頭金を貯めれば貯めるほど損をする3つの理由
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【目次】
[1]「頭金ゼロの住宅購入は危険」「頭金は2割必要」といわれている理由
1.支払い能力があるのかを判断されている
2.総返済額が高くなる
3.フラット35を利用する場合は金利が高くなる
[2]頭金を貯めれば貯めるほど損をする3つの理由
1.住宅ローンの金利が上がる可能性がある
2.歳を取るので返済期間が短くなる・健康上の不安が出てくる
3.貯めている間に家賃を支払うのがムダ
[3]まとめ
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インターネットで頭金について検索をすると、様々なファイナンシャルプランナーが頭金の必要性について解説していますね。多くの方が「頭金ゼロの住宅購入は危険」「頭金は2割必要」とおっしゃっています。
でも、本当に頭金が貯まるまでマイホームは諦めたほうが良いのでしょうか?
貯まるまでの5年、10年と賃貸に住み続けた方が得なのでしょうか?
この記事を読んでいる方も「今まさに頭金を貯めている最中!」という方もいらっしゃるかと思います。本当にこれが正解なのか悩まれている方も多いことでしょう。
そこで今回は、頭金を貯めてマイホームを購入する必要性や、何年もかけて頭金を貯めることによるリスクについても解説します。
[1] 「頭金ゼロの住宅購入は危険」「頭金は2割必要」といわれている理由
まずは多くの方が「頭金ゼロの住宅購入はやめておいた方がいい」「頭金は2割貯めておくと安心」という説を唱える理由について解説します。
1.支払い能力があるのかを判断されている
かつては「頭金を用意できる」=「支払い能力がある」という見方をする時代がありました。
頭金も用意できないようでは、住宅ローンの支払えるのか?といった具合です。昔の金融機関は、融資可能な金額が物件価格の8割とされていたため、2割の頭金がないと融資してくれませんでした。つまり、2割の頭金がないと住宅ローンが利用できないのでマイホームを購入できなかったのです。
今もその名残で「頭金は2割必要説」が語り継がれていますが、正直時代遅れです。頭金の2割どころかゼロで住宅ローンを組むことは珍しいことではありません。親世代から頭金を貯めないとダメ!と言われたという方も多いかもしれませんが、それを鵜呑みにしてしまうのは危険です。金利と同じく時代の流れとともに変化していますので、正しい知識を身に付けてお住まい探しを進めてください。
2.総返済額が高くなる
頭金を用意すると借入金額を少なくすることができるため、月々の返済額や総返済額を抑えることができます。
4,000万円の物件を例に、返済額のシミュレーションをしてみましょう。
頭金 | 0円 | 100万円 | 300万円 | 400万円 |
月々の返済額 | 12万5,000円 | 12万2,000円 | 11万5,000円 | 10万4,000円 |
総返済額 | 5,250万円 | 5,124万円 | 4,830万円 | 4,368万円 |
(金利:頭金400万円の場合は1.17%、その他は1.61%として計算)
頭金を400万円支払うと、融資率が9割以下になり金利が下がるため、頭金が0円の場合に比べて総返済額におよそ900万円の差がつきます。
この差額のために何年もかけて頭金を貯めておく、ということですよね。
確かに大きな差はありますが、仮に400万円貯めるとして、一体何年かかるのでしょうか。
その間賃貸なら家賃もかかりますし、お子さんがいらっしゃるなら教育費も必要です。親からの資金援助があればよいですが、夫婦ふたりで貯めるとなるとかなり大変なのではないでしょうか。
3.フラット35を利用する場合は金利が高くなる
頭金なしでも住宅ローンを組むことは珍しくないですが、住宅ローンによっては頭金がどれくらいあるかで金利が高くなることがあります。
たとえばフラット35の場合、購入価格に対して住宅ローンの借入額が9割を超えてしまうと金利が高くなってしまいます。
2020年7月時点の取扱金融機関が提供する金利の範囲と最も多い金利を確認してみましょう。
【フラット35】 借入期間:21年以上35年以下
融資率 | 金利の範囲 | 最も多い金利 |
9割以下 | 年1.300%~年2.060% | 年1.300% |
9割超 | 年1.560%~年2.320% | 年1.560% |
このように、頭金の額によって金利が0.26%上がってしまいます。
自営業の方や個人事業主の方はフラット35を検討されている方も多いかと思いますが、頭金の金額による金利増加のリスクにはご注意ください。
[2] 頭金を貯めれば貯めるほど損をする3つの理由
ここまで、頭金が必要だといわれている理由について解説しました。多くのファイナンシャルプランナーを含め、多くの専門家が頭金は必要だと口をそろえていっていますが、私はそうは思いません。その理由を説明します。
1.住宅ローンの金利が上がる可能性がある
今後金利が下がる可能性は低く、むしろ上がる可能性が高いといわれています。
頭金を貯めている間に金利が上がる可能性や引下げ金利(優遇金利)が無くなってしまうリスクは大いにあります。引下げ金利が無くなると、残念ながら同じ借入額でも、月々の支払いは簡単に数万円UPしてしまいます。つまり、何年もかけて貯めていた頭金数百万円が吹き飛んでしまうほど負担が上がってしまうということです。
2.歳を取るので返済期間が短くなる・健康上の不安が出てくる
何百万という大金、そう簡単には貯まりません。
5年、10年と頭金をコツコツ貯めているうちに歳を取り、住宅ローンの返済期間が短くなってしまうことも頭に入れておきましょう。返済期間が短くなれば月々の返済額も高くなります。
そして、年齢が上がるにつて健康上の不安もあります。住宅ローンを借りる際は団体信用生命保険(以下、団信)への加入は必須といってもいい状態です。
団信は、借主が住宅ローンの返済中に死亡した場合や、高度障害状態に陥った場合に、保険金で住宅ローンが完済される仕組みになっています。健康状態に不安があって団信へ加入できない場合、民間金融機関の住宅ローンを借りることはできないと思ってよいでしょう。若くて健康な働き盛りのうちに住宅ローンを組んでしまった方が安心です。
3.貯めている間に家賃を支払うのがムダ
賃貸にお住まいの方は、頭金を貯めている間も家賃を支払わなければなりません。
月数万円払って何も残らないものにお金を使っているのです。
住宅ローンの利息は払いたくないのに、家賃は払う。どこか矛盾を感じませんか?賃貸住宅は実際住んでいるので、何も残らなくてもそこまで損をした気持ちにはなりにくいかもしれません。今まで払っていたものだからそれが当たり前になっている部分もありますよね。でも、長期にわたり頭金を貯めるとなると、結果的には支払い金額は同じくらいになるかもしれません。それなら、早めに住宅ローンを組んでマイホームを購入し、返済をスタートさせた方が得策ではないでしょうか。
インターネットや親世代からの影響で「頭金をたくさん貯めた方がいい」「頭金ゼロで家を買うのはダメ」と思い込んでいる方は少なくありません。しかし、そのような思い込みで貴重な働き盛りの若い時代を、頭金を貯めるために過ごすのはもったいないですし、大変危険なのです。