住宅ローンの基礎知識と審査に落ちる人の特徴
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【目次】
[1]住宅ローンの申し込みから融資実行までの流れ
1.住宅ローンの事前審査を申し込む
2.住宅ローンの申し込み・本審査
3.住宅ローン契約の締結
4.住宅ローンの実行
[2]住宅ローンの基礎知識
1.金利の種類
2.手続きにかかる費用
3.事前審査と本審査の違い
4.必要書類
[3]住宅ローンの審査に落ちるのはこんな人
1.個人信用情報に「異動」の記載があったら一発でアウト
2.クレジットカードをたくさん持っている人・他に借入がある人も黄色信号
[4]まとめ
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住宅ローンの審査において、金融機関が一番重視するポイントは何だと思いますか?
年収?年齢?職業?自己資金の金額?
どれも重視されるポイントではありますが、これらすべてがパーフェクトでも、審査に落ちてしまう人はいます。それはなぜでしょう。
今回の記事では、住宅ローンの審査における基礎知識と、審査に落ちてしまう人の特徴について解説します
[1] 住宅ローンの申し込みから融資実行までの流れ
はじめに、住宅ローンの申し込みから融資実行までの流れを解説します。
1.住宅ローンの事前審査を申し込む
事前審査とは、金融機関が「この人にお金を貸して大丈夫なのか」「毎月きちんとお金を返済できるのか」といった具合に、借主の返済能力をチェックする審査です。
事前審査にかかる期間は、3~4営業日ほどで、審査基準は金融機関によって異なり、審査に落ちた理由は教えてもらえません。ちなみに、年収が高ければ審査に通るというものではなく、過去5年以内に支払いの延滞がある方や借金がある方、クレジットカードをたくさん保有している方は、たとえ年収が高くても審査に落ちる可能性は充分にあります。
審査に落ちる理由や、落ちないための対策については後述します。
2.住宅ローンの事前審査を申し込む
本審査とは、保証会社による調査のことをいいます(保証会社は、金融機関から保証料を預かり、万が一、住宅ローン返済が滞った場合に金融機関に住宅ローンの残額を支払います)。
事前審査のときよりも用意しておかなければならない書類が多いため、書類不備で仕切り直しということがないように注意が必要です。「事前審査に通ったから本審査も大丈夫」と過信は禁物です。事前審査に通っても本審査で落ちてしまう可能性はあります。
審査における基準は金融機関によって異なりますが、重視される点は下記のとおりです。
本審査で重視されるポイント
・ローンの完済時の年齢(80歳未満であること) ・勤続年数 ・返済負担率※ ・勤務先の事業内容 ・借入希望金額と頭金の金額 ・健康状態※年収(税込み)に対する返済額の割合のこと。「年間返済額÷税込み年収×100」によって算出されます。 |
3.住宅ローン契約の締結
住宅ローンの本審査が通ったら、金融機関と住宅ローン契約(金銭消費貸借契約)を締結します。この契約の際に、住宅ローンの金利や返済期間などが確定します。
契約は平日に行われるのが一般的ですので、土日休みの方は平日に休みを取らなければなりません。また、契約の際に改めて提出する書類はありませんが、実印や金融機関への届出印、借入額に応じた印紙税が必要です。
4.住宅ローンの実行
住宅ローンの実行は物件の引き渡しと同時に行われるのが一般的です。これを「融資実行日」と呼びます。実行日がいつになるのかは住宅ローン特約(金銭消費貸借契約)によって定められています。
マイホームの契約をする際は、必ず引き渡し日と融資実行日を同日にしましょう。提携ローンを利用する場合は、不動産会社と金融機関で残金決済時と融資実行日が同日になるように調整してくれるはずですが、自分で借入先を選んだ場合は、必ず残金決済時の日にちを伝え、引き渡し日と融資実行が同日になるように調整を行ってください。
[2] 住宅ローンの基礎知識
次に、住宅ローンの金利や手続きにかかる費用や必要書類、事前審査と本審査の違いについて解説します。
1.金利の種類
住宅ローンの金利は主に「全期間固定金利」「変動金利」「固定期間選択型」3種類に分類されます。どの金利がベストなのかは人によって異なります。金利の低さで安易に選ばず、複数の住宅ローンを比較して慎重に選ぶことが大切です。
・全期間固定金利型…金利はほかの2つの金利と比較すると高めです。金利変動のリスクがないため安心感がありますが、今後低金利に推移した場合は、変動金利よりも返済額が高くなる可能性があります。
・変動金利型…金利が上昇しなければ、低金利を享受できるメリットがありますが、将来金利が上昇するリスクはあります(返済額が上がる場合でも、従来の返済額の1.25倍までという上限が定められています)。
参考記事:変動金利に向いている人・向かない人【金利が上昇したらどうなる?】
https://www.mitsuba-h.com/jukatsu_column/20200801/
・固定期間選択型…契約時に3年、5年、10年という具合に、選択した期間の金利が固定されています。一定期間経過後は、変動金利型になるのが一般的ですが、選択した期間が終了した時点で、固定金利か変動金利か、再度金利を選択できるようになっています。ただし、変動金利型のような返済額上昇の上限が定められていないため、固定金利が終了した時点で金利が上昇していた場合、返済額が増える可能性があります。
金利の選び方について詳しく知りたい方はこちらの記事をご一読ください。
今さら聞けない!?住宅ローンの金利の基礎知識
https://www.mitsuba-h.com/jukatsu_column/20200815/
金利の安さだけで判断してはダメ!住宅ローンの金利の選び方
https://www.mitsuba-h.com/jukatsu_column/20200301/
2.手続きにかかる費用
住宅ローンを組む際に必要な諸費用は色々あります。
住宅ローン借入費用(金額は金融機関によって異なります)
・印紙代…融資額に応じて税額が決定する。融資額1000万円超5000万円以下の場合の税額は2万円。 ・融資事務手数料…3~5万円 ・ローン保証料…借入金額の2~3%程 ・登記費用…登録免許税は融資額の0.1%または0.4% ・司法書士手数料…5~10万円 ・団体信用生命保険料…通常の保険であれば、保険料は金利に含まれているので別途支払いは不要。※ |
※「フラット35」の場合…今までは団体信用生命保険の加入は任意で、加入する場合は別途保証料(年に1回の支払い)が必要でした。しかし、平成29年10月1日から制度改正され、フラット35に団体信用生命保険がセットで付くことになりました。それに伴い、団体信用生命保険料は金利に上乗せする形になり、年1回の支払いから月払いになりました。
3.事前審査と本審査の違い
事前審査と本審査、このふたつの違いは下記のとおりです。
【事前審査】
事前審査では主に、借主の返済能力をチェックされます。具体的には、ほかに借入がないか、延滞した履歴はないか、毎月ちゃんと返済できるのか(返済負担率に問題がないか)などを審査します。事前審査といっても審査は審査です。慎重に段取りを踏みましょう。
【本審査】
本審査では、さらに詳しく審査が行われます。提出する書類も事前審査のときよりも多く、印鑑証明書や住民票などの証明書類なども必要です。また、担保にする物件や借主の健康状態なども確認されます。
また、本審査では、事前審査での申告と違いがないかもチェックされます。本審査で提出した給与明細や源泉徴収票などの書類と、事前審査での申告内容が大きく違っていれば、審査に落ちてしまうこともあります。
4.必要書類
審査の際に必要な書類は下記のとおりです。
事前審査の際に必要なもの
・住宅ローン借入申込書 ・本人確認書類(運転免許証・健康保険被保険者証・パスポートなど) ・源泉徴収票(前年分) ・現在、借り入れがある場合は、償還予定表や残高証明書 ・物件に関する資料(チラシ・見積り書や間取り図・土地の公図など) |
本審査の際に必要なもの
・本人家族全員が記載された住民票 ・本人確認書類(運転免許証・健康保険被保険者証・パスポートなど) ・源泉徴収票(前年分) ・印鑑証明書 ・印鑑証明書に使用した実印 ・物件に関する資料(チラシ・見積り書や間取り図・土地の公図など) ・預金口座通帳など(残高確認のため) |
[3]住宅ローンの審査に落ちるのはこんな人
事前審査に通過後、本審査で落ちる方も少なからずいますが、その確率は5%といわれています。事前審査が通れば本審査で落ちる確率は低いともいわれていますが、油断は禁物です。この項目では、審査に落ちやすい理由と、落ちないために注意すべきことを解説します。
参考記事:住宅ローンの事前審査で落とされる理由
1.個人信用情報に「異動」の記載があったら一発でアウト
いわゆるブラックリストです。この場合は残念ながら一発でアウトです。住宅ローンの審査に通ることはまずありません。
そもそも「異動」とは何かというと、「過去に何度も支払いの遅延をした」「過去5年以内に債務整理をした」場合に、個人信用情報に記載される文字のことです。この場合は、まれに事前審査は通ることもありますが、本審査では必ず落ちます。
チェックされるのは過去5年間です。クレジットカードや他社からの借入などを利用したことがある方は個人信用情報を取り寄せ、「異動」の記載がないかチェックすることをおすすめします。
個人信用情報は「信用情報機関」に500円~1,000円ほどの手数料を支払えば取り寄せることが可能です。信用情報機関は、銀行系・カード系・消費者金融系の3種類あり、各取り寄せ方法と手数料は下記のとおりです。
銀行系…全国銀行個人信用情報機関(JBA) ・JBAのHP上から郵送請求可能。 ・請求手数料は1,000円(税込)カード系…株式会社シー・アイ・シー(CIC) ・郵送、窓口、インターネット請求が可能 ・窓口の場合は手数料500円(税込) ・インターネットや郵送の場合は手数料1,000円(税込)消費者金融系…株式会社日本信用情報機構(JICC) ・郵送、窓口、インターネットから請求が可能 ・窓口の場合は手数料500円(税込) ・インターネットや郵送の場合は手数料1,000円(税込) |
2.クレジットカードをたくさん持っている人・他に借入がある人も黄色信号
クレジットカードは気軽に持てることが多いので、「お金を借りている」という意識が薄くなりがちですが、審査の際にはかなり細かくチェックされます。
クレジットカードにはキャッシング枠というものがあり、金融機関が住宅ローンの返済負担率を出す際は、キャッシング枠の限度額も入れて計算をします。そのため、クレジットカードの保有枚数が多いとキャッシング枠も多くなるため、返済負担率が条件を満たさなくなる可能性が高くなります。
対策としては、不要なクレジットカードは事前審査の前に解約しておくことです。何枚までなら大丈夫なのかという目安としては2~3枚まで。5枚以上保有していると多いと考えておくと良いでしょう。
あわせて、残しておくクレジットカードのキャッシング枠をゼロにしておくとより安心です。
[4] まとめ
審査に落ちないためには、とにかく金融機関から信用されること!
審査のときだけ取り繕っても、金融機関はすぐに見破ります。何千万という大金を貸すのですから、「この人にお金を貸してもちゃんと返してもらえるか」を細かくチェックするのは当然のことです。事前審査と本審査の申告に違いがあったり、過去5年間に延滞などがあったりする場合、本審査はおろか、事前審査にも通過しない可能性があります。
年収が高いから大丈夫と安心するのは危険です。むしろ経済的にゆとりがある人こそ、クレジットカードの保有枚数やマイカーローンなどの借入に注意しましょう。「そろそろ家を買う」と意識し始めた時から、信用情報を汚さない意識を持つことが理想です。本審査に落ちる確率はわずか5%といわれていても、落ちる人は落ちます。最後まで油断しないようにしてください。