頭金なしで家を買うメリットデメリット
インターネットで頭金について検索をすると、「頭金なしで住宅ローンを組むのは危険」「頭金は必要ない」どちらの意見も見かけるのでどれを信じていいのか分からなくなりますよね。頭金なしで家を買うメリットデメリットはどんなものがあるのか、考えてみましょう。
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【目次】
2.優遇金利が適用される
2.賃貸の場合、支払う家賃がもったいない
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1. 「頭金」と「自己資金」の違い
まずは頭金と自己資金の違いをおさえておきましょう。このふたつは似ているようで性質は全く異なります。
頭金は、「購入物件価格の一部を最初に支払うお金」のことです。自己資金についてはいろいろ定義があるかと思いますが、一般的には「住宅購入時に現金で必要な諸費用を払うためのお金」が自己資金となります。
費用 | 価格の目安 |
仲介手数料(中古の場合) | 物件価格の3%+6万+消費税 |
印紙代 | 契約の金額によって変わります。 |
売買契約時の手付金 | 物件価格の5~10%(100万円程度かかることが多い) |
登記費用 | 20万円が相場。 |
ローン保証料 | 借入金額の2~3% |
金融機関融資手数料 | 物件価格の5%前後(3~5万円程) |
火災保険料 | 10万円~30万円(10年に1回更新) |
固定資産税 | 所有権の移転日から年末までの固定資産税の日割分を売り主に支払う。 |
引っ越し費用 | 15~20万円前後 |
家具購入費用 | 80~150万円程度 |
手付金以外は住宅ローンに組み込むことができますが、手付金は現金で必要です。手付金が用意できないと売買契約を締結できません。手付金が100万円、引っ越し費用が20万円かかるとして、ざっくり見積もって120万円は現金で用意しておく必要があります。
ただし、絶対に避けていただきたいのは貯金をすべて諸費用に充ててしまうこと。手付金を払ったら貯金がなくなってしまうのは絶対にNGです。家を購入した後、生活ができません。貯金の中から教育費や車検代など「絶対に手元に残すべきお金」を引き、残ったお金を自己資金に充てるようにしましょう。
住宅の種類 | 物件価格 | 頭金 |
注文住宅 | 3,572万円 | 596.6万円 |
土地付注文住宅 | 4,455万円 | 412.3万円 |
新築建売住宅 | 3,605万円 | 270.0万円 |
中古一戸建て | 2,614万円 | 214.9万円 |
新築マンション | 4,528万円 | 785.9万円 |
中古マンション | 3,026万円 | 418.9万円 |
新築マンションの頭金の平均額が高い理由は、物件価格が高騰していることも原因の一つですが、管理費や修繕積立金などの月々の支出があるので一戸建てよりも頭金を多く支払う方が多いのかもしれません。
3.頭金なしでも家は買える?
冒頭でも述べましたが、頭金なしでも家は買えます。
昔の銀行は物件価格の7~8割までしか融資してくれなかったため、残りの2~3割は頭金として用意するのが常識でした。しかし、今はそんな時代ではありません。頭金なしで住宅ローンを組むことは珍しいことではないのです。
ただし、頭金を用意しないと借入金額は減らすことができません。そうなると注意したいのが返済負担率です。返済負担率とは、年収に占める年間返済額の割合のことで、「返済比率=年間返済額÷額面年収×100」で計算できます。
住宅ローンの年間返済額は、年収の35%を超えると生活が苦しくなる可能性が高いため、年収の20%程度に抑えておくのが理想です。年収500万円なら、年間返済額は100万円(毎月83,000円程度)になる計算です。
頭金なしでも家は買えますが、返済負担率がギリギリであれば話は変わってきます。頭金を用意した方が借入金額を少なくできるので返済が楽になりますし、返済負担率が下がれば住宅ローンの審査も通りやすくなるでしょう。
4.頭金を支払うメリット
次に、頭金を用意するメリットを説明します。
1.住宅ローンの総返済額や月々の返済額が減る
頭金を用意すれば借入金額が少なくなるので、総返済額や月々の返済額が減らすことができます。
頭金を300万円用意した場合となしの場合、どのくらい負担が減るのかシミュレーションをしてみましょう。
【設定条件】
物件価格:3,000万円
金利:0.8%
返済期間:35年
頭金なし | 頭金あり(300万円) | |
月々の返済額 | 8万1,919円 | 7万3,727円 |
年間返済額 | 98万3,028円 | 88万4,724円 |
総返済額 | 3,440万5,980円 | 3,096万5,340円 |
金利の支払金額 | 440万5,980円 | 96万5,340円 |
月々の返済額は、頭金なしの場合は8万1,919円、頭金ありの場合は7万3,727円。8,192円の差があります。微々たる数字に見えますが、総返済額の差はさらに大きくなります。
頭金なしの場合の総返済額は3,440万5,980円、頭金あり場合は3,096万5,340円です。頭金を用意することで総返済額が約344万も差が出ます。長い目でみるとこれは大きい差ではないでしょうか。
2.優遇金利が適用される
金融機関によっては、頭金の金額が少ない場合、最優遇金利(最も低い金利)が適用されないことがあります。
たとえばフラット35の場合、購入価格に対して住宅ローンの借入額が9割を超えてしまうと、金利が高く設定されてしまいます。
フラット35の金利(2022年12月時点)
頭金あり(融資率9割以下)…1.650%
頭金なし(融資率9割超)…1.910%
今は低金利時代ではありますが、今後金利が上がった時に優遇金利が適用されないと困りますよね。頭金を用意すると、頭金なしで住宅ローンを組むよりも金利は優遇されること多いので、少しでも低金利で借りたい方は頭金を用意した方がよいでしょう。
3.住宅ローンの審査に通りやすい
金融機関は住宅ローンの審査において、借主の返済能力をチェックしています。
頭金を用意できるということは、「貯蓄できるぐらい余裕がある」「お金の管理ができている」と判断できるので、住宅ローンの審査に通りやすくなることがあります。また、頭金を用意すれば借入金額を減らすことができるので、返済負担率も下がります。
年収が低い方は少額でも頭金を用意すれば金融機関からの印象もよくなる可能性が高いでしょう。
4.売却した場合、負債が残るリスクを減らせる
頭金を用意すれば、返済途中で売却をした場合、負債だけが残るのを防ぐことができます。
なぜ?と思った方に簡単に説明します。
住宅ローンを組む時は、該当の不動産に対して抵当権が設定されます。売却する際、住宅ローンの残債を一括返済できなければ金融機関は抵当権を解除してくれません。
アンダーローン(売却金額が住宅ローンの残債よりも多い状態)であれば、売却したお金で一括返済できますが、オーバーローン(売却金額が住宅ローンの残債を下回っている状態)の場合は、不動産を売却してもローンが残ってしまいます。その場合、一括返済するために不足しているお金を自分で用意しなければなりません。
売却をして住宅ローンの借入残高よりも高い価格で売却できれば黒字になりますが、頭金なしで住宅ローンを組んで借入額が多い場合は、負債だけが残ってしまう可能性が高いのです。
5.頭金を用意する最大のデメリットは『貯まるまで時間がかかる』
ここまで頭金を用意するメリットを説明してきましたが、デメリットもあります。それはタイトルとおり、頭金が貯まるまで時間がかかること。
1.頭金が貯まる間に金利が上がる可能性がある
今は超低金利時代といわれるほど、どこの金融機関も住宅ローンの金利を下げていますが、おそらくこれが下げ止まりです。
今後、金利は下がるどころか、頭金を貯めている間に金利が上がる可能性や優遇金利が無くなってしまう可能性は大いにあります。
優遇金利がなくなるとどうなるのかというと、同じ借入額でも、月々の支払いが数万円高くなります。「何年もかけて貯めていた頭金がムダだった」と感じてしまうほど負担が上がってしまうのです。
2.賃貸の場合、支払う家賃がもったいない
今現在、賃貸に住まいの方は頭金を貯めている期間も家賃を支払わなければなりません。住宅ローンと違って、家賃を何年かけて払っても何も残りません。
そんなことは承知で家賃を払っている、という方も多いかと思います。しかし、長期間頭金を貯めるとなると、結果的には支払い金額は同じくらいになるかもしれません。それなら、年齢が若い働き盛りのうちに住宅ローンを組んで返済をスタートさせた方が得策という考え方もあります。
3.頭金を貯めている間に年齢を重ねる
45歳を過ぎると住宅ローンを組むことが難しくなります。注意したいのは、完済時の年齢(80歳までに完済できるのか)と、団体信用生命保険(団信)の加入です。
多くの金融機関は、完済時の年齢を80歳としているため、45歳を過ぎると住宅ローンの審査に通らないことがあります。住宅ローン頭金を貯めている間に年齢を重ね、住宅ローンの返済期間が短くなってしまいます。返済期間が短くなれば月々の返済額も高くなります。頭金を用意すれば借入金額を減らせるので月々の返済額は高くならないですが、健康上の不安も出てきます。
住宅ローンを利用するには、団信に加入することが(フラット35を除いて)必須条件となっています。団信は健康でなければ加入できません。団信に加入できなければ、いくら頭金がたくさんあっても住宅ローンを組めないのです。