『年収300万円』でも買える家はありますか?
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【目次】
[1]まずは知りたい!年収300万円でも家は買える?
[2]年収300万円で家を買うには
1.月々の返済額は75,000円までに抑える
2.頭金がなくても住宅ローンは組める
3.自己資金は最低限いくら必要?
[3]年収300万円の借入限度額
[4]ギリギリの生活にしないポイント
1.限度額の限界まで住宅ローンを組まない
2.家の購入費用以外のことも考えておく
3.減税制度について徹底的に調べて活用する
[5]まとめ
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「年収〇〇〇万円でも買える家はありますか?」「いくらまで借りられますか?」といったお問い合わせをいただくことはかなり多いです。
予算が分からなければ商品(家)は選べませんから、まずはおおよその目安としていくらまで住宅ローンを借りられるのか、月々のどのくらいの返済額になるのか、知っておきたいですよね。
そこで今回の記事では、「年収300万円」の人が家を買うことを想定して、借入可能額や月々の返済額、ギリギリの生活にしないポイントについて解説したいと思います。
[1]まずは知りたい!年収300万円でも家は買える?
結論から申し上げますと…買えます!住宅ローンも組めます!
フラット35で家を買った人のうち、5人に1人は年収が300万円以下というデータがあります。割合にすると全体の2割ほどです。割合としては少ない印象があるかもしれませんが、少ないもないといった感じです。
年収の話を少し深掘りしますと、令和2年9月に発表された国税庁による調査によると、日本人の平均年収は436万円というデータがあります。ただし、これは正規雇用、非正規雇用を含めたものになります。正規雇用の平均年収は503万円、非正規雇用の場合は175万円だそうです。
非正規雇用でも住宅ローンを組むことはできますが、問題は年収です。おそらく、この記事を見つけた方は「年収300万円でも家を買えるのか」という点が気になっているかと思います。
以前公開した「年収400万円」の人がギリギリの生活にならずに住宅ローンを組む方法」もアクセス数がかなり多く、自分に合った住宅予算を出して欲しい、というお問い合わせも多くいただいております。
つまり、それほど多くの「年収300万円・400万円」の方が、家を買えるか悩まれている、ということです。このテの記事やブログはたくさんありますので、他も読んでいただくと分かるのですが、どの記事も「買えない」「買えなかった」ということは書いていないんですよね。
そう、年収300万円でも家は買えるのです。逆にいえば、年収600万円でも買えない人は買えません。
支払いの延滞を繰り返してブラックリストに載っている方、お金をあるだけ使ってしまって完全な自己資金ゼロの方、団体信用生命保険に加入できないほど高齢の方は、正直難しいです。年収が高くても家を買うことは出来ないでしょう。
そうではない方は、家を買える可能性は極めて高いです。前置きが長くなりましたが、次項からは年収300万円で家を買うために注意したいポイントやアドバイスなどをご紹介いたします。
[2]年収300万円で家を買うには
年収300万円で家を買う具体的な方法をご紹介します。もちろん、全ての人に当てはまる方法ではありませんので、参考程度にお考えください。
1.月々の返済額は75,000円までに抑える
重要なのは、いくらまで借りられるかではなく、いくらまでなら無理なく返せるか。月々の返済上限額は、以下の式で計算します。
返済上限額(月々)=年収 × 返済負担率 ÷ 12
返済負担率とは、住宅ローンの返済を年間でいくら充てるかを示した割合のことです。多くの金融機関では、年収400万円未満は30%まで、400万円以上35%を限度としています。以下の表は、フラット35の返済負担率です。年収400万円で35%、年収400万円未満の場合は30%が上限額となります。
年収 | 400万円未満 | 400万円以上 |
返済負担率(上限額) | 30% | 35% |
この基準値に当てはめた場合、年収300万円の人が月々に無理なく返済できる金額は75,000円となります。返済負担率の基準値は各金融機関によって異なりますが、基準値をオーバーすると審査に通らない可能性が高くなります。
2.頭金がなくても住宅ローンは組める
頭金が貯まるまで何年も家を買わない、という時代は終わりました。頭金なんて必要ない!とは言いませんが、貯まるまで家を買わないというのは正直もったいないとは思います。
当コラムは不動産会社が発信しているものですので、「家を売りたいから無責任に急かしているのでは?」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
『まだ信じているの!?「家を買うなら年収の5倍まで」は昔の話』の記事でもご説明しましたが、近年は、頭金ゼロでも住宅ローンを組むことも珍しくなく、昭和、平成初期の時代とはくらべものにならないくらい住宅ローンのハードルは低くなっています。
頭金はあるに越したことはないですが、どうしても必要なわけでもないのです。若くて健康な働き盛りのうちに住宅ローンを組んでしまった方が得策のケースの方が多いのです。
賃貸にお住まいの方は、頭金を貯めている間も家賃を支払わなければなりません。年齢が上がるにつれ、健康上の不安や年収に対する不安も出てきます。
親世代からは「頭金がないと家を買うのは危険」と言われている方も多いことでしょう。ただ、時代の流れとともに家の買い方は変化しています。現代に合った知識や考え方を持ち、お住まい探しをしてくださいね。
詳しくはこちらの記事でも解説していますので、ぜひご一読ください。
「頭金は2割必要」なんて実は嘘!貯めれば貯めるほど損をする3つの理由
3.自己資金は最低限いくら必要?
頭金は必ずしも必要ないと先述しました。では手持ちのお金ゼロで家を買えるかというと、残念ながらNOです。
「頭金=自己資金」と認識されている方は多いのですが、まったく性質の違うお金です。ざっくり説明すると、自己資金は「絶対に必要なお金」で、頭金は「なくても問題ないお金」です。頭金がなくても家は買えますが、自己資金がなければ家は買えません。
では、最低限いくら用意しておけば家を買えるのかといいますと、現金でざっくり150万円は必要です。その内訳は、手付金と引っ越し費用です。手付金とは、売買契約を結ぶときに買主が売主に支払うお金のことで、売買代金の一部にあてられます。手付金の金額は売主と買主の合意によって決まるので法的な決まりはありませんが、100万円程度かかることもあります。
手付金がなければ売買契約を結べないので、絶対に必要です。
引っ越し費用は、時期によりますが15万円程度用意しておけば問題ないでしょう。クレジットカードに対応している引っ越し会社に依頼する方法もありますが、15万円用意できないほど家計が苦しいとなると、そもそも家を買うこと自体、考え直した方が良いかもしれません。
おすすめ記事です:頭金ゼロ・貯金ゼロでも家を買いたい!!
[3]年収300万円の借入限度額
多くの金融機関では、返済負担率の限度額を年収400万円未満は30%まで、400万円以上は35%としています。
この基準値に当てはめた場合、月々の返済上限額は75,000円と先に説明しましたが、いくらまで借入できるのかも調べてみましょう。下記の表は、金利1.0%、35年返済、25年返済(元利均等返済)で住宅ローンを組んだ場合の借入可能額をまとめたものです。
・35年返済(元利均等返済)、金利1.0%
年収 | 返済負担率25% | 返済負担率30% | 返済負担率35% |
300万円 | 2,210万円 | 2,650万円 | 3,100万円 |
400万円 | 2,950万円 | 3,540万円 | 4,130万円 |
・25年返済(元利均等返済)、金利1.0%
年収 | 返済負担率25% | 返済負担率30% | 返済負担率35% |
300万円 | 1,650万円 | 1,990万円 | 2,320万円 |
400万円 | 2,210万円 | 2,650万円 | 3,090万円 |
借入先や金利によって、もっと借りられる場合もありますが、現実的に考えると借入額は2,000万円以下に抑えておいた方が良いでしょう。
[4]ギリギリの生活にしないポイント
誰だってギリギリの生活なんておくりたくありません。マイホームは幸せの象徴です。お金がなくて毎月イライラ…なんてことにならないように気を付けておきたいポイントをご紹介します。
1.限度額の限界まで住宅ローンを組まない
これが一番重要です。借入可能額が少ないため、つい限度額ギリギリまで借りたくなってしまいますが、無理は禁物です。
年収300万円の場合は、最大でも月々の返済額を75,000円未満に抑えることがポイントだと先述しましたが、たとえ75,000円未満におさまったとしても、家庭によっては生活がギリギリになることもあります。たとえば、旅行や外食が多い家庭や、今後お子さんが増える予定の場合などです。挙げたらキリがないですが、年収は同じでも、支出は家庭によって違います。今回ご紹介した返済額や借入可能額も、あくまで目安として考えていただき、自分に合った資産計画を立てましょう。
こちらの記事もご一読ください。
家を買ったら貯金ゼロ!?その「住宅予算」で本当に生活できますか?
2.家の購入費用以外のことも考えておく
家を買うために貯金をすべて使いきらないことも大切です。家を買った後も固定資産税や家の修繕費にお金がかかりますし、貯金ゼロで新生活をスタートさせるのは避けたいところです。
家を買った後にかかるランニングコストについては、こちらの記事で詳しく解説しています。固定資産税などの税金関連以外のコストについてはよく分からないという方も多いです。家を買うと決めた時点で、購入費用だけではなく、ランニングコストについても知識を身に付けておきましょう。
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家を買った後にかかるお金(ランニングコスト)
3.減税制度について徹底的に調べて活用する
家を購入した人が利用できる減税制度として代表的なものは「住宅ローン控除」と「すまい給付金」です。利用条件を満たしているのなら使わないのは絶対にもったいないです。知らない、分からないで済ませずに、徹底的に調べて利用しましょう。
・住宅ローン控除
住宅ローン控除は、10 年以上の住宅ローンを利用して住宅購入またはリフォームする人を対象とした優遇制度です。この制度が適用されると、年末時点の住宅ローン残高の1%相当額を10年間に渡り所得税から控除されます。(原則として最大400万円の上限があります)
・すまい給付金
すまい給付金とは、増税による住宅購入者の負担を軽減するために創設された制度です。住宅購入者の年収に応じて現金を給付されます。
詳しくはこちらの記事をご一読ください。
住宅ローン控除でいくら戻ってくるのか教えます!計算方法や試算表も紹介
【2021年追記】住宅ローン控除でいくら戻ってくる?新型コロナによる影響は?
[5] まとめ
買えるか買えないか悩むよりも、まずは住宅予算を調べましょう!
今回の記事でご紹介した借入可能額や月々の返済額も、あくまでも年収から割り出した目安です。その目安があなたに合っているのかは詳しく調べてみないことには分かりません。悩んでいる間にどんどん年齢が上がってしまいますし、今後金利が上がってしまう可能性もあります。
頭金を貯めてから不動産会社に相談に行こうとお考えの方も多いですが、そもそも自分の住宅予算を調べもしないで頭金を貯めることにどれだけの意味があるのでしょう。住宅予算を調べた上で、頭金や自己資金を貯めることは何も問題ありません。計画性があって素晴らしいことです。しかし、「何となく頭金を貯めている」のなら、正直時間がもったいないです。
買えるか買えないか悩むよりも、買うことを先延ばしにするよりも、まずは不動産会社に相談です。住宅予算を出してから今後の対策を考えましょう。