不動産売却の理由が「離婚」伝えるべき?
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【目次】
[1]売却理由が離婚だと不利?
[2]「売却の理由が離婚」伝えるべき?
1.隠しておくことで不信感を抱かせてしまう可能性がある
2.契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)によるリスク
3.不動産会社の担当には伝えた方がよい
[3]離婚で不動産を売却する際の注意点
1.共有名義の場合は両者の同意が必要
2.住宅ローンの残債によっては売却できないこともある
[4]まとめ
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離婚による不動産の売却は決して珍しいことではありません。しかし、売却理由を正直に伝えて不利にならないか、物件価格が安くならないかと不安に思う売主もいらっしゃいます。デリケートな問題ですから、なかなか他人には言いづらいというのもありますよね。
そこで今回は、不動産売却の理由が「離婚」だと不利になるのか、隠しておくことでどんな問題が発生するのか、そして離婚で不動産を売却するときの注意点について解説したいと思います。
[1] 売却理由が離婚だと不利?
中古物件を見学されたほとんどの方が「どのような理由で売却されるのですか?」と質問されます。中古といっても高額な買い物です。気になるのは当然ですよね。
それでは、中古物件を購入しようとしている方が気になる点はどのようなことだと思いますか?
【中古物件の買主が気にしている点】
・建物に欠陥がないか |
主に建物や環境の問題での売却ではないのか気にしている方が多いようです。買主の中には、縁起をかついで避けたいという方もいらっしゃいますが、ほんの一部です。むしろ「離婚が売却理由ということは建物自体には何の問題もないのね!」とポジティブに捉える方がほとんどです。
つまり、離婚という売却理由は不利になるというよりも、物件のアピールポイントになる場合が多いということです。
ちなみに、2019年の総務省統計局の統計によると、約1.7%の離婚率が明らかになっています。3組に1組が離婚すると言われている時代です。離婚による不動産の売却は決して珍しいことではないですから、売却理由が離婚というだけで物件価格が下がるということもありません。
[2] 「売却の理由が離婚」伝えるべき?
できれば売却の理由が離婚というのは隠しておきたいという方もいらっしゃいます。買主の中には縁起をかつぐ方もいらっしゃいますから、離婚が原因と聞いたら売れなくなってしまうかも…と不安になってしまいますよね。
しかし、説論から先にお伝えすると、伝えるべきです。その理由は主に3つあります。
1.隠しておくことで不信感を抱かせてしまう可能性がある
離婚による売却ということは、必ずしも伝えなくてはいけないわけではありませんが…
たとえば「親の介護のため」「転勤になったため」など、多少無理がある理由でも、まったくの嘘でなければ買主に伝えてもいいと思います。ただし、後々その嘘がトラブルを招く可能性はあります。
また、売却理由を隠しておくことで買主に「物件に欠陥があるのではないか」と不信感を抱かせてしまうかもしれません。先述したとおり、売却理由が離婚ということを気にされる買主はごく一部です。一部分を気にして売却理由を隠したり嘘をついたりして、その他大勢の不信感を抱かせてしまう方がリスクが大きいように思えませんか?
2.契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)によるリスク
2020年(令和2年)4月1日から法改正により「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に変わります。
契約不適合責任では、隠れた瑕疵は問われません。「契約書に書かれていたかどうか」が問題となります。
たとえば、買主が「売却理由が離婚の物件は買いたくない」と不動産会社に伝えているとします。不動産会社があなたの物件を「売却理由が離婚」であることを知らなければ、その買主をあなたの物件に案内してしまうかもしれません。
契約後に「売却理由が離婚」であることを買主が知ったら、契約不適合責任を負わなければなりません。最悪の場合、契約破棄、賠償請求される可能性もあります。
契約不適合責任についてはこの記事で詳しく解説しています。
【2020年4月法改正】売主の負担はどう変わる?「瑕疵担保保険」から「契約不適合責任」へ!
3.不動産会社の担当には伝えた方がよい
不動産会社に売却理由を伏せておくメリットはひとつもありません!
先述したとおり、不動産会社に売却理由を隠しておくことは契約不適合責任によるリスクを負う可能性があります。
また、不動産会社は家を売るプロですので、離婚が原因で売却となった物件をたくさん見てきています。買主への説明の仕方も熟知しているはずです。不動産会社に不信感を抱かせて売却のチームプレーが取れなくなるよりも「物件自体は何の問題もなし!この物件は売れる!」と確信をもってサポートしてもらった方が得策です。
ちなみに、共有名義の場合は両者の承諾が必要になるため、離婚による売却ということは必ずバレます!夫婦の所有物である物件をどちらか片方の意志で勝手に売却することはできません。このことについては後述します。
[3] 離婚で不動産を売却する際の注意点
離婚で不動産を売却する際は、理由を伝えるか伝えないか以前に注意すべき点がいくつかあります。それは名義と住宅ローンについてです。
1.共有名義の場合は両者の同意が必要
共有名義の場合は、不動産売却時に両者の承諾が必要となります。自分は売りたくても、相手にその気がなければ売却することはできません。
相手が出て行ってしまって連絡が取れない、家の中で一切口を聞かないほど夫婦関係が悪化している、といった場合はちょっと大変です。同意が取れればどちらかが勝手に売却の手続きをしていいわけではないので、契約日や引き渡しなども同席してもらう必要があります。いやがらせのためにわざとやっているのかは分かりませんが、約束の日に来ない方もいらっしゃいます。これでは買主の方にも迷惑がかかりますよね。
事前に同席しないことが分かっていれば「持ち回り契約※」という対処法もありますが、こちらも両者の承諾を得たうえで行うため、連絡がまったく取れない、話し合いに応じてくれないという場合は手続きが難航します。
※持ち回り契約…売主・買主双方または一方の事情から契約の場に同席できない場合、不動産仲介会社が双方へ足を運んで契約書面に記名・押印をもらうこと。場合によっては郵送で取り交わすこともあります。(両者の承諾が必要)
2.住宅ローンの残債によっては売却できないこともある
住宅ローンが残っている不動産を売却する場合は、残っているローンを一括返済しなければなりません。しかし、住宅ローンの残債によっては、売却することができない可能性があります。
アンダーローン(売却金額が住宅ローンの残債よりも多い状態)であれば、売却したお金で一括返済できるため、売却ができます。それに対して、オーバーローン(売却金額が住宅ローンの残債を下回っている状態)の場合、不動産を売却してもローンが残ってしまうため、足りない分を貯蓄から出すなどして、お金を用意しなければ売却できません。すぐにお金を用意できない場合は、新しいローンを組んで売却後も返済を続けるか、任意売却という手段もあります。ただ、任意売却の許可が出るかどうかは、金融機関の判断次第です。金融機関の許可がおりなければ売却できません。