用されますが、それ以外は適用対象外となりますのでご注意ください。