【住宅ローン控除】新築と中古の差
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【目次】
[1]まずは住宅ローン控除の仕組みをチェック!
1.住宅ローン控除の仕組み
2.住宅ローン控除の注意点
[2]住宅ローン控除「新築と中古の差」はどのくらい?
1.新築は最大400万円、中古は最大200万円の控除
2.売主が個人の中古住宅を購入した場合の控除総額
3.売主が法人の中古住宅を購入した場合の控除総額
[3]中古住宅で住宅ローン控除を受けるには
1.住宅ローン控除を受けるための条件
2.築20年以上の場合は耐震基準適合証明書等が必要
3.中古住宅を購入してリノベーションを行う場合
[4]まとめ
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当コラムでも度々テーマにしている「住宅ローン控除」。
なぜこんなにしつこく(?)住宅ローン控除について書くのかというと、興味を持たれている方が非常に多いからです。何と言っても、マイホーム購入された方が一番多く利用している制度なので、制度の内容は知らないとしても、名前は聞いたことがある、という方も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、住宅ローン控除を利用する際に、新築と中古ではどのくらい控除額に差があるのかについて説明したいと思います。
[1] まずは住宅ローン控除の仕組みをチェック!
この制度を初めて知る方にも分かりやすいように説明します。既に知っているよ!という方は次項まで読み飛ばしていただくか、おさらい的な感覚で読んでいただければと思います。
1.住宅ローン控除の仕組み
住宅ローン控除は、住宅ローンの返済期間が10年以上の人を対象とした制度です。適用条件を満たしていれば、最大控除額(1年間で最大40万円、10年間で最大400万円)還付されます。※
年末時点の住宅ローン残高の1%相当額を所得税から控除し、控除しきれなかった分は翌年の住民税から控除されます。ただし、所得税の課税総所得金額などの金額の7%、または13万6500円のうち、少ない方の金額が上限となります。
※2019年10月に消費税率を10%に引き上げた際に特例措置として2019年の増税に伴い、控除期間が10年間から13年間に延長されました。令和3年も継続されます。
2.住宅ローン控除の注意点
控除額は1年間で最大40万円、10年間で最大400万円になりますが、これはあくまでも最大控除額です。必ず毎年40万円還付されると思っている方が多いのでご注意ください。
「え?そうなの?」と思った方のために繰り返します。住宅ローン控除は毎年必ず40万円戻ってくるわけではありません!!
住宅ローン控除は、納めた税金以上のお金は戻ってきません。いくら戻ってくるのかは、年末時点での住宅ローン残高もそうですが、納めた所得税と住民税によって変わってきます。
まず、毎年40万円受け取るには、住宅ローンの借入額は4,000万円を超えていなければなりません。そして、年末時点でのローン残高が10年間4,000万円を超えていて、なおかつ、年間の所得税と住民税で40万円を超えていなければ毎年40万円受け取ることはできません。該当する方はゼロではないでしょうけれど、そう多くはないと思います。そもそも住宅ローン残高は減り続けていきますから、住宅ローン控除の控除額も年々減っていきます。
毎年40万円戻ってくると思っていたのに、意外と少なくてガッカリ…という方も多いかもしれませんね。それでもまとまった金額が戻ってきますので、利用しないのは損です。条件を満たしているのなら、利用した方がお得な制度です。
[2]住宅ローン控除「新築と中古の差」はどのくらい?
お待たせしました。今回の記事のテーマです。新築と中古では住宅ローン控除で還付金にはどのくらい差があるのかみていきましょう。
1.新築は最大400万円、中古は最大200万円の控除
住宅ローン控除を利用するにあたって、新築と中古で異なる点は、最大控除額です。
新築の場合は、年間の最大控除額は40万円(10年間で最大400万円)ですが、中古の場合は年間の最大控除額は20万円(10年間で最大200万円)となる可能性が高いのです。
“可能性が高い”とはどういう意味かというと、その中古物件の売主が個人なのか法人なのかによって控除額が異なります。ポイントは消費税です。
新築物件の多くは、売主が法人であることがほとんどのため、購入する際に消費税がかかります。中古住宅は個人が売主であることが多く、その場合は消費税がかかりません。
住宅ローン控除のからくりというか裏事情としては、消費者が消費増税によって購買意欲が減退しないようにする狙いがあるため、新築と中古(消費税がかかるかかからないか)で最大控除額に差をつけている様です。
基本的な考え方としては
・個人が売主の中古物件は、年間の最大控除額が20万円
・法人が販売している中古物件は年間の最大控除額が40万 |
となります。
年間で20万円の差があるのなら新築を買ったが得じゃん!と思った方も多いことでしょう。お気持ちは分かりますが、ぱっと見た数字で損得を判断するのはもったいないですよ。次項では、売主が個人と法人の場合、住宅ローンの控除額がいくらになるのか説明したいと思います。
2.売主が個人の中古住宅を購入した場合の控除総額
住宅ローン控除期間の10年間・または13年間で受けることができる控除総額は以下のとおりです。あくまでも概算となりますので目安としてお考えください。
売主が個人(年間の最大控除額が20万円)の場合の住宅ローン控除総額
額面年収 | 住宅ローン
2,000万円 |
住宅ローン
3,000万円 |
住宅ローン
4,000万円 |
|||
10年 | 13年 | 10年 | 13年 | 10年 | 13年 | |
年収400万円 | 162万円 | 202万円 | 162万円 | 202万円 | 162万円 | 202万円 |
年収500万円 | 173万円 | 213万円 | 173万円 | 213万円 | 173万円 | 213万円 |
年収600万円 | 173万円 | 213万円 | 173万円 | 213万円 | 173万円 | 213万円 |
年収700万円 | 173万円 | 213万円 | 173万円 | 213万円 | 173万円 | 213万円 |
※住宅ローン35年・、変動金利型1.2% 一般住宅の場合
3.売主が法人の中古住宅を購入した場合の控除総額
続いて、売主が法人の中古住宅を購入したケースです。こちらも概算となります。
売主が法人(年間の最大控除額が40万円)の場合の住宅ローン控除総額
額面年収 |
住宅ローン
2,000万円 |
住宅ローン
3,000万円 |
住宅ローン
4,000万円 |
|||
10年 | 13年 | 10年 | 13年 | 10年 | 13年 | |
年収400万円 | 162万円 | 202万円 | 165万円 | 214万円 | 165万円 | 214万円 |
年収500万円 | 173万円 | 213万円 | 235万円 | 295万円 | 237万円 | 308万円 |
年収600万円 | 173万円 | 213万円 | 260万円 | 320万円 | 302万円 | 381万円 |
年収700万円 | 173万円 | 213万円 | 260万円 | 320万円 | 344万円 | 424万円 |
※住宅ローン35年・、変動金利型1.2% 一般住宅の場合
[3]中古住宅で住宅ローン控除を受けるには
主に適用条件について説明します。
1.住宅ローン控除を受けるための条件
住宅ローン控除を受けるための条件 |
|
新築・中古共通条件 | (1)自分自身が居住する住宅であること
住宅ローン控除は、自分自身が居住する家であることが必須のため、投資用の物件や親族の家などには適用されません。
(2)住宅取得の日から6ヵ月以内に居住、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいること。
(3)床面積が40㎡以上であること(改正) 床面積が50㎡以上の広さが条件でしたが、改正により40㎡以上に緩和されました。一戸建ては、各階の床面積の合計、マンションの場合は、専有部分の床面積で算出します。
(4)住宅ローンの借入期間が10年以上であること 9年以下の住宅ローンは適用されません。
(5)50㎡以上の住宅は年収が3,000万円以下であること 1年でも年収が3,000万円を超えた場合、それ以降の年は住宅ローン控除を受けることができません。住宅ローン契約時の年収が3,000万円以上であれば、初年度から控除が受けられません。
(6)40㎡以上50㎡未満の住宅は年収が1,000万円以下であること(改正) 改正により、床面積の条件は50㎡→40㎡に緩和されましたが、年収制限は厳しいです。高所得者が投資用として小規模住宅を購入することを防ぐことが目的です。
|
中古住宅(築年数) | 築年数が(1)と(2)、いずれかを満たしていること
(1)以下の築年数に該当する 築25年以内:鉄筋造や鉄骨鉄筋コンクリート造などの耐火建築物 築20年以内:木造などで建てられた非耐火建築物 (2)築20年以上の場合は、耐震基準に適合していることを証明する必要があります。耐震基準適合証明書、または耐震等級1以上と認められた既存住宅性能評価書か既存住宅売買瑕疵保険への加入が必要) |
中古住宅(使用状況) | 建築後に使用されている物件であること |
中古住宅(取得条件) | (1)贈与による取得ではないこと
(2)住宅購入時に生計を共にしており、購入後も引き続き生計を共にする親族などからの取得ではないこと |
2.築20年以上の場合は耐震基準適合証明書等が必要
中古の場合、新築よりも求められる条件が厳しくなります。中でも築年数と耐久性の条件が新築よりも多いです。
前項の「住宅ローン控除を受けるための条件」でも一覧表にて説明しましたが、築年数と耐久性の条件は、下記のものを満たしている必要があります。
・築25年以内:鉄筋造や鉄骨鉄筋コンクリート造などの耐火建築物
・築20年以内:木造などで建てられた非耐火建築物 |
築年数が条件を満たしていない場合は、
・耐震基準適合証明書(2年以内に審査を終えている)
・既存住宅性能評価書または既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書 |
を取得すれば、住宅ローン控除を利用することが可能です。
築年数がネックで中古住宅の購入を迷っている方も多いかと思いますが、たとえば築30年の物件であっても、上記の証明書や評価書を取得すれば住宅ローン控除を利用することが可能です。気に入った物件があれば、あきらめずに耐久性の基準を満たしているか確認してみてください。
3.中古住宅を購入してリノベーションを行う場合
中古住宅を購入してリノベーションを行うのであれば、リフォーム減税の制度を使って所得税の控除を受けることも可能です。
リフォーム減税には、「ローン型減税」と「投資型減税」の2種類あります。
ローン型減税
5年以上の住宅ローンを組んで、長期優良住宅化のためのリフォームを行ったときなどに適用されます。確定申告を行うことで、最大で年間12万5,000円の控除が5年間受けられます。
投資型減税
住宅ローンを組んでいないときに利用できます。住宅の耐震化や省エネ化などを行って適用条件を満たすことによって、工事費の10%が1年間だけ所得税から控除されます。
利用する際の注意点としては、投資型減税の耐震改修を除いて、住宅ローン減税とリフォーム減税の併用ができないことです。中古住宅の購入と同時にリノベーションを行うならば、住宅ローン減税を受ける方が得策の場合が多いので、慎重にご検討ください。
[4] まとめ
【住宅ローン控除】新築は得、中古は損とは限らない。
記事内で説明したとおり、新築には消費税がかかります。そもそも新築は中古よりも価格が高いです。さすがに住宅ローン控除に縛られて物件探しをする方はそう多くはないかと思いますが、もし今あなたが住宅ローン控除にこだわっているのならもったいないことですよ。住宅ローン控除の最大控除額が新築の方が多いから新築は得、中古は損、とは限りません。
お住まい探しで何を優先すれば良いのか、自分は新築と中古どちらが向いているのか、いくらの物件まで手が届くのか、お住まい探しに関する不安や疑問がございましたら、ぜひ一度ミツバハウジングにご相談ください。