借地権はやめた方がいいって本当?
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【目次】
[1]借地権って何?所有権とは何が違うの?
[2]借地権の種類は3つ
1.旧法借地権
2.普通借地権
3.定期借地権
[3]借地権のメリットデメリット
1.借地権のメリット
2.借地権のデメリット
[4]借地権物件はどんな人に向いている?
[5]まとめ
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今回のコラムテーマは「借地権」についてです。
所有権物件に比べて物件数は多くはないですが、都内などの人気エリアにも点在している借地権物件。不動産検索サイトで探してみると、びっくりするほど価格が安かったりします。
好立地の物件を安く購入できるのならそんな美味しい話はないと思うのですが、「借地権はやめたほうがいい」という意見もチラホラ聞きます。この記事をご覧になっているあなたもまさに「借地権ってどうなの?」という疑問をお持ちなのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、借地権の基礎知識やメリットデメリット、借地権に向いているのはどんな人なのかについてご紹介したいと思います。
[1] 借地権って何?所有権とは何が違うの?
まずは、借地権とはどのようなものなのか、所有権とは何が違うのかについてご説明します。
借地権とは、ざっくり言うと建物を建てるために、地主に地代(賃料)を払って土地を借りる権利です。所有権は「土地と建物すべてが自分の物」となりますが、借地権は「建物は自分の物だけど、土地は人から借りた物」となります。
土地の名義 | 建物の名義 | |
所有権 | 自分 | 自分 |
借地権 | 地主 | 自分 |
覚えておきたいポイントとしては、借地権は建物を建てる(所有)ことを目的とした土地であることです。建物がない更地や駐車場を貸す場合は、借地権がないことが一般的です。
借地権物件は、所有件物件と比べて物件価格が安いことが多いです。その理由は、所有権物件のように土地と建物を合わせた価格ではないからです。土地の価格が含まれていないので、所有件物件よりも手が届きやすい、ということですね。
[2]借地権の種類は3つ
借地権は「旧借地権」「普通借地権」「定期借地権」の3種類あります。借地権物件を購入する際は、この種類によって権利の範囲も変わってきますので、しっかりと知識を身に付けておくことが必要です。
1.旧法借地権
現在の借地権は、平成4年8月に成立した「借地借家法」によるもので、これより前に土地を借りている場合は「旧法借地権」となります。
旧法借地権の最大の特徴は、契約さえ更新すれば、半永久的に土地を借りることが出来る点です。更新した場合、木造なら契約期間は30年(最低20年)で更新後は20年。鉄筋コンクリートなら60年(最低30年)で更新後は30年となっています。
旧法借地権の存続期間を下記にまとめましたので参考にしてください。
存続期間 | 更新1回目以降の存続期間 | ||
木造 | 期間の定めがない場合 | 30年 | 20年 |
期間の定めがある場合 | 20年以上 | 20年以上 | |
鉄筋コンクリート | 期間の定めがない場合 | 60年 | 30年 |
期間の定めがある場合 | 30年以上 | 30年以上 |
平成を過ぎるまでは土地が安かったため、旧法借地権によって「土地を人に貸して収入を得る」という地主は多かった様です。ただ、貸した土地が半永久的に返って来ない、地主に建物の買い取りを要求できる権利が認められている、という地主にとっては大きなデメリットがあるので、現在は旧法借地権が減ってきています。
ちなみに、旧法借地権で存続期間の定めがない場合は、老朽化によって建物に住めなくなる段階で権利が消滅します。
2.普通借地権
平成4年8月以降から施行されている借地権です。契約の更新を前提として土地を貸すため、契約期間終了時に更新を断ることができません。地主が更新を断る際には、正当な理由が必要となります。
借地権の契約期間の当初は30年、更新1回目は20年、それ以降は10年と徐々に契約期間が短くなっていきます。合意の上の更新であればこの期間よりも長くすることも可能です。また、旧法借地権とは異なり、建物種別による契約期間の区別はありません。
普通借地権の存続期間は以下のとおりです。
存続期間 | 更新1回目の存続期間 | 更新2回目以降の存続期間 | |
期間の定めがない場合 | 30年 | 20年 | 10年 |
期間の定めがある場合 | 30年以上 | 20年以上 | 10年以上 |
3.定期借地権
こちらも平成4年8月以降から施行されている借地権のひとつです。普通借地権とは違い、定期借地権には契約の更新がありません。ただし、期間満了後は更地にして地主に返す必要があります。
さらに定期借地権には、「一般定期借地権」「事業用定期借地権」「建物譲渡特約付借地権」の3種類あります。それぞれの特徴を下記にまとめましたので、参考にしてください。
・定期借地権の種類
借地権 | 存続期間 | 利用目的 | 契約方法 | 借地関係の終了 | 契約終了時の建物 |
一般定期借地権 | 50年以上 | 用途制限なし | 公正証書等の書面で行う。
[1]契約の更新をしない [2]存続期間の延長をしない [3]建物の買取請求をしない という3つの特約を定める。 |
期間満了による | 原則として借地人は建物を取り壊して土地を返還する |
事業用定期借地権 | 10年以上50年未満 | 事業用建物所有に限る(居住用は不可) | 公正証書による設定契約をする。
[1]契約の更新をしない [2]存続期間の延長をしない [3]建物の買取請求をしない という3つの特約を定める。 |
期間満了による | 原則として借地人は建物を取り壊して土地を返還する |
建物譲渡特約付借地権 | 30年以上 | 用途制限なし | 30年以上経過した時点で建物を相当の対価で地主に譲渡することを特約する。口頭でも可 | 建物譲渡による | [1]建物は地主が買取る
[2]建物は収去せず土地を返還する [3]借地人または借家人は継続して借家として住まうことができる |
引用元:国土交通省 定期借地権の解説
先述したとおり、期間満了後は更地にして地主に変換を求められます。更地にするための解体費用については、借主が負担する場合が一般的ですが、建物の老朽化が進んでおらず資産価値が残っている場合は、地主に建物を買い取ってもらうケースもある様です。
借地借家法第十三条(建物買取請求権)
【1】借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。
【2】前項の場合において、建物が借地権の存続期間が満了する前に借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべきものとして新たに築造されたものであるときは、裁判所は、借地権設定者の請求により、代金の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。
【3】前二項の規定は、借地権の存続期間が満了した場合における転借地権者と借地権設定者との間について準用する。 |
引用元:国土交通省 定期借地権にかかる鑑定評価の方法等の検討
[3]借地権のメリットデメリット
次に、借地権のメリットデメリットについてご説明します。
1.借地権のメリット
借地権のメリットは何と言っても価格が安いこと!
・所有権物件よりも手が届きやすい価格
一般的に、所有権物件よりも80%程度の価格で販売されていることが多い様です。東京の好立地物件も驚くほど安く購入することができます。
・土地部分の固定資産税や都市計画税がかからない
借地権は土地の所有権は有していないため、固定資産税や都市計画税は課税されません。ただし、建物は所有しているので固定資産税と不動産取得税支払う義務があります。
2.借地権のデメリット
メリットが2つだったのに対し、デメリットは5つもあります。「借地権はやめた方がいい」と言われる理由がこの中にあるかもしれません。
・土地の金額が高くなったら、地代も高くなる
土地の金額が高くなれば、地代も高くなるケースが一般的です。借地権は、毎月地主に地代を支払います。物件価格自体は安いですが、総合的には所有権物件よりもコストがかかることもあります。
・金融機関からの融資が受けづらいことがある
金融機関によっては住宅ローンが組めない可能性があります。ただ、フラット35は一定の要件を満たせば融資可能な場合もありますので、金融機関や不動産会社に確認してみてください。
・増改築する場合は地主の許可が必要
借地権は、土地の所有権は地主にあります。そのため、建物の増改築は無断で出来ません。増築の場合は「床面積を増加させる」「同一敷地内に別の建物を追加する」、改築の場合は、建物を壊して新しく建て直すことが増改築に含まれます。契約次第な面もありますので、契約の際に、どこからどこまでが増改築にあたるのか、地主に確認しておきましょう。
・原則、契約の中途解約は出来ない
地主は、長期的に地代を徴収して収益をあげることを目的にしているため、中途解約は不可としている場合が一般的です。なお、借地権は相続できるので、借主が死亡した場合は相続人に引き継がれることになっています。
・期間満了後は更地にして地主に返還する
原則、更地変換を求められます。その場合の解体費用は、借り主が負担することが一般的です。ただし、建物に資産価値が残っている場合は、地主に建物を買い取ってもらうことも可能です。
[4] 借地権物件はどんな人に向いている?
所有権物件に比べてやや注意点が多い借地権物件ですが、以下のような人には向いているかもしれません。
・一時的な住居として考えている人
転勤が多い人や、住める期間が決まっている人には、好立地で安く購入できる借地権物件が適しているでしょう。
・好立地な物件に格安で住みたい人
特に都内の人気エリアにある物件も、借地権物件なら所有権物件よりも安く購入できます。賃貸ではちょっと…という人にもおすすめです。
[5] まとめ
借地権物件は価格が安いですが、リスクもあります。
どんなものにもリスクやデメリットはつきものですが、借地権物件は住み続けられる期間に制限があり、改築なども自由にできず、土地代が高くなれば地代も高くなるリスクもあります。
このようなリスクやデメリットだけみると「借地権物件はやめたほうがいい」という意見も一理あります。ただし、記事内でもご紹介したとおり、借地権が生活スタイルに合っている人もいらっしゃいます。借地権物件を検討する際は所有権物件よりも慎重にご検討することが重要ですが、気になる物件があるのなら一度不動産会社に相談されてみてはいかがでしょうか。