2025年4月から太陽光パネル設置が義務化!その理由は?設置するメリットデメリットは何?
東京都は2025年4月から新築住宅に太陽光パネルの設置を義務化する方針です。義務化されて補助金や税制優遇が拡充されれば元々太陽光パネルを設置したかった方にはメリットが多そうですが、そうではない場合はコストもかかるので反対派も多いかもしれませんね。
ただ、中には正しい情報を理解せずに反対されている方もSNSなどでお見かけします。太陽光パネルはコストこそかかりますが、メリットも多いので内容を理解してから検討する余地はあると思います。
前置きが長くなりましたが、今回の記事では太陽光パネルの義務化について詳しく解説したいと思います。
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【目次】
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1. 東京都が25年4月から太陽光パネル義務化へ
東京都の小池百合子知事は9月9日の記者会見で「屋根が発電するのが当たり前という機運を醸成したい」と述べ、東京都での太陽光パネル義務化する意向を示しました。
6月24日まで実施されていた改正案の意見公募では賛否両論で、ハウスメーカーの反応も様々です。ハウスメーカーや建築主の負担増を懸念する声も多く、大和ハウス工業は「建築主への支援策や太陽光発電に関する資材の安定供給が不可欠」とコメントしています。
太陽光パネルの設置義務は住宅購入者ではなくハウスメーカーに課されるものの、設置費用や維持費は購入者が負担することになるため「ただでさえ家の価格が高騰しているのに、さらにコストがかかって家を買えなくなる!」という否定的な意見も集まっています。
そんな中、小池知事は「制度が円滑にスタートするには都民、事業者の理解と協力が不可欠」として、ハウスメーカーや住宅購入者への補助を拡充する考えもあると述べていますが、現状では新築住宅の設置率は低く、義務化されたらどこまで普及するのか注目されています。
2.太陽光パネルが義務化になる理由
東京都は2030年までに温室効果ガスの排出量を2000年比で50%削減する「2030年カーボンハーフ」目指していて、以下の内容を国際的に公約しています。
・2030年度の温室効果ガスの排出量を、2000年比で50%削減する
・2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする
しかし、現状はこの目標には程遠いようです。東京都の二酸化炭素(CO2)排出量の7割超が建物でのエネルギー消費に起因しており、業務部門や運輸部門などの事業者はエネルギー消費が減っているのに対し、家庭部門だけが増加しています。普及を進めるには事業者だけが努力するだけでは不十分で、小池知事も5月24日に行われた会見で「家庭の省エネこそ必要」と言及しています。
こうしたことを踏まえて導入されるのが太陽光パネルの義務化です。家庭内での照明や家電で使用する化石燃料由来の電気は、太陽光などの再生可能エネルギー由来の電気を活用すれば二酸化炭素の排出量を減らすことができます。
日本は先進国の中でもエネルギー自給率がかなり低く、再生可能エネルギーの普及が急がれています。設置や維持費がかかるので反対派が多いのも分かりますが、このままでは地球温暖化が進むばかりです。太陽光パネル義務化がきっかけで温暖化にストップをかけられるとよいですね。
3.設置する義務を負うのは誰?設置する必要がある住宅は新築のみ?
太陽光パネル設置の義務化に関しての誤解で多いのは、“設置する義務を負う対象”です。
太陽光パネルの設置義務付けの対象は住宅購入者ではなく、東京都で年間合計2万平米以上の建物を供給するハウスメーカーなどの事業者が対象となります。現時点で約50の大手ハウスメーカーが対象になることが見込まれており、年間に販売される新築物件の約半数となる2万4,000戸ほどが該当する見通しです。
ただ、これから新築住宅を建てる(購入する)誰もが必ず太陽光パネルを設置しなければならないわけではありません。
日照条件や住宅購入者の意向などで設置できない(しない)ケースを想定し、事業者単位で、設置義務量を年間の総量で設定されます。簡単に言えばノルマですね。未達成の場合は指導が入り、それでも改善されなければ社名を公表するペナルティも課せられます。各事業者は、そのノルマを達成すべく、どの住宅に太陽光パネルを設置できるかを判断しますが、設置に適さない住宅(算出対象屋根面積 20 平米未満など)については除外可能とされています。
建物数(棟) | パネル設置数 | パネル設置率 |
2,250,915 | 95,486 | 4.24% |
住宅:1,768,375 | 82,965 | 4.69% |
住宅以外:482,540 | 12,521 | 2.59% |
参考:東京都内における太陽光発電設備の設置状況(2021年7月26日東京都環境審議会資料より)
1.太陽光パネルのメリット
太陽光パネルのメリットは以下のとおりです。
【メリット1】電気代の節約になる
東京都の試算によると、毎月の電気代が1万円と仮定した場合、出力4 kWの太陽光パネルが発電した電気を使用すると月7,700円の節約になります。設置費用は92万円かかりますが、補助金40万円を使えば6年間で初期費用をペイできます。しかも太陽光発電は燃料費高騰の影響を受けません。
【メリット2】売電収入を得られる
太陽光パネルで発電した電気を電力会社に売ることができます。ただし、売電開始当初は、1kWhあたり42円でしたが、2021年の売電価格は1kWhあたり19円、2022年は17円まで値下がりしています。さらに2025年度までには11円まで値下がる見込みです。電気代は高騰しているのに電気の買取価格は下がっている状況ですね。そのため、電気を売るよりも自宅で使用することを目的として太陽光パネルを設置する方が多いようです。
【メリット3】災害時、停電しても電気を使える
電力会社による電気は、災害時に停電したら電気を使うことができません。一方、太陽光パネルで発電した電気は災害で停電になった場合でも(太陽電池モジュールや分電盤に破損がなければ)発電することができます。
【メリット4】オール電化との相性がよい
オール電化向けの電気料金プランは季節や使用する時間帯によって電気料金が変動することが多く、冷房や暖房を頻繫に使う季節は赤字…ということもあります。太陽光パネルで発電した電気はオール電化との相性がよく、蓄電池と組み合わせれば『光熱費0円生活』も夢ではありません。新居は絶対にオール電化がいいという方は太陽光パネルの設置は向いているでしょう。
2.太陽光パネルのデメリット
次に、太陽光パネルのデメリットを解説します。
【デメリット1】設置や維持にお金がかかる
住宅用の太陽光発電システムの設置費用の相場は、84万円(3kW)~140万円(5kW)と言われています。あくまでも相場なので、メーカーや住宅の条件によって異なりますが、屋根面積に応じた太陽光発電の設置費用の相場は以下を参考にしてください。
3kW:84万円
4kW:112万円
5kW:140万円
6kW:168万円
7kW:196万円
8kW:224万円
9kW:252万円
10kW:280万円
太陽光パネルの容量を上げるとパネルの枚数は増え、屋根の向きや形状によっては特殊な設置になるので、その分工事費用もかかります。たとえば、南側の屋根に加えて東側の屋根にもソーラーパネルを設置する場合や瓦屋根などの特殊なケースは工事費用が高くなることが多いので要注意です。
また、太陽光パネルには、パワーコンディショナー(ソーラーパネルで作った電気を家庭内で使用できる電気に変換するための機器)の設置も必須となります。パワーコンディショナーの価格相場は1kW4.2万円です。たとえば3~5kWの太陽光パネルなら、パワーコンディショナーは12.6万~21万円かかる計算になります。
あとは、忘れがちなのがメンテナンス費です。太陽光点検の費用は業者にもよりますが、1回あたり平均2.8万円で、3~4年に一度は点検することが理想です。
【デメリット2】設置に向かない家もある
太陽光パネルは日当たりがよい屋根に設置しなければ意味がありません。また、設置する方角次第ではパネルの反射光によって近所迷惑となることもあるので、日当たりが良くても設置に不向きなケースもあります。
【デメリット3】売電の利益によっては確定申告をしなければならない
売電の利益によっては確定申告が必要になります。確定申告が必要なラインは年間20万円超です。確定申告をしなかった場合は、無申告加算税と延滞税を追加で請求されます。税務署から「売電の利益が出ているので確定申告をしてください」という事前連絡は来ないので、普段から自分で売電の利益を把握しておけなければなりません。電気は売らずに家庭で使用するだけなら心配要らないですが、売電して利益を得ようとお考えの方はご注意ください。
6. 太陽光パネルを設置すると補助金が出る?
太陽光パネル設置が必須の「ZEH住宅」を対象とした補助金があります。
ZEH住宅とは、低炭素社会や人々の快適な暮らしの実現を目指す、政府のエネルギー基本計画にも目標数値が掲げられている地球に優しい住宅のことです。太陽光パネルが義務化されていない2022年11月時点でも条件を満たしていれば補助金をもらうことができます。リフォームとして太陽光パネルを設置した場合、所得税の控除制度の対象となる場合もあります。
それに加えて、太陽光パネルの補助金を実施している自治体も一部あります。たとえば、東京都の「東京ゼロエミ住宅導入促進事業」では、新築戸建なら最大50万円+太陽光発電設備10万円/kW(上限100万円)補助されます。
今回は東京都の太陽光パネル義務化についての内容なので詳細は省きますが、お住まいの自治体で補助金制度がないか、確認してみてください。