【2022年7月最新】大手銀5行が7月の住宅ローン金利を引き上げ!変動金利は動きなし
ここ数年、「歴史歴な超低金利時代」と言われていましたが、ついに大手銀5行が7月の住宅ローン金利を引き上げました。
「日銀が金融緩和の維持を示しているはずなのになぜ!?」と困惑している方も多いことでしょう。本稿では、日銀が金融緩和を維持する理由や大手銀5行が金利を引き上げた理由などを解説したいと思います。
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【目次】
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1. 大手銀5行が7月の住宅ローン金利を引き上げ
2010年以降、変動金利に変化はありませんが、固定金利は変動しており、2022年2月以降は長期金利上昇の影響により、固定期間選択型(3年・10年)の金利が上がっています。2016年のマイナス金利政策導入以来、6年ぶりの高水準となります。
出典:住宅金融支援機構『民間金融機関の住宅ローン金利推移(変動金利等)』
今回の金利の上げ幅は、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、りそな銀行が0.05%、みずほ銀行が0.15%、三井住友信託銀行が0.20%。
固定10年の最優遇金利は、三井住友信託銀行が1.00%、三菱UFJ銀行と三井住友銀行1.04%、りそな銀行が1.05%、みずほ銀行が1.25%
変動金利は5行とも変動金利は動きなしでした。フラット35(選択できる金利は全期間固定のみ)も7月の適用金利は6月より0.02%上昇しています。
2.日銀の黒田総裁は「金利を引き上げるつもりは全くない」
日銀の黒田総裁は7月21日に行われた会見で、大規模な金融緩和が必要なのかという質問に対し「今の時点で金利を上げたときのインパクトは恐らくモデルで計算したものよりもかなり大きなものになる。私どもとしては金利を引き上げるつもりは全くない。長期金利のプラスマイナス0.25%のレンジを変更するつもりも全くない。粘り強く金融緩和を続ける」と述べました。
さらに、金融政策の方向性については「2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、長短金利操作付き量的質的金融緩和を継続する。当面、感染症の影響を注視し、企業の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる」と、今後も大規模な金融緩和策を続けていく考えを示しました。
3.日銀が金融緩和を維持する理由
アメリカ連邦公開市場委員会は、6月15日の会合で政策金利の0.75%金利の引上げを決定しました。スイス中央銀行も約15年ぶりの引き上げ、さらに7月にはヨーロッパ中央銀行が引き上げを行うことになりました。
世界の中央銀行が一斉に金利の引き上げをしている中、日本だけが金融緩和策を維持しています。その理由は何なのでしょうか。
下記は、日銀のホームページ「教えて!にちぎん > 物価の安定と金融政策」から抜粋した金融緩和策を維持する理由です。
“金利が下がると、金融機関は、低い金利で資金を調達できるので、企業や個人への貸出においても、金利を引き下げることができるようになります。また、金融市場は互いに連動していますから、金融機関の貸出金利だけでなく、企業が社債発行などの形で市場から直接資金調達をする際の金利も低下します。
そうすると、企業は、運転資金(従業員への給料の支払いや仕入れなどに必要なお金)や設備資金(工場や店舗建設など設備投資に必要なお金)を調達し易くなります。また、個人も、例えば住宅の購入のための資金を借り易くなります。
こうして、経済活動がより活発となり、それが景気を上向かせる方向に作用します。また、これに伴って、物価に押し上げ圧力が働きます。このように、景気を上向かせるために行われる金融政策は、金融緩和政策と呼ばれます。
一方、金利が上昇すると、金融機関は、以前より高い金利で資金調達しなければならず、企業や個人への貸出においても、金利を引き上げるようになります。
そうすると、企業や個人は、資金を借りにくくなり、経済活動が抑制されて、景気の過熱が抑えられることになります。また、これに伴って、物価に押し下げ圧力が働くことになります。このように、景気の過熱を抑えるために行われる金融政策は、金融引締め政策と呼ばれます。”
…とここまでが日銀が公表している金融緩和政策を維持する理由です。しかし、世界の中央銀行と日銀の違いが際立っているため、ネットニュースやSNSなどでは「金融緩和政策の見直しが必要なのでは?」という意見も多くあります。
たとえば、アメリカでは6月の消費者物価指数が前年同月比でプラス9.1%と、およそ40年半ぶりの記録的な水準となっています。金利の引き上げなどによって金融を引き締め、物価上昇を防ぐねらいがあります。一方、日本の物価上昇率は2%程度。日銀は「いま金融引き締めに転じると景気を冷え込ませかねず、緩和を続ける必要がある」と述べています。
日銀は2022年度の物価上昇の見通しを2.3%に引き上げました。政府日銀が目標にしてきた2%に達することになりますが、今、金融引き締めをすると、個人向けの住宅ローンや自動車ローンなどの金利が上昇するため、景気が悪化しかねないという懸念があるのでしょう。金融緩和策は維持されることになるようです。
4.大手銀5行はなぜ金利を引き上げた?
日銀が金融緩和策を維持する理由については前項で解説しましたが、大手銀5行はなぜ金利を引き上げたのでしょうか。
答えは簡単です。日銀が金融緩和を示したとしても、住宅ローンの金利を決めるのは銀行だからです。金利の決定権はあくまでも銀行にあります。また、今回の金利の引き上げは、一斉に金利を上げれば、他行に借り換えられないという狙いもあるでしょう。
全期間固定型については、金利に変動がない金融機関もありますが、2022年7月は多くの金融機関が金利を引き上げています。住宅ローンの金利は、海外の金融情勢などの影響を受けて変動します。現状では、金融緩和策のおかげで低金利が続く状況ではありますが、状況によっては金利が上がる可能性はゼロではありません。住宅ローンを組むのなら低金利の今がチャンスでしょう。
5.黒田総裁の任期終了後、住宅ローンの金利が上がる?
2023年4月以降に金利が上がるという噂が浮上しています。というのも、低金利時代を維持していた日銀の黒田総裁の任期が2023年4月までとなっているからです。次期総裁となる人が政策転換し、金利が上がる可能性は十分にあります。
繰り返しにはなりますが、住宅ローンの金利を決めるのは銀行です。日銀は金融緩和策を誘導しているだけです。本質的には、銀行は営利企業であり、その営利企業が金利の決定権があるということを忘れてはなりません。黒田総裁の任期の前に金利の動きがある可能性もあるのです。
6.住宅ローンの種類と選び方
最後に、住宅ローンの種類と選び方について理解しておきましょう。
・変動金利型
金利が半年ごとに変動し、5年ごとに返済額が見直されます。5年間は元金と利息の割合を調整して返済額が変わらないようになっていますが、金利が上がると返済額も高くなります。
メリット | ・固定金利よりも金利が低い
・金利が上昇しなければ固定金利よりも返済額は少ない |
デメリット | ・金利上昇のリスクがある
・金利が上昇すれば、返済額が高くなる |
向いている人 | ・金利の動向をこまめに確認できる人
・返済期間が短い、借入金額が少ない人 ・金利が上昇して返済額が増えても経済的に余裕がある人 |
・全期間固定金利型
全期間固定金利型は、借入期間中は金利が変わりません。返済額は、金利がずっと変わらないので完済まで一定です。
メリット | ・返済額が変わらないので将来のライフプランがたてやすい
・金利が変わらない安心感がある |
デメリット | ・変動金利よりも金利が高い
・今後、金利が低くなれば変動金利よりも返済額が多くなる |
向いている人 | ・安定した資金計画を立てたい人
・今後、教育費などで支出が多い人 |
・固定期間選択型
適用される金利の期間が決まっており、期間終了後に適用金利を選択します。固定期間は1~30年の間で、金融機関ごとに設定が異なります。固定期間が終了すると、その時点での金利に見直されます。その際は、変動金利型か固定期間選択型かを選択できます。
メリット | ・固定期間中は毎月返済額が増えない安心感がある
・固定期間経過後に金利が下がっていれば、低い金利を享受できる |
デメリット | ・固定する期間が長くなればなるほど、金利は高くなる
・固定期間経過後に金利が上がっていた場合、返済額が増える |
向いている人 | ・教育費がかかる一定時期だけ返済額を安定させたい人
・車のローンなど、返済が重なる時期だけ返済額を抑えたい人 |