「住宅ローンは年収の5倍まで」って本当?
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【目次】
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今、家を買おうとお考えでしたら「住宅ローンは年収5倍まで」という話は信じてはいけません。
首都圏に建つ物件購入をご検討の方は、年収の6~7倍程度は見込んでおいた方が良いでしょう。ただ、見込むと言っても、年収の6倍以上です。組み方によっては生活が苦しくなる可能性が高いので、「ちょっと予算オーバーだけど、みんなこのぐらい借りているみたいだから大丈夫でしょ!」と安易に住宅ローンを組むのは絶対にNGです。
そこで今回の記事は「住宅ローンは年収5倍まで」論が生まれた理由や、現代で住宅ローンを組むなら年収の何倍までなら良いのか、生活が苦しくならない住宅予算の立て方について詳しく分かりやすく解説します。
[1] 「住宅ローンは年収5倍まで」論が生まれた理由
まずは、なぜ「住宅ローンは年収5倍まで」論が生まれたのか、解説します。
1.きっかけは今から30年前の「生活大国5か年計画」から
「住宅ローンは年収5倍まで」論が始まったきっかけは、今から30年前の1992年まで遡ります。
当時、政府が「生活大国5か年計画」を打ち出しました。その計画の中に「年収の5倍程度で良質な住宅を買えるようにする」ことを盛り込んだことをきっかけに「住宅ローンは年収5倍まで」論が広まった様です。
2.昔は物件価格の8割までしか住宅ローンを組めなかった
昔(昭和時代)の金融機関は、物件価格の8割までしか融資されなかったため、2割の頭金がないと住宅ローンを組めませんでした。
それに加えて、当時の住宅ローンの金利は5~8%という高金利。住宅ローンの審査も現代よりも厳しいものでした。金利1%前後で、頭金なしでフルローンを組める現代では信じがたいことですね。住宅ローンを組むハードルがグンと下がった現代において、なぜいまだに「住宅ローンを組むなら年収の5倍まで」論が根強く残っているのか不思議なぐらいです。都市伝説といっても過言ではないでしょう。
[2]現代で住宅ローンを組むなら、年収の何倍までなら良いのか
「年収の5倍まで」論は、過去の話だと先述しました。それでは、現代で住宅ローンを組むなら、年収の何倍まで必要になるのでしょうか。住宅種別ごとにみていきましょう。(引用元:すべてフラット35利用者調査 2020年度集計表)
1.【注文住宅・土地付き注文住宅】年収の約7.3倍
注文住宅を購入する場合、建売住宅と新築マンションよりも借入金額が高くなりがちです。
具体的な数字をみてみると…
土地付き注文住宅購入者の世帯年収と年収倍率 |
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世帯年収 | 年収倍率 | |
全国 | 634.9万円 | 7.3倍 |
首都圏 | 710.3万円 | 7.7倍 |
近畿圏 | 631.8万円 | 7.5倍 |
東海圏 | 624.0万円 | 7.4倍 |
その他地域 | 599.4万円 | 6.2倍 |
注文住宅購入者の世帯年収と年収倍率 |
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世帯年収 | 年収倍率 | |
全国 | 594.2万円 | 6.7倍 |
首都圏 | 629.5万円 | 7.0倍 |
近畿圏 | 617.2万円 | 6.8倍 |
東海圏 | 601.7万円 | 6.4倍 |
その他地域 | 572.7万円 | 6.2倍 |
土地付き注文住宅の場合、全国区ではなんと7.3倍!首都圏では7.7倍という驚愕のデータが出ています。
2.【建売住宅】年収の約6.7倍
続いて人気の建売住宅です。
建売住宅購入者の世帯年収と年収倍率 |
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世帯年収 | 年収倍率 | |
全国 | 557.3万円 | 6.7倍 |
首都圏 | 598.4万円 | 7.0倍 |
近畿圏 | 548.0万円 | 6.8倍 |
東海圏 | 506.0万円 | 6.4倍 |
その他地域 | 499.1万円 | 6.2倍 |
建売住宅も全国区では6.7倍、首都圏では7.0倍というデータが出ています。その他の地域でも6.2~6.8倍と、7倍近い倍率になっていますね。
3.【新築マンション】年収の約7.1倍
最後に新築マンションです。
新築マンション購入者の世帯年収と年収倍率 |
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世帯年収 | 年収倍率 | |
全国 | 788.5万円 | 7.1倍 |
首都圏 | 801.5万円 | 7.5倍 |
近畿圏 | 780.7万円 | 7.0倍 |
東海圏 | 782.3万円 | 6.6倍 |
その他地域 | 769.9万円 | 6.2倍 |
首都圏では一戸建てを建てられる土地が少ないので、マンションが多いですね。それに加えて、近年のマンション人気も手伝って、年収倍率は全国では7.1倍にもなっています。
[3]生活が苦しくならない住宅予算の立て方
前項のデータ通り、首都圏に建つ物件購入をご検討の方は、年収の5倍どころか、6~7倍程度は見込んでおいた方が良いでしょう。それを踏まえて、生活が苦しくならない住宅ローンの組み方(住宅予算の立て方)について解説します。
1.年収だけで住宅ローンの借入金額を決めてはいけない
当コラムでは、幾度となく「住宅予算」について解説しています。
正直、筆者としては「住宅ローンは年収5倍まで」などという都市伝説よりも、「年収だけで住宅ローンの借入金額を決めてはいけない」「物件探しをする前に自分の住宅予算を調べること」、この2つを広めていきたいところです。この2つさえ守っていただければ、住宅ローンで失敗する確率はかなり低くなります。
そもそも、年収は同じでも、家族数、マイカーローンの有無、保険額、子どもの教育費、趣味や交際費、娯楽にかける費用など、挙げればキリがないぐらい家庭によって毎月の支出額は違うものなのです。貯金額だって家庭によって違います。それなのに、年収だけ見ていくらの物件を買えるのか、いくらまで住宅ローンを組めるのか判断するなんて…!本当に恐ろしいことです。
住宅予算の立て方を間違えると、旅行や外食などは一切なし!収入は住宅ローンを返すだけの人生になるばかりか、最悪の場合、住宅ローンの返済すらできなくなるかもしれません。そんな事態を避けるには、「年収だけで住宅ローンの借入金額を決めてはいけない」「物件探しをする前に自分の住宅予算を調べること」、この2つを守ることです。
住宅予算の立て方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
家を買ったら貯金ゼロ!?その「住宅予算」で本当に生活できますか?
2.上限額は「借入可能年数×年収の20%」まで
住宅ローンをいくら借りられるのか考えるとき、年収と同じぐらい気にして欲しいのが完済時の年齢です。
たとえば、40歳で住宅ローンを35年で組んだ場合、完済時は75歳です。65歳で定年したとして、残りの10年間、どうやって住宅ローンの返済をしていくかが課題となります。70歳が定年の企業も今後増えそうですが、55歳頃から給料が2割前後減っていく方がほとんど。定年を迎えるまで若い頃と同レベルの年収を確保することは難しいでしょうし、体力的な問題も出てきます。
そこで、40歳から65歳までの25年間を借入可能年数とし、「借入可能年数×年収の20%」が住宅ローンの上限額と考えることをおすすめします。現時点で高齢の場合は、借入期間が短くなるので月々の返済額は高くなってしまいますが、働き盛りの世代であれば、「借入可能年数×年収の20%」を超えないようにするのがベストです。
3.自己資金は使い切らない!残しておく!
家を買うときは様々な諸費用がかかります。いくら貯金がないと言っても、手付金100万円+引っ越し費用数十万円の自己資金は絶対に必要です。
ただし、頭金のために貯蓄をすべて使い果たしてしまうことはおすすめしません。万が一の事態に備えて、下記の費用は残しておいてください。
残しておくべき費用
- 入居費用…一般的な新築住宅の場合、必要最低限の家具購入費は50万円程度必要です。
- 万が一のときの貯蓄…怪我や病気、急な支出に備えるための貯蓄。生活費の3カ月~半年分を目安です。
- 将来のための貯蓄…教育費やマイカー購入資金、レジャー費、家具家電の買い換え費用、医療費など。
4.頭金はいくら必要?貯まるまで家を買うのは待つ?
「頭金は物件価格の2割必要」という意見もありますが、これも「年収の5倍」と同様に昔話です。
先に説明しましたが、昔の金融機関は物件価格の8割までしか融資してくれなかったので、残りの2割は頭金を用意しなければ住宅ローンを組めなかったのです。現代では頭金ゼロで住宅ローンを組む方も多いですし、頭金が貯まるまで何年も家を買うことを我慢する!という時代ではありません。(ただ、繰り返しますが、手付金100万円は売買契約時に必ず現金で必要です)
下記は、頭金の金額でどのくらい返済額に違いが出るのかまとめたものです。
年収400万円で頭金を用意した場合の返済
頭金 | なし | 100 | 200 | 300 | 400 | 500 |
借入限度額 | 2,506 | |||||
購入限度額 | 2,405 | 2,505 | 2,605 | 2,705 | 2,805 | 2,905 |
(単位:万円)35年ローン・金利2%
上記の表をみると、頭金なしと500万円用意した場合の差額は500万円。比べてみると大きい差のように感じますね。用意できるのならそれに越したことはありません。頭金を否定しているわけでもありません。
ただ、500万円を貯めるまでに何年かかるのでしょうか。親や祖父母から資金援助を受けた場合を除いて、自分で500万円貯めるとなると、そう簡単な話ではないですよね。
頭金を貯めている間もどんどん歳を取ります。歳を取るということは、住宅ローンの返済期間は短くなっていき、結局は頭金ゼロの場合と返済額はそんなに変わらない、ということもあります。
「頭金を貯めていたこの数年間はなんだったのか…」と虚しくなりそうですよね。
30歳からの5年間と40歳からの5年間を同等に考えてはいけません。頭金を多く用意することが必ずしも正解ではないのです。「頭金を貯めなきゃ」という呪縛からそろそろ抜けましょう。
[4] まとめ
現代では「住宅ローンは年収の6~7倍」は必要!慎重に住宅予算を組みましょう!
年収5倍未満で買える物件もありますが、首都圏で探している場合は選択肢がかなり少なくなると考えた方が良いでしょう。首都圏以外の地域でも、年収の5倍でおさまるケースは少ないかもしれません。そう、日本で家を買うなら「住宅ローンは年収の5倍」では済まないのです。
正直、5倍にしても7倍にしても、高額なのは事実ですし、慎重に住宅予算を組まないと家計が苦しくなる可能性が高いので、これから家を探そうとお考えの方は、まずは住宅予算を調べることから始めましょう!慎重な計画が必要です。
ミツバハウジングでは、お客様に合った住宅予算を計算します。そして、住宅予算内の希望に近い物件をご紹介します。お気軽にお問い合わせください。