重要事項説明書でチェックしておきたいポイント
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【目次】
[1]重要事項説明書とは
1.重要事項説明書の内容
2.重要事項説明が行われるタイミング
[2]重要事項説明書のチェックポイント
1.物件に関する事項
2.契約条件に関する事項
[3]民法改正による重要事項説明に関わる今後の動き
[4]まとめ
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売買契約を交わす前に行われる「重要事項説明書」の説明。当日は2時間ほどの時間を要し、内容も難しいため「適当に聞いておけばいいや」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、後々大きなトラブルに発展してしまう可能性もあるため、事前に内容を理解しておくことが大切です。
そこでこの記事では、重要事項説明書の内容やチェックポイントについて解説します。
[1] 重要事項説明書とは
そもそも重要事項説明書とは何なのでしょうか。内容や行われるタイミングについて解説します。
1.重要事項説明書の内容
重要事項説明書は「権利」「義務」「制限」に置き換えると理解しやすい。
聞きなれない言葉が多いため、内容をすべて理解することは大変かもしれません。そこで、おすすめの考え方は「権利」「義務」「制限」に置き換えることです。
権利 = することができる | ローン特約によるキャンセル、契約違反による解除など |
義務 = しなければならない | 道路・インフラの整備費用を負担する義務など |
制限 = してはいけない | 用途地域や建ぺい率など、法令に基づく制限事項など |
このように、重要事項説明書に記載されている内容によってどのような権利や義務、制限が発生するのかをイメージすると理解しやくなります。
そして、全体像や流れを知っておくことも大切です。重要事項説明書のおおまかな構成を表にまとめましたので、参考にしてください。
物件に関する事項 | (1)登記記録に記録された事項
(2)法令に基づく制限の概要 (3)私道に関する負担に関する事項 (4)飲用水・電気・ガスの供給施設および排水施設の整備状況に関する事項 (5)宅地造成または建物建築の工事完了時における形状・構造等に関する事項 (6)区分所有建物の場合の敷地に関する権利、共用部分に関する規約等の定めなどに関する事項 |
取引条件に関する事項 | (1)代金、交換差金および借賃以外に授受される金銭に関する事項
(2)契約の解除に関する事項 (3)損害賠償額の予定または違約金に関する事項 (4)手付金等の保全措置の概要(不動産会社が自ら売主になる場合) (5)支払金または預り金の保全措置の概要 (6)金銭の貸借のあっせんに関する事項 (7)瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要 |
その他の事項 |
(1)国土交通省令・内閣府令で定める事項
(2)割賦販売に係る事項 |
各項目のチェックしておきたいポイントに関しては、後述します。
2.重要事項説明が行われるタイミング
重要事項説明書は、売買契約の当日に行われることが一般的です。
時間にすると2時間ほどかかります。よほど不動産の知識がある方でない限り、この2時間で説明された内容をすべて理解できる方はまずいないでしょう。
ではどうすればいいのかと言うと、事前に内容を把握しておくことです。不動産会社に重要事項説明書のコピーをもらっておいて、目を通しておきましょう。分からない不動産用語があればインターネットなどで調べて、契約に関しての不明点があれば不動産会社に確認をし、当日に備えておいてください。この下準備をするだけで、当日の2時間がまるで違ってきます。
[2] 重要事項説明書のチェックポイント
次に、重要事項説明書でチェックしておきたいポイントを解説します。
1.物件に関する事項
物件に関する事項は下記のとおりです。
分類 | 内容 | チェックポイント・注意事項 |
物件 |
・物件の所在地住所や面積など
・登記簿に記載されている項目 |
□一戸建て…道路からの高さ、傾斜の有無などを確認
□未完成の新築…パンフレットや図面を確認し、不明点がないかチェックする □中古物件…「付帯設備表」と「物件状況確認書」を見ながら、過去に壁のひび割れや雨漏りが起きていないかなど、建物の状態を確認 □抵当権が設定されている場合は、抹消される時期を確認し、契約書に明記してもらうこと □「仮登記」という設定がある場合は、そのままだと物件を所有できなくなる可能性もあるため注意 |
法令上の制限 |
・用途地域や建ぺい率など、各種の法令に基づく制限事項 | □住宅を建てられない区域ではないか
□物件周辺の土地の「用途地域」と、その地域にはどんな建物が建てられるのかを確認する □(主に一戸建て・土地)その土地に建てられる「建物の高さや面積」などに関する法基準を確認 □建て替えや増改築の際の制限がないか |
インフラの整備 |
・水道・電気・ガスの供給、排水の施設について | □インフラがきちんと整備されているか?
□出来ていない場合は整備の見込みや、整備費用を負担する必要があるのか □物件が私道に接している場合は、物件に私道部分が含まれるのか |
土地と道路(一戸建て・土地) |
・敷地の形状や、建物の構造・仕様についての説明 | □(一戸建て・土地)道路からの高さ・傾斜の有無・排水施設の状態などを確認
□(建物未完成の新築)図面集を確認し、気になるところがないかチェック □(中古物件)「付帯設備表」と「物件状況確認書」を見て、過去に雨漏りが起きていないかなど、建物の現状を確認する |
共用部分(マンション) |
・管理形態や委託先、管理費、修繕積立金の説明
・共用部分の範囲や使用方法 ・専用使用権について |
□ロビーや廊下、ゴミ捨て場などの共用部分についてのルール
□駐車場・駐輪場の利用方法、金額 □ペットの飼育制限や、楽器の演奏 □(中古マンション)売主が管理費や修繕積立金を滞納していないかチェックし、ある場合はどう対応するか確認。 □(中古マンション)大規模修繕について確認しておく |
2.契約条件に関する事項
契約条件に関する事項は下記のとおりです。
分類 | 内容 | チェックポイント・注意事項 |
代金以外に必要な金銭について |
・契約時の手付金
・固定資産税等清算金 ・管理費等清算金(マンションの場合) |
□広告やパンフレットと実際の面積に違いはないか
□抵当権が設定されている場合は、抹消される時期を確認し、契約書に明記してもらうこと □「仮登記」という設定がある場合は、そのままだと物件を所有できなくなる可能性もあるため注意 |
契約のキャンセルについて |
・手付のキャンセル
・契約違反による解除 ・ローン特約によるキャンセル ・反社会的勢力排除条項に基づくキャンセル ・「引渡前の減失・毀損」によるキャンセル |
□どのような場合に契約をキャンセルできるのか、キャンセルした場合、違約金は発生するのかなど、確認しておく
□手付のキャンセル…買主からは手付金の放棄、売主からは手付金の倍返しで契約をキャンセルできるとするケースが多い □契約違反による解除…買主が期日まで代金未払い、または売主が期日までに物件を引き渡さない、などの場合は、契約キャンセルとともに違約金を請求できるケースが多い。違約金の金額は、売買代金の2割以内と規定されている。 □ローン特約によるキャンセル…利用予定の住宅ローンについて、取扱金融機関名や、借入・返済内容の詳細まできちんと明示されているか確認。特約の記述がない場合、なぜ特約が付けられないか確認しておく |
その他・承認事項など |
・購入者が事前に知っておくべき内容 | □火葬場や工場などの周辺の嫌悪施設や、設備不備についても確認しておく |
[3] 民法改正による重要事項説明に関わる今後の動き
2020年(令和2年)4月1日から「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へ変わりました。今後、売主の負担はどのように変わるのでしょうか。
売買後に売主(不動産会社)が知らなかった瑕疵が発見された場合に、売主が責任を負う範囲や対応する期間を定めたものを「瑕疵担保責任」と呼んでいましたが、法改正により「契約不適合責任」に変わりました。
今回の法改正により、買主にとっては中古住宅を安心して買いやすくなりましたが、売主にとっては負担が重くなる内容になっています。そのため、2020年4月以降に不動産を売却される予定の方は、契約不適合責任についてしっかりと理解しておくことが必要です。とても重要な内容になりますので、これから不動産の売買に関わる予定の方は、こちらの記事を一読していただくことをおすすめします。
【2020年4月法改正】売主の負担はどう変わる?「瑕疵担保保険」から「契約不適合責任」へ!