住宅ローンは年収の何倍まで借りていいの?
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【目次】
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タイトルに惹かれてこの記事にたどり着いた方はおそらく、住宅ローンは年収の何倍まで借りられるのかを知りたいのではないでしょうか。
正直、「住宅ローンを組む時は年収の〇倍まで」といった話は、早く消滅してくれないかなと思います。「年収の〇倍まで」なんて、全くあてにならない目安です。「どういうこと?」と思った方は、ぜひ当記事をご一読ください。失敗しない住宅ローンの借入金額の決め方が分かります。
[1] 年収からみるマイホーム購入価格の目安
まずは、「みんながいくらの家を買っているのか」知りたくありませんか?年収からみるマイホーム購入価格の目安をみていきましょう。
1.全国平均はなんと年収の7倍以上!
令和2年度の住宅経済関連データ「首都圏の住宅価格の年収倍率の推移」では、首都圏の住宅価格と年収倍率が下記のように公表されています。
平成29年 | 平成30年 | 令和元年 | ||
年収(万円) |
818 | 802 | 809 | |
マンション | 価格(万円) | 5,908 | 5,871 | 5,980 |
年収倍率 | 7.2倍 | 7.3倍 | 7.4倍 | |
床面積(㎡) | 68.8 | 67.6 | 68.0 | |
建売住宅 | 価格(万円) | 4,833 | 5,168 | 5,130 |
年収倍率 | 5.9倍 | 6.4倍 | 6.4倍 | |
敷地面積(㎡) | 126.0 | 124.1 | 124.0 | |
床面積(㎡) | 99.6 | 99.2 | 98.6 |
引用元:国土交通省「3(1)首都圏の住宅価格の年収倍率の推移」
近年のマンションブームもあるのか、平成29年~令和元年にマンションを購入した人の年収倍率はなんと7倍以上!建売住宅の場合は6.4倍とマンションよりも年収倍率が低いですが、ひと昔前にマイホームを購入する時の年収倍率は5倍が目安といわれていましたが、今は軽く6倍を超えています。
つまり、首都圏でマイホームを購入したい場合は年収の6倍以上は見込んでいた方が良いということでしょうか。「いやいや、そんなの無理なんですけど!」と思いません?いくら首都圏は家の価格が高いとはいえ、みなさん本当に年収の7倍以上の倍率でマイホームを購入しているのかちょっと疑いの目で見てしまいますよね…。
2.年収倍率には頭金も含まれている!?
前項でご紹介した「首都圏の住宅価格の年収倍率の推移」などの年収倍率は、あくまでも「住宅購入金額」に基づくデータなので、「住宅ローンの借入額」にリンクする数字ではありません。もし「住宅購入金額」に頭金が含まれていた場合は、「住宅ローンの借入額」はさらに低くなります。
国土交通省「令和元年度住宅市場動向調査報告書」によると、分譲戸建住宅の購入資金は、平均で 3,851 万円。このうち自己資金は 1,021 万円で、自己資金比率は 26.5%。分譲マンションの購入資金は、平均で 4,457 万円。このうち自己資本は 1,755万円、自己資本比率は 39.4%。というデータが出ています。
つまり、単純に年収倍率だけで「買える物件価格」を判断してしまうと、予算オーバーになってしまうので、インターネットでの年収倍率をそのままストレートに飲み込むのは危険です。年収が同じ人が2人いても、頭金をいくら用意できるのか、他に借入はないのか、など細かい条件によって住宅ローンの借入額は変わってしまいます。蓋を開けてみないことには正確な数字は分からないので、その点だけはご注意ください。
[2]限度額ギリギリまで住宅ローンを組むのはリスク大
ここからは少しシビアな話をします。もしかしたら住宅ローンを組むのが怖くなるかもしれませんが、何千万というお金を借りるのですから、そのぐらいでちょうど良いのです。限度額ギリギリまで借りて毎月赤字、生活が苦しい…という生活にならないためにも、以下の解説は必ずご一読ください。
1.「借入限度額=無理なく返済できる額」ではない
住宅ローンを組む時は、決して限度額ギリギリまで借りてはいけません。「借りられれば良い」「銀行が貸してくれたのなら問題ない」というものではないのです。
まず、「借入限度額=無理なく返済できる額」という考えは捨てましょう。返済額は年収の35%を超えると生活が苦しくなる可能性が高いため、年収の20%程度に抑えておくのがベストです。年収500万円の場合は、年間返済額は100万円(毎月83,000円程度)になります。
金融機関の審査金利では、年収の35%~40%程度で計算されることもありますが、これを「無理なく返済できる額」と受け取るのは危険です。年収500万円の人が年収の35%で住宅ローンを組んだ場合、毎月の返済額は14万5,000円です。想像してみてください。かなりきつくないでしょうか。
特にフラット35の場合は、実際に住宅ローンを組むときの金利で返済額を計算するので、民間の金融機関よりも借入金額を多くできます。そのため、ギリギリまで借りてしまう方が多いのですが、毎月赤字になる可能性が高いので安易に飛びつくのは危険です。
フラット35がダメだというわけではなく、どんなローンでも、自分がいくらまでの借入なら毎月無理なく返せる額なのかをしっかりと考えることが重要なのです。「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」を最優先してください。
2.借入限度額ギリギリで住宅ローンを組んだらどうなる?
「老後2000万円問題」という言葉を聞いたことはありますか?2019年に話題になったので、記憶に残っている方もいらっしゃるかと思います。内容は以下のようなものになります。
「老後2000万円問題」とは…
- 夫65歳、妻60歳の時点で夫婦ともに無職である。
- 30年後(夫95歳、妻90歳)まで夫婦ともに健在である。
- その間の家計収支がずっと毎月5.5万円の赤字※である。
※総務省「家計調査」(2017年)における高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)の平均。
たとえば、毎月約5.5万円の赤字が12ヶ月続いた場合、年間約66万円の赤字になります。さらに老後30年間で計算してみると…
月5.5万円 × 12か月 × 30年間 = 1,980万円
約2,000万円もの赤字です。住宅ローンの返済が問題なくできれば良いですが、毎月5万円の赤字となると、旅行や趣味などに使う余裕はないですし、老後資金も貯められそうもないですね。住宅ローンをギリギリまで借りてしまうと老後の生活が厳しくなるリスクが高くなるので、赤字はもってのほかですし、できれば毎月数万円貯金ができる程度の余裕は欲しいところです。
[3]住宅ローンの返済負担率について
返済負担率という言葉を聞いたことはありますでしょうか。住宅ローンを組む上で返済負担率は重要な内容になります。ここでは、返済負担率の計算方法やいくらまでにおさえれば良いのかについて解説したいと思います。
1.返済負担率とは
返済負担率とは、年収に占める年間返済額の割合です。
返済負担率は、「返済比率=年間返済額÷額面年収×100」で算出できます。
一般的に、返済負担率は年収の20%が目安と言われていますが、
フラット35の返済比率の基準は一律で、年収が400万円未満の場合は30%以下、400万円以上は35%以下です。一方、金融機関の場合、返済比率の基準は一律ではなく、金融機関によって異なります。たとえば、年収300万円以上450万円未満は30%以下、600万円以上は40%以下といった具合です。
2.「額面年収」ではなく「手取り年収」の20%以内が理想
返済負担率は年収の20%が目安と先に説明しました。ここでひとつ注意が必要なのは、「額面年収」ではなく「手取り年収」の20%以内で返済負担率を計算することです。
額面年収で返済負担率の計算をした場合、年収を住宅ローンの返済に充てることしか計算に入れていません。そのため、旅行や外食などの住宅ローンの返済以外の支出はゼロで計算されてしまいます。毎月の収入は、すべて住宅ローンの返済にだけ使う計算です。ギリギリの家計になるので、おそらく貯金もできないでしょう。それでは困りますよね。
返済負担率を計算するときは、「額面年収」ではなく「手取り年収」の20%以内におさめることが理想です。「そんな計算をしたら、借りられる額が少なくなってしまう」と思うかもしれませんが、その考えがそもそも危険なのです。繰り返しになりますが、住宅ローンは借りられれば良いというものではありません。毎月無理なく返せる額を借りることが重要なのです。
[4]額面年収別「借りられる額」「無理なく返せる額」
返済負担率という言葉を聞いたことはありますでしょうか。住宅ローンを組む上で返済負担率は重要な内容になります。ここでは、返済負担率の計算方法やいくらまでにおさえれば良いのかについて解説したいと思います。
・借りられる額は「返済比率30-35%(額面年収)」
・返せる額は「返済比率20%(額面年収)」
・無理なく返せる額は「返済比率20%(手取り年収)」で計算しています。
額面年収 | 手取り年収 | 借りられる額 | 無理なく返せる額 |
300万円 | 238万円 | 2,571万円 | 1,359万円 |
400万円 | 313万円 | 3,999万円 | 1,788万円 |
500万円 | 389万円 | 4,999万円 | 2,222万円 |
600万円 | 459万円 | 5,999万円 | 2,622万円 |
700万円 | 527万円 | 6,999万円 | 3,011万円 |
800万円 | 593万円 | 7,999万円 | 3,388万円 |
900万円 | 661万円 | 8,000万円(貸付上限) | 3,776万円 |
1,000万円 | 730万円 | 8,000万円(貸付上限) | 4,170万円 |
※頭金なし・ボーナス払いなし/35年ローン/
今回は、頭金もボーナス払いもなしで計算しているので、頭金をある程度用意できればこの表よりも借りられる額は多くなります。逆に、マイカーローンなどの借入がある方や転職したばかりで勤続年数が短い方などは、この表よりも借りられる額が少ない可能性があります。可能性、というだけで絶対ではありません。
しつこい様ですが、実際に計算と住宅ローンの審査をしてみないことには正確な数字は分かりませんので、あくまでも目安として考えてくださいね。
[5]年収が上がってから家を買うべき?買うべきタイミングが分からない!
家を買うタイミングはいつがベストなのか、この質問は非常に多いです。不動産の市場や相場は日々動いてはいますが、主に、家を買うタイミングとして多いのは「年齢・年収・ライフステージが変化した時」、この3つです。
そして、誰かに強制をされて買うわけではないので、自分次第で買う決断を先延ばしができます。「35歳までには」「もう少し年収が上がったら」「子供が〇歳になったら」など、買わない言い訳はいくらでもできるのです。
自分がいくらまで住宅ローンを組めるのか計算した時に、思ったよりも少なかった場合、「家を買うのはもう少し年収が上がってからにしようかな」と迷われた方も多いかと思います。
あなたの年齢が若ければその選択も間違いではないでしょう。少し厳しいことを申し上げますが、多くの民間金融機関では完済時の年齢を80歳としているため、40半ばを過ぎると住宅ローンの審査に通りにくくなることがあります。
また、住宅ローンを組む上で必須条件ともいえる団体信用生命保険に加入できない可能性も出てきます。フラット35のように団信への加入を必須としていない住宅ローン以外、団信の加入は必須です。いくら年収が高くても、団信に加入できなければ住宅ローンを組めないのです。現時点で年齢のリミットが近いのなら、早めに住宅ローンを組んでしまった方が得策かもしれません。
[6] まとめ
「年収の〇倍まで」ではなく「手取り年収」の20%以内におさめることが重要!
今回は、主に年収からみる住宅ローンの借入金額について解説しました。記事内でも解説しましたが、借入金額を考える時は「年収の〇倍まで」ではなく「返済負担率」をベースに考えましょう。その際は、「額面年収」ではなく「手取り年収」の20%以内が理想です。
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