2020年民法改正でリフォームの契約にどんな影響がある?
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【目次】
[1]リフォームにおける瑕疵担保保険とは
[2]瑕疵担保保険と契約不適合責任の違い
[3]請負人(リフォーム会社)に請求できる5つの権利
[4]リフォームの契約にどんな影響があるのか
1.請負人に請求できる期間が「欠陥を見つけてから1年以内」になる
2.場合によっては契約者が損をする!?
[5]まとめ
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2020年(令和2年)4月1日から「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へ変わります。この改正は不動産売買だけではなく、住宅リフォームにも関わってきます。そこで今回の記事は、リフォームの契約においてどのような影響があるのか解説します。
※この記事では、4月1日以降の民法を「新民法」、2020年3月31日までの民法を「旧民法」と表現して解説します。
[1] リフォームにおける瑕疵担保保険とは
2020年(令和2年)4月1日から「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へ変わり、「隠れた瑕疵」という概念は廃止されます。
たとえば、雨漏りについて買主が了承していて、売買契約内容に「この住宅は雨漏りしています」という記載があれば、契約不適合責任は負いません。しかし、買主が雨漏りのことを知っていたとしても、雨漏りがあるという記載のない契約書であれば、契約内容とは異なるものを売ったことになり、契約不適合ということになります。新民法の契約不適合責任では、隠れた瑕疵は問われません。隠れていてもいなくても、契約書に「書かれていたかどうか」が問題となります。
さらに詳しくいうと、契約不適合責任は、売買の目的物が「種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」は、買主は売主に対して契約不適合責任を追及できるようになります。
旧民法でのリフォームにおける瑕疵とは、注文したクロスや床材とは間違ったものが使われていた、といった内装工事をはじめ、防水工事をしたのに雨漏りする、耐震工事をしたのに基準を満たしていない、など構造上の欠陥も瑕疵にあたります。そしてリフォームに瑕疵があった場合、補修や損害賠償などをリフォーム会社(請負人)が責任を負います。さらに、工事にミスがなかったとしても一定期間は不具合を補修しなくてはなりませんでした。
新民法では、上記で例に挙げたクロスや床材のミス、設備の色が違ったなど欠陥ではなくても「種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」、請負人であるリフォーム会社が「契約不適合責任」を負います。しかし、新民法では「過分な費用がかかる場合」、注文者は補修や損害賠償を請求はできないとされています。現時点では新民法による判例がないため、今後の動きに注意したいところです。
[2] 瑕疵担保責任と契約不適合責任の違い
瑕疵担保責任と契約不適合責任の違いは以下のとおりです。
項目 | 瑕疵担保責任 | 契約不適合責任 |
法的性質 | 法定責任 | 契約責任 |
対象 | 隠れた瑕疵
(本来備わっているべき性能・機能がない) |
契約との不適合
(品質・数量が契約と一致しない) |
請求期限 | 納品後1年以内 | 事実を知ってから1年以内に告知
(ただし納品後5年以内で請求権は消滅) |
買主が請求できる権利 | 1. 契約解除
2. 損害賠償請求 |
1. 追完請求
2. 代金減額請求 3. 催告解除 4. 無催告解除 5. 損害賠償 |
損害賠償責任 | 無過失責任 | 過失責任 |
損害の範囲 | 信頼利益 | ※履行利益(信頼利益も含みます) |
大きな違いとしては、瑕疵担保責任では買主が請求できるのは「契約解除」と「損害賠償」の2つだけだったのに対し、契約不適合責任では「追完請求」「代金減額請求」「催告解除」「無催告解除」「損害賠償請求」の5つが請求できるようになったことが挙げられます。
次項では、契約不適合責任で買主が請求できる5つの権利について詳しく解説します。
[3] 請負人(リフォーム会社)に請求できる5つの権利
買主が売上に請求できる5つの権利について、分かりやすく解説します。
1.追完請求
追完請求とは、改めて完全な給付を請求することをいいます。種類や品質または数量が契約内容と異なっていた場合、買主は売主に完全なものを求めることができます。
不動産取引においては、売買する商品はひとつです。厳密にいうと「修補請求(欠陥箇所の修理を請求できる)」ということになります。たとえば、雨漏りしていないという契約内容で購入した住宅が雨漏りした場合、買主は売主に対して「雨漏りするので直してください」と請求できるということです。
2.代金減額請求
追完請求の修補請求をしても売主が修理をしないとき、あるいは修理が不能であるときに認められる権利です。あくまでも追完請求がメインの請求であり、それが駄目な場合には代金減額請求ができます。ただし、明らかに直せないもの、履行の追完が不能であるときは、買主は直ちに代金の減額請求をすることが定められています。
なお、減額請求も、売主に責めに帰すべき事由は不要です。代金減額請求の前提である追完請求が売主に責めに帰すべき事由は不要のため、その代替となる代金減額請求も売主に落ち度がなかったとしても認められることになります。
3.催告解除
追完請求をしたにも関わらず、売主がそれに応じない場合に買主が催告して解除できる権利です。売主が追完請求に応じない場合、買主は「代金減額請求」と「催告解除」の2つの選択肢を持っていることになります。契約解除された場合、売主は買主に売買代金を返還しなければなりません。
4.無催告解除
無催告解除は、契約不適合により「契約の目的を達しないとき」に行うことができます。逆にいえば、若干の不具合程度で契約の目的が達成できる場合は無催告解除は認められないということになります。
5.損害賠償請求
瑕疵担保責任でも買主は損害賠償請求ができましたが、瑕疵担保責任による損害賠償請求は売主の無過失責任とされていました。契約不適合責任では、売主に帰責事由がない限り、損害賠償は請求されないことになっています。また、瑕疵担保責任の損害賠償請求の範囲は信頼利益※1に限られますが、契約不適合責任の損害賠償請求の範囲は履行利益※2も含みます。
※1信頼利益…契約が不成立・無効になった場合に、それを有効であると信じたことによって被った損害のこと(登記費用などの契約締結のための準備費用など)。
※2履行利益…契約を締結した場合に債権者が得られたであろう利益を失った損害のこと(転売利益や営業利益など)
[4] リフォームの契約にどんな影響があるのか
法改正により、リフォームの契約にはどのような影響があるのでしょうか。
1.請負人に請求できる期間が欠陥を見つけてから1年以内」になる
リフォームの内容にかかわらず、欠陥を見つけてから1年以内に通知すれば請負人に責任追及することができます。
旧民法と新民法の違いは下記のとおりです。
旧民法(瑕疵担保責任) | 新民法(契約不適合責任) | |
請求可能な期間 | 工事完了後から1年以内
(構造上の欠陥は5年) |
欠陥を見つけてから1年以内 |
重大な欠陥 | 費用を問わず請求 | 過大な費用がかかる場合は請求できない |
2.場合によっては契約者が損をする?
旧民法では、重要な瑕疵であればどんなに高額な費用がかかっても、請負人に補修を請求することが可能でした。
しかし、新民法では「過分な費用がかかる場合」、補修や損害賠償を請求はできないとされています。
また、旧民法ではいきなり損害賠償請求を行うことができましたが、新民法では以下のいずれかに当てはまる場合のみ損害賠償を請求できます。
1.補修ができないとき
2.請負人が補修を拒絶したとき
3.契約が解除されたとき
あくまでも追完請求がベースであり、補修をお願いしても応じてもらえない場合や、補修が困難な場合に損害賠償請求ができます。旧民法のように補修を飛ばしていきなり損害賠償を請求する、という方法は使えませんのでご注意ください。契約者が損をする、というと大げさですが、場合によってはリスクを負う可能性がありますので、新民法についてしっかりと勉強しておきましょう。