売却後に行う確定申告の基礎知識
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【目次】
[1]売却後に確定申告が必要なケース
1.利益が出ていれば確定申告は必須
2.赤字の場合でも確定申告はした方がいい?
[2]売却後の確定申告のやり方
[3]確定申告をする際の必要書類
[4]まとめ
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不動産を売却して利益が出たら確定申告が必要になります。
確定申告は面倒なイメージがありますが、放置しておくとペナルティとして加算税や延滞税の支払いを求められる可能性がありますので、必ず行いましょう。
今回の記事では、確定申告のやり方や必要書類はもちろん、赤字の場合でも確定申告は必要なのか、不動産を売却した後に行う確定申告について詳しく解説します。
[1] 売却後に確定申告が必要なケース
はじめに、不動産を売却後に確定申告が必要なケース、不要なケースについて解説します。
1.利益が出ていれば確定申告は必須
不動産を売却した際に、売却益が発生したら確定申告は必須となります。
売却益とは、簡単に言うと「売却した価格-かかった費用」です。不動産を3000万円で売ったとしても、丸ごと売却益になるわけではありません。不動産売却における税金の考え方としては、高く売れたかよりも、売却益がいくら出たかが重要になります。
譲渡所得を計算式で表すと以下のようなります。
売却益(譲渡所得)= 売却価格
売却価格から以下の3つの費用を差し引く ① 物件の購入価格から減価償却費を引いた価格(購入したときの価格) |
上記計算式によって、計算した結果、譲渡所得が売却価格を上回っていれば確定申告を行い、「譲渡所得税」を納める必要があります。
なお、確定申告は不動産を譲渡した年の翌年2月16日から3月15日までの間に行います。確定申告をしないとどうなるかというと、税務署の調査を受けて所得があったと判断された場合は、無申告課税が50万円までは15%、50万円を超える部分は20%も課されることになります。
2.赤字の場合でも確定申告はした方がいい?
売却益が出なかった場合は、課税譲渡所得が発生しないので、確定申告の必要はありません。
しかし、売却益が出なかった場合でも、確定申告をした方が良いケースもあります。たとえば、「損益通算」といって、売却によって出た損失をその年の給与所得から控除することができる場合もあります。
さらに、損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失を、譲渡した年の翌年以後3年間に渡り、繰り越して控除することが可能です。
売利益がでなかったときに減税できる制度は2つあります。
・居住用財産の買換えの場合の譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例(買換え)
この制度は、買換えを前提としています。5年を超えて保有する不動産を売却して所定の住宅に買い換えた際に、譲渡損失が出た場合、この譲渡損失をその年の他の所得と損益通算できます。損益通算しても控除しきれなかった譲渡損失については翌年以降3年間繰り越して所得から控除できます。
詳しくは国税庁のホームページをご確認ください。
No.3370 マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
・特定居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例(買い替えなし)
この特例は居住用財産を買換えなくても利用できます。ひとつ目の特例と内容はほぼ同じですが、繰越控除できる限度額が異なります。
詳しくは国税庁のホームページをご確認ください。
No.3390 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
[2] 売却後の確定申告のやり方
確定申告の計算期間は1月1日から12月31日の1年間です。必要書類をそろえて2月15日から3月15日の間に提出・納税をします。
確定申告の流れは、ざっくりいうと以下のような感じになります。
1.課税譲渡所得を計算する。
2.必要書類を準備する。
3.確定申告書を作成する。
4.税務署に訪問するか、電子申告で手続きを行う。
5.納税か還付を受ける
まず必要なのは申告書です。最寄りの税務署に行けば手に入れることができますが、国税庁のホームページに「確定申告書作成コーナー」から申告書を作成することもできます。作成した申告書をプリントアウトして税務署に提出するか、e-tax(国税庁が運営する、国税に係る申告・申請・納税に係るオンラインサービス)による電子申告にも利用可能です。
申告書の提出をしたら、納税か還付を受けます。還付を受ける場合は、申告書に記入した金融機関の預金口座に振り込まれます。
納税の場合は以下の方法で行います。
・振替納税を利用する
・現金で納付する
・国税電子申告・納税システム(e-Tax)で納付する
・クレジットカードで納付する
次の項目では、確定申告をする際に必要な書類について解説します。
[3] 確定申告をする際の必要書類
書類や記入漏れがあると税務署から問い合わせがくる場合がありますので、注意しましょう。
確定申告で必要な書類は以下の通りです。
書類 | 内容 |
譲渡所得の内訳書 | 売却した不動産の概要や売却金額、支払った費用などを記載した書類。売却後に税務署から送付されるので、記入して確定申告書に添付します。 |
譲渡時の書類 | 売却したときの売買契約書のコピー、売買代金受領書のコピー、固定資産税精算書のコピー、仲介手数料などの領収書のコピーなど。 |
取得時の資料 | 売却した不動産を取得したときの売買契約書、固定資産税精算書、仲介手数料の領収書などのコピーなど。 |
売却した土地・建物の全部事項証明書 | 法務局(登記所)で入手できます。「3000万円控除」「相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例」の申告では原本の提出は必要ありません。 |
[4] まとめ
売れたら終わりではありません。売利益が出たら必ず確定申告をしましょう。
売利益が出た場合、確定申告は必須です。赤字の場合は、譲渡所得税の課税対象とならないため、確定申告の必要はありませんが、売却損を給与所得などから差し引くことができる特例もあります。適用条件を満たしているなら利用しない手はありません。
確定申告をせずに放っておくと、ペナルティとして加算税や延滞税の支払いを求められる可能性がありますので、必ず期限までに確定申告を行いましょう。
なお、新型コロナウイルスの影響で、令和元年分の確定申告は令和2年4月16日まで延長されました。さらに4月17日以降であっても柔軟に確定申告書を受け付けることと発表がありました。
詳しくは国税庁のホームページからご確認ください。
確定申告期限の柔軟な取扱いについて