相続した不動産を売却するときにかかる税金
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【目次】
[1]親の不動産を売却したときにかかる税金
1.譲渡所得税(所得税・住民税)
2.相続税
[2]相続人が居住していた家なら特例を利用できる
[3]譲渡所得税を計算するときの注意点
1.取得費は親が家を購入したときの費用から計算する
2.住宅の保有期間は「親が家を取得した日」から引き継げる
[4]まとめ
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親の家や実家を相続し、売却を検討しているなら、その際に発生する税金のことも考えておかなければなりません。
売却する際にかかる税金は、相続する人数によっても、売却するタイミングによって異なります。
本稿では、相続した実家や親の家などを売りたい方が気になる譲渡所得税や相続税、譲渡所得税を計算するときの注意点について解説します。
[1] 親の不動産を売却したときにかかる税金
親が所有していた不動産を売却した場合、どのような税金がかかるのでしょうか。
1.譲渡所得税(所得税・住民税)
親の不動産に限らず、売却した際に売利益が出たら「譲渡所得税」がかかります。
譲渡所得は、売却したときの価格のことではありません。費用(取得費)と売却したときの費用(譲渡費用)。を売却金額から差し引いて計算します。
計算式で表すと以下のようなります。
売却益(譲渡所得)= 売却価格
売却価格から以下の3つの費用を差し引く ① 物件の購入価格から減価償却費を引いた価格(購入したときの価格) |
上記の計算をして売却益が発生していた場合は、確定申告を行い、譲渡所得にかかる所得税や住民税を納税することになります。
売利益がない場合は、確定申告を行う必要はありません(損益通算を行う場合を除く)。
詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
不動産売却にかかる税金の基礎知識
2.相続税
相続税は、財産を受け取ったときにかかる税金ですが、親の不動産を相続したら必ず課税されるわけではありません。
まず、前提として押さえておくべき点が「礎控除額が相続財産(不動産や預貯金など)を上回っていなければ相続税はかからない」ということです。
相続税の基礎控除額は、「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算することができます。
法定相続人の数で基礎控除は決まるので、相続人が多ければ多いほど控除される金額が高くなり、税額を少なくすることができます。
相続した財産が4,000万円と仮定して、シミュレーションしてみましょう。
ケース1:相続人が1人
3,000万円+600万円×1人= 3,600万円 基礎控除は3,600万円 4,000万円≧3,600万円のため、相続税がかかります。 |
ケース2:相続人が2人
3,000万円+600万円×2人= 4,200万円 基礎控除は4,200万円 4,000万円≧4,200万円のため、相続税はかかりません。 |
ちなみに、ケース2のように基礎控除を超えてしまった場合は
4,000万円-3,600万円=400万円に対して税率を掛けて計算をして、申告する必要があります。
申告は相続が発生することを知った日の翌日から10ヶ月以内です。相続人が複数いる場合は、それぞれが確定申告を行います。
相続税の税率は以下の通りです。
【平成27年1月1日以後の場合】相続税の速算表
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
[2] 相続人が居住していた家なら特例を利用できる
相続した家を売却する場合、相続人(子ども)がその家に自宅として居住していたか、いなかったかによって税金に違いが出ます。
相続人が自宅として居住していた場合は「居住用財産」とみなされ、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。
一方、相続人がその家に居住していなかった場合は、この特例の対象外となります。その場合は、原則として譲渡所得への所得税・復興特別所得税と住民税がそのまま課税されます。
ただ、空き家になった親の家を売却するときに受けられる「空き家の3,000万円特別控除(空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例)」という期間限定の特例があります。適用は、2016年(平成28年)4月1日~2023年(令和5年)12月31日までに売った場合に限られますが、この特例を利用すれば、譲渡所得が3,000万円まで非課税になります。
参考:国税庁のホームページ
No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
[3] 譲渡所得税を計算するときの注意点
次に、譲渡所得税を計算するときの注意点について解説します。
1.取得費は親が家を購入したときの費用から計算する
先述したとおり、譲渡所得は、売却金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。
ちなみに、相続したときに相続人が支払った登記費用や不動産取得税なども取得費に含まれます。取得費がわからない場合は、売却した金額の5%を取得費とすることができますが、この場合には相続人が支払った登記費用などは取得費に含めることができません。
2.住宅の保有期間は「親が家を取得した日」から引き継げる
譲渡所得にかかる所得税と住民税は、不動産売却した年の1月1日現在の所有期間(その不動産を所有していた期間が5年以下か5年超か)で税率が変わってきます。
不動産を所有していた期間 |
|||
区分 | 短期 | 長期 | |
期間 | 5年以下 | 5年超 | 10年超所有軽減税率の特例 |
居住用 | 39.63%
所得税30.63% 住民税 9% |
20.315%
所得税5.315% 住民税 5% |
①課税譲渡所得6,000万円以下の部分14.21%(所得税10.21%・住民税4%)
②課税譲渡所得6,000万円超の部分20.315%(所得税15.315%・住民税5%) |
非居住用 | 39.63%
所得税30.63% 住民税 9% |
20.315%
所得税15.315% 住民税 5% |
※2013年から2037年までは復興特別所得税として所得税額の2.1%が加算されるため、上記税率には2.1%上乗せされています。
相続人は、親がその家を取得した日からの年月をそのまま引き継ぐことができます。つまり、親が家を取得した日から、相続人が売却した年の1月1日までの所有期間で長期か短期かを判定することになります。
不動産の所有期間によって譲渡所得にかかる所得税と住民税が大きく変わってしまうので、この仕組みはかなり助かりますよね。