頭金なしでも住宅ローンを組める?頭金の平均額はどのくらい?
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【目次】
家を購入する際には、通常、物件代金の一部を現金で支払う「頭金」が必要とされます。しかし、中には頭金を用意することが難しく、物件代金の全額を住宅ローンで借り入れたいという方もいらっしゃいます。そこで疑問となるのは、頭金なしでも住宅ローンを組むことは可能なのかという点です。
そこで今回の記事では、頭金なしで住宅ローンを組むことの可否と、頭金ありなしで住宅ローンを組んだ場合のメリットデメリットについて解説します。
[1] 頭金の平均額
住宅金融支援機構「2022年度フラット35利用者調査」によると、2022年度のフラット35利用者の平均頭金の金額は以下のようになります。
建物種別 | 頭金の平均額 | 住宅購入費用に対す
頭金の割合 |
注文住宅 | 596.6 万円 | 16.7 % |
土地付き注文住宅 | 412.3 万円 | 9.3 % |
建売住宅 | 270.0 万円 | 7.5 % |
新築マンション | 785.9 万円 | 17.4 % |
中古戸建 | 214.9 万円 | 8.2 % |
中古マンション | 418.9 万円 | 13.8 % |
出典:「2021年度 フラット35利用者調査」
物件種別によってバラつきはありますが、購入価格の10〜20%を頭金として用意している方が多いようです。
ちなみに、新築マンションの頭金の平均金額が高い理由は、いくつかの要素が絡んでいます。まず、物件価格の高騰が一つの要因として挙げられます。需要の増加や土地の希少性などが物件価格の上昇を促しており、その影響が頭金にも反映されています。
[2] 頭金なしでも住宅ローンを組める?
そもそも、頭金なしで住宅ローンを組むことは本当に可能なのでしょうか。]
1.「頭金は物件価格の20%程度必要」は昔の話
住宅購入における頭金の必要性は、いくつかの要素によって変動します。
頭金の目安としては、一般的には物件価格の20%程度が挙げられます。つまり、物件が1,000万円であれば200万円の頭金が必要ということです。ただし、これはあくまで一般的な指標であり、20%程度の頭金がなければ住宅ローンが組めないというわけではありません。
昔の銀行は物件価格の70~80%までしか融資してくれなかったため、残りの20~30%は頭金として用意するのが常識でした。その名残で『頭金は物件価格の20%必要』という指標が定着したのでしょう。
一部の金融機関では、頭金なしの住宅ローン商品が提供されています。頭金ゼロでも住宅ローンは組める時代なのです。
ただし、頭金を支払わない場合、借入額が増えるため返済期間や利息負担が大きくなる可能性がありますし、返済負担率がギリギリであれば頭金は用意した方がよいでしょう。頭金なしで住宅ローンを組むメリットデメリットを後述しますので、充分に理解した上でご検討ください。
2.組めるかどうかは金融機関次第
金融機関によっては「物件価格の約10%程度を自己資金として準備する必要がある」といった要件がある場合もあります。
また、頭金の金額が少ない場合、最優遇金利(最も低い金利)が適用されないこともあります。個別のケースによって異なるため、頭金なしでの住宅ローンを検討する場合でも、金融機関の要件や諸費用に注意が必要です。
3.頭金なしで住宅ローンを組む場合は将来設計を念入りに
頭金なしで住宅ローンを組む場合、借入金額が多くなるので将来設計を念入りにしておく必要があります。
何歳で住宅ローンを組むかは人それぞれですが、年代によって将来設計で注意することも様々です。
20代や30代であれば、結婚後や子どもが生まれた後のことを考えて返済計画を練っておきましょう。出産によってかかる費用や成長してからの教育費などをあらかじめ把握しておくことが大切です。
そして、35歳を過ぎてから30年以上の長期ローンを組む場合は、完済時期が65歳を超える可能性があることにも留意する必要があります。
多くの金融機関では完済時の年齢を80歳としているため、40後半の場合は35年ローンを組めなくなります。35年で組みたい方は40前半で組むか、頭金を用意して借入額を減らして組む必要があります。
特に、高齢になればなるほど、定年後にどのように返済するのか、定年時までに完済できるようにするためにはどのよう返済をしていけばよいのかが大きな問題となります。頭金を用意して住宅ローンを組んだとしても同じことですが、頭金なしの場合は借入金額が多くなるため、念入りな計画が必要になるのです。
[3] 頭金ありで住宅ローンを組むメリット
この章では、頭金ありで住宅ローンを組むメリットを解説します。
1.住宅ローンの総返済額や月々の返済額が減る
頭金を準備することで、借入金額が減少し、その結果、総返済額や月々の返済額を削減することができます。
頭金を300万円用意した場合と用意しない場合を比較して、具体的な負担の減少をシミュレーションしてみましょう。
【設定条件】
物件価格:3,000万円
金利:0.8%
返済期間:35年
頭金なし | 頭金あり(300万円) | |
月々の返済額 | 8万1,919円 | 7万3,727円 |
年間返済額 | 98万3,028円 | 88万4,724円 |
総返済額 | 3,440万5,980円 | 3,096万5,340円 |
金利の支払金額 | 440万5,980円 | 96万5,340円 |
頭金を用意しない場合の月々の返済額は8万1,919円となりますが、頭金を用意する場合は7万3,727円となります。その差は8,192円。毎月のこととなると、これは大きな差ですね。
さらに、総返済額の差も顕著です。頭金なしの場合の総返済額は3,440万5,980円に対し、頭金ありの場合は3,096万5,340円となります。この差は約344万円もあります。返済期間を通じて蓄積されるため、この差は大きなメリットになるでしょう。
2.住宅ローンの審査に通りやすい
金融機関は返済能力を見極めるために、借主の収入や貯蓄状況を評価します。頭金を用意できるということは、「貯蓄ができる余裕がある」という印象を与えることができます。
そのため、住宅ローンの審査において通過しやすくなることがあります。
特に年収が低い方は、少額でも頭金を用意することで金融機関からの印象が向上する可能性が高いでしょう。住宅ローンの審査をする際、頭金がマイナスに働くことはまずないので、審査に通るか不安な方は用意して損はないでしょう。
また、頭金を用意することで、住宅ローンの審査に通りやすくなるだけでなく、全額を住宅ローンで賄うことのできない高額な物件も購入できる可能性もあります。
3.返済期間を短縮できる
頭金を用意することで、借入金額が減少し、その結果、返済期間を短くすることができます。返済期間が短ければ、総返済額が削減されるだけでなく、ローンの完済も早まります。
頭金を500万円用意した場合と頭金なしで住宅ローンを組んだ場合、月々の支払金額を同じに設定すれば頭金を入れた前者の方が早く返済が完了します。
[4] 頭金ありで住宅ローンを組デメリット
次に、頭金ありで住宅ローンを組むデメリットを解説します。
1.頭金が貯まる間に時間がかかる
すでに貯蓄がある場合は問題ないですが、頭金のために貯蓄を始めるとなるとそれなりの時間がかかります。
頭金が貯まるまでに金利が上がるかもしれないですし、自分自身の年齢も重ねていきます。先に説明しましたが、多くの金融機関は、完済時の年齢を80歳としているため、45歳を過ぎると住宅ローンの審査に通らないことがあります。
注意したいのは、完済時の年齢と、団体信用生命保険(団信)の加入です。住宅ローンを利用する場合、(フラット35を除いて)団信に加入することが必須条件となります。団信は健康状態に基づいて加入が許可されるため、健康でなければ加入することはできません。このため、頭金を長い期間かけてたくさん貯めても、団信に加入できない場合は住宅ローンを組むことができません。
それなら、若いうちに住宅ローンを組んで返済をスタートさせた方が得策という場合もあります。
2.賃貸の場合、支払う家賃がもったいない
現在賃貸住宅にお住まいの方は、頭金を貯める間も家賃の支払いが続きます。
住宅ローンとは異なり、家賃を数年間支払ったとしても何も所有権を得ることはできません。このため、頭金を貯めている間に支払う家賃が「無駄」と捉えられることもあります。
[5] 頭金なしで住宅ローンを組むメリット
続いて、頭金なしで住宅ローンを組むメリットを解説します。
1.すぐに家を購入できる
頭金を用意する必要がないため、家をすぐに購入することができます。
頭金の準備には時間がかかることがありますが、頭金なしの場合はその手間を省くことができます。急いで新しい住まいが必要な場合や、物件が希少な状況下である場合には、頭金なしの選択が有効です。
2.自己資金を手元に残せる
頭金を用意せずに住宅ローンを組むメリットとして、自己資金を手元に残すことができるという点が挙げられます。
自己資金を手元に残せることで、予期せぬ出費や家の修繕費用、将来の不測の事態に対応できる一定の資金が残ります。
3.住宅ローン控除を最大限活用できる
住宅ローン控除は、年末時点でのローン残高の0.7%が所得税から控除される制度です。そのため、フルローンの場合は住宅ローン控除の恩恵を最大限に受けることができます。
頭金ありで住宅ローンを組むと年末時点でのローンの残高が減少し、控除額も減少してしまうため、一部の人々は意図的に頭金を支払わずにフルローンを組むこともあります。
[6] 頭金なしで住宅ローンを組むデメリット
次に、頭金なしで住宅ローンを組むデメリットを解説します。
1.借入額が多くなる
頭金を用意せずに住宅ローンを組むと、全額をローンで賄う必要がありますので、借入額が増えます。これにより、総返済額も増加し、返済期間が長くなる可能性もあります。
さらに、頭金なしの場合、返済負担率が高くなることも考慮しなければなりません。返済負担率とは、年収に対する年間返済額の割合を指し、「返済比率=年間返済額÷額面年収×100」という式で計算されます。
一般的に、返済負担率は年収の35%を超えると家計を圧迫する可能性が高いため、年収の20%が目安と言われています。年収500万円を例に挙げると、年間返済額が100万円(毎月約83,000円)であれば、返済負担率が適切な範囲内に収まります。
住宅ローンを頭金なしで組むと、返済負担率が高くなってしまう可能性があります。そうなると、返済が負担となり、家計を圧迫することが懸念されます。
2.金利が高くなる可能性がある
一部の金融機関では、頭金の金額が少ない場合、最優遇金利(最も低い金利)の適用が制限されることがあります。
たとえば、フラット35という住宅ローンでは、購入価格に対して借入額が9割を超えると金利が高くなってしまいます。具体的に2023年7月時点でのフラット35の金利を見てみましょう。
【フラット35】取扱金融機関が提供する金利の範囲と最も多い金利
借入期間:21年以上35年以下
融資率 | 金利の範囲 | 最も多い金利 |
頭金あり(融資率9割以下) | 年1.730%~年3.020% | 年1.730% |
頭金なし(融資率9割超) | 年1.870%~年3.160% | 年1.870% |
出典:フラット35 金利情報
フラット35は他の金融機関よりも審査に通りやすく、フルローンで組む方も多いですが、変動金利でいうと1%を切る超低金利時代において、1%超の金利は家計に響くはず。
現在は低金利の時代ではありますが、将来的に金利が上昇した場合、優遇金利が適用されないと不利になる可能性があります。フラット35を利用する場合は、頭金を1割以上用意しておくことをおすすめします。
3.将来的に売却した場合、負債が残る可能性がある
住宅ローンを組む際には、その不動産に対して抵当権が設定されます。将来的に不動産を売却する場合、住宅ローンの残債を一括返済しなければ、金融機関は抵当権を解除してくれません。
もし売却時に残債を一括返済できる状態であれば(アンダーローン)、売却金で残債を完済することができます。しかし、逆に売却金額が住宅ローンの残債を下回ってしまう場合(オーバーローン)は、不動産を売却してもまだローンが残る状態となります。その場合、残債を一括返済するために、足りない金額を自己で用意しなければなりません。
もし売却時に住宅ローンの残債を上回る価格で不動産を売却できれば、利益を得ることができます。しかし、頭金なしで借入額が多い場合、オーバーローンのリスクが高まり、負債が残る可能性が高くなります。
頭金なしで住宅ローンを組むことは可能ですし、一部の金融機関では、頭金なしのフルローンも提供されています。ただし、頭金を支払わない場合、借入額が増えるため、返済期間や利息負担が大きくなる可能性があります。
だからといって、何年もかけて頭金を貯めることが得策というわけでもありません。年齢やタイミングによっては頭金なしで住宅ローンを組んだ方がよい場合もあります。
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